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日本代表候補に再選出されたSH日和佐(神戸製鋼)、SOカーターと古巣サントリーとの対決を語る

斉藤健仁スポーツライター
古巣と初対戦となったSH日和佐。神鋼優勝の鍵を握る一人となる(撮影:斉藤健仁)

 黄色ではなく赤いジャージーの「9」番が、古巣相手に輝きを見せた。

 9月14日(金)、ラグビートップリーグの第3節、3連覇を目指す王者サントリーサンゴリアスと2003年度以来の優勝を狙う神戸製鋼コベルコスティーラーズが激突。神戸製鋼には今シーズンから世界最優秀選手賞を3度受賞しているラグビー界のスター、元ニュージーランド代表SOダン・カーターが加入。そのトップリーグデビュー戦ということで17,576人の観客が集まった。

 SOカーターが実力通りのプレーを披露し、21得点を挙げてMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選ばれる活躍を見せた神戸製鋼が36-20で勝利した。レジェンドとともに、見事に試合をコントロールしたのが、今シーズン、サントリーから移籍したSH日和佐篤である。

 日和佐と言えば、サントリー、そして日本代表でエディー・ジョーンズHC(現・イングランド代表HC)の下、「9」番をつけて、テンポのはやい攻撃的なパス回しでトップリーグのタイトル獲得や2015年ワールドカップで南アフリカ代表撃破にも貢献したSHだ。

 ただワールドカップ以後は代表から離れ、サントリーでは若手のSH流大キャプテンの控えに回ることが多くなった。そのため、代表キャップ51を誇る31歳のベテランSHは神戸製鋼に移籍を決めた。報徳学園出身の日和佐にとっては地元チームで活躍することで、再び桜のジャージー、そして2019年のワールドカップを目指したというわけだ。

 カーターのデビュー戦としてラグビーファン、スポーツファンの耳目が集まった一戦は、日和佐が過去8年間在籍した古巣相手と初めて対戦した試合にもなった。

 日和佐は持ち味のパスでテンポを上げつつ、ベテランらしくFWのシェイプをコントロール。また後半には相手ボールを奪うジャッカルを見せてチャンスを演出。SH日和佐-SOカーターとのハーフ団が見事なパフォーマンスを見せた。

「しっかりボールを動かすことができました。いいラグビーを見せることができたなと思います。ダン・カーターがコントロールしてくれましたし、彼がほしいタイミングで(ボールを)出しました。FW(のコントロールは)僕もしましたが、BKの部分は彼がコントロールしていました。やりやすかった」(日和佐)

 昨シーズンまでチームメイトだったサントリーSH流キャプテンは「常に僕にプレッシャー来ているなと感じていました。こっちがもっと日和佐さんにプレシャーかけないといけなかった。9番、10番にプレッシャーをかけないと神戸製鋼さんは勢いが出てくる。(日和佐さんは)素晴らしいプレーだった。勉強になりました」と、素直に完敗を認めていた。

 試合後、「(勝利できて)嬉しかったですね!」と満面の笑顔を見せていた日和佐は、「意識をしていないわけではなかったですが(相手に)知り合いがたくさんいて成長した姿を見せたいと思っていました。特に(サントリー監督の沢木)敬介さんですね!」と声を弾ませた。

 またカーターとハーフ団を組んだ感想を聞かれて、こう答えた。

「今まで(サントリーでトゥシ・)ピシ、(小野)晃征、ギッツ(マット・ギタウ)、(日本代表で)ハル(立川理道/クボタ)とSOに恵まれてきました。彼らもすごいSOでリードしてくれていましたけど、ダン・カーターは、落ち着いているなと感じました。

 ゲームの組み立てもそうですし、チームが(メンタル的に)落ちかけたときにも具体的に声をかけてくれてやることが明確になったのでやりやすかった。(カーターはプレーするとき)身体がまっすぐで、僕自身も味方も何を選択するのかわからないくらいだから、ディフェンスする方も大変だったと思います。すごくリードしてくれました!」

 日本代表を率いるジェイミー・ジョセフHCは「成功を収めているオールブラックスのように、ワールドカップでは経験者と若手を上手くバランスを取ってチーム構成していきたい」と公言。ニュージーランド出身の指揮官は高いパフォーマンスを披露したベテランSHを放っておくことはなく、日和佐は9月24日~27日まで和歌山で行われる日本代表候補合宿に選出された。

 再び、日和佐が桜のジャージーに袖を通し、そして2019年ワールドカップ出場する日が来るのだろうか。

 ただ、今、日和佐は神戸製鋼での目の前の試合に集中している。「自信になることはありますが、慢心にならないように次に向かいたい。しっかり一戦一戦、積み重ねていって優勝したい」

 

 カーターとともに日和佐が14年ぶりの優勝を目指す、コベルコスティーラーズの原動力となる。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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