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秋の彼岸の水難事故 暑さ過ぎるまで要注意 子供の単独行動 釣り 自転車転落

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
彼岸が明けるまでは暑い日があり、しかも水難事故に対する注意が散漫になります(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 23日、小学2年生の女の子が川で溺れました。秋の彼岸は特徴的な水難事故が起こりやすい時期です。理由は暑い日々の中で人々の警戒心が薄くなるから。この週末は子供の単独行動、釣り、自転車転落に要注意。

今年の秋の彼岸の水難事故

 今年は9月20日(月・祝日)が彼岸入り、23日(木・祝日)が中日、26日(日)が彼岸明けです。昨日の中日にも悲しい事故の一報が入りました。

23日午前11時ごろ、長崎県新上五島町荒川郷で、近くの小学2年(7)が川の中で見つかったと119番があった。新上五島署によると、家族が引き上げ、駆け付けた救急隊に病院搬送されたが、死亡が確認された。 川は深さ約1.5メートル、幅約6メートル。母親が姿の見えなくなったことに気付き、川に沈んでいるのを発見した。署は1人で遊んでいた時に誤って転落した可能性があるとみて、状況を調べている。 (9/24(金) 9:29 共同通信、一部氏名を筆者が伏せました)

 事故の後、あるテレビ局の方と話をしていたら、「現場は河口なんですが、取材班が到着した午後には、こんな浅い川で何で事故が?」と感じたそうです。現場近くの福江の潮見表を確認すると次の通りでした。

 9月23日 大潮

     時刻 潮位

 満潮 9:17 291 cm

 干潮 15:28 69 cm

 事故のあったと思われる時間は満潮から下げ潮、取材班が到着した頃が干潮の時刻あたりだったとすれば、説明がつけられます。潮位の差は291 cmー69 cm = 222 cmです。川の河口付近では下げ潮に伴う流れができていて、お子さんはちょっと流されて深みにはまってしまったかもしれません。

 考えてもみれば、潮汐によると思われる潮干狩りの時の水難事故はそれなりに発生しています。干満の差が激しくなることも秋の彼岸の特徴です。(潮汐の話は9月25日7:30に追記)

 ほかにも悲しい事故が続いています。少年の事故だけでも4件が報道されています。

 三重県桑名市の員弁川では20日、四日市市に住む中学3年の男子生徒が、友人4人と橋脚から川に飛び込むなどして遊んでいたところ、行方がわからなくなりました。翌日に遺体で発見されています。(朝日新聞)

 同じ20日に、青梅市御岳一付近の多摩川で外国籍の18歳の少年2人が流され、うちバングラデシュ国籍の少年が約1時間後、下流で発見されましたが、死亡が確認されました。4人で川の近くで遊んでいたようです。(中日新聞)

 19日には下田市の白浜中央海岸を訪れた父子のうち高校生が遊泳中に波にさらわれ、行方がわからなくなりました。その後遺体で発見されています。(日本テレビ系)

 また同じ19日には大津市葛川細川町の安曇川で、親子で川遊び中の7歳の男の子が流され、心肺停止の状態で病院に搬送されましたが、その後死亡が確認されました。(読売新聞)

 保護者が現場にいない状態での水難事故は新上五島町、桑名市、青梅市の事故が当たります。子供らの単独行動中の事故でした。また、19日の事故はいずれも保護者と一緒に行動していましたが、うねりの強い海、安全ではない川という、夏の期間であれば、もう少し注意をしていたのではないかと思われる状況での事故でした。

 釣りにも警戒が必要です。23日には中津市田尻崎の中津港で海づりをしていた75歳の男性が溺れて死亡しました。18日には永平寺町飯島の九頭竜川で64歳の男性がアユ釣り中に流されて溺れて死亡しました。(いずれも読売新聞)アユ釣りの危険性については「アユ釣りの水難事故 9月は川の深みに注意したい」を参照されて、釣り人とそのご家族の皆様は水難事故防止に十分ご留意ください。

 気温が下がり始めて、熱中症の心配が少しづつ薄れてきて、農作業などで忙しくなってきました。作業場に向かうのに自転車やバイクで出かける機会が多くなり、用水路や池に落ちて溺れる事故が増えます。愛知県南知多町の日間賀島で23日に66歳の男性が農業用貯水槽に上半身だけが浸かった状態で倒れていました。原付きバイクの運転中に誤って貯水槽に落ちたようです。(名古屋テレビ)

昨年までの3年間はどうだったか

 今年と同じような事故が繰り返されています。子供だけで川遊びをしていてそのうち人が流された(2018年大阪市)。親が目を離したすきに子供が湖に転落した(2020年山口市)。

 そして、多数を占めるのが海づりと川釣り中の事故です。海では転落したり波にさらわれたりしています。川ではアユ釣り中に流されて溺れています。

 また、農作業中の事故も発生しています。特に自転車やバイクが危ない。中には農作業車での転落事故も発生しています。

2020年 

 9月19日(土)が彼岸入り、23日(火・祝日)が中日、26日(金)が彼岸明けでした。前後も含めて調査した結果、次の通りです。

 9月27日 大洗町 散歩中 53歳男性 波にさらわれた

 9月26日 鴨川市 海釣り 20代男性 海に転落した

 9月23日 四日市市 海釣り 71歳男性 海に転落した

 9月22日 笠松町 川遊び 12歳男性 木曽川で溺れた

 9月22日 志摩市 活動中 49歳男性 サーフィンをしていた

 9月21日 山口市 湖遊び 3歳男児 親の目から離れた

 9月16日 郡上市 アユ釣り 74歳男性 流された

2019年

 9月19日(土)が彼岸入り、22日(火・祝日)が中日、25日(金)が彼岸明けでした。

 9月28日 鴻巣市 川釣り 72歳男性 流された

 9月27日 富山市 川釣り 75歳男性 流された

 9月20日 宇城市 通行中 85歳男性 自転車で転落した

 9月18日 阿南市 作業中 24歳男性 排水槽点検中に転落した  

 9月18日 郡上市 カヌー 45歳男性 川下り中に転覆した

 9月18日 四万十市 アユ釣り 73歳男性 流された

 9月16日 福岡市 通行中 52歳男性 犬を助けようとした

2018年

 9月20日(木)が彼岸入り、23日(日・祝日)が中日、26日(水)が彼岸明けでした。

 9月26日 唐津市 海釣り 42歳男性 高波にさらわれた

 9月23日 山中湖村 湖操船 78歳男性 ボートから転落した

 9月23日 大阪市 川遊び 9歳男児 子供6人で川遊びしていた

 9月23日 東白川村 アユ釣り 76歳男性 流された

 9月23日 米子市 投網中 75歳男性 堤防から転落した

 9月21日 射水市 海釣り 50歳男性 防波堤から転落した

 9月18日 飯豊町 農作業中 68歳男性 作業車で川に転落した

 9月18日 下田市 遊泳中 19歳女性 波にのまれた

 9月17日 十津川村 沢登り 53歳男性 不明

 9月16日 大分市 海釣り 31歳男性 海に潜っていた

 9月16日 関川村 アユ釣り 71歳男性 流された

ぜひこの週末は次のことに注意してください

 お子様をお持ちの皆様、子供には「一人で川で遊ばない、友達同士で川に行かない」この2点を口を酸っぱくして話して聞かせましょう。

 釣り人の皆様、今年は昨年に続き釣りブームです。救命胴衣を必ず装着して、携帯電話を防水パックに入れて肌身離さずにして楽しんでください。親子で釣りを楽しむ時にも全員が救命胴衣を装着するようにしましょう。

 農家の皆様、農地は職場です。でも、製造業の職場に比べて安全対策がゆるゆるしすぎています。そのことを十分ご理解の上、安全に心がけて、通行中は用水路脇やため池脇からできるだけ離れて運転するようにしてください。

水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

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