Yahoo!ニュース

大雪のあとの除雪。よくある水路転落に注意

斎藤秀俊水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授
雪を水に流すとすぐに片付きますが、転落事故にも注意します(筆者撮影)

 雪の朝を迎えた関東地方、特に山沿いの各地。今季初めての積雪となったところも多いと思います。慣れない積雪で思わぬ事故に遭って、怪我をしないように注意してください。雪国でも降り始めは、人は危ない目に逢うものです。特に、除雪中に側溝を含めた水路に落ちたり、流されたりしないために、気をつけたいことをまとめました。

雪庇に注意

 図1をご覧ください。雪が側溝などに積もると地面と水路との境がわからなくなります。誤って踏み外し側溝に落ちる事故に気をつけて下さい。特に除雪した雪を水路に流すために、地面と水路との境に雪の塊を運んできて、それを勢いよく水路に投げ込む時、ここに注意が必要です。

 雪が水路にはみ出している様子は図1でわかるかと思います。これを雪庇といいます。ここに人がのってしまうと、水路に落ちます。スノーダンプなどでここまで雪を運び、ダンプが雪庇にのると、ダンプが落ちます。ダンプを押している人も勢いで水路に落ちてしまいます。慣れないうちは、一回に運ぶ雪の量を少なめにするとよいです。

図1 水路と地面の境はよくわからないものです(筆者撮影)
図1 水路と地面の境はよくわからないものです(筆者撮影)

スリップに注意

 地面が雪で滑りやすくなっています。水路が流れているようなところは坂になっていることがしばしばです。また図1のように地面から水路に向かって斜面になっているところもあります。平面であれば気を付けていればそうそう滑ることもないのですが、少しでも斜めになっているところでは、雪があるとちょっとしたことで滑って落ちます。従って、水路に向かって斜めに下がっているような箇所では作業をしないようにします。

 図2のように深めの水路には特に注意しましょう。万が一水路に落ちた時、水深がそれほどないとしても安心できません。水が冷たく、足だけ浸かった状態でも上がれないでいると凍死することがあります。普段は腕力で地面に上がれる水路でも水路と地面との境界に20 cmも積雪があると、腕力であがれません。

図2 深めの水路は特に注意。普段なら上がれるところでも積雪があると上がれません(筆者撮影)
図2 深めの水路は特に注意。普段なら上がれるところでも積雪があると上がれません(筆者撮影)

水の流れを止めないように注意

 水路に雪をぎゅうぎゅう押し込めてはいけません。雪の塊で水路の水の流れをさえぎってしまうと、水がせき止められて上流にたまる一方となります。少しでも流れがあれば雪の塊は解けていくので、ちょろちょろでも水の流れを作ってください。

 雪の塊で流れがせき止められている時に、スコップや足を使って雪を砕きたくなりますが、危険です。雪が砕かれて水が流れ始めた時に勢いのついた流れに人が流されてしまう事故がよく発生します。

除雪作業全般の注意

 除雪作業は、複数人で行うこと、万が一の連絡ができるように携帯電話に身に着けておくこと、昼間の明るいうちに行うこと、このあたりが雪国で注意されていることです。

 都心では積雪とならなかったようですが、関東の一部で積雪あり、雪国の長岡で積雪なしという、状況となりました。雪国で除雪事故が発生せずに、太平洋側で発生したとなると痛ましいと思います。今日はぜひ事故に気を付けて今回の積雪をのり切ってください。

水難学者/工学者 長岡技術科学大学大学院教授

ういてまて。救助技術がどんなに優れていても、要救助者が浮いて呼吸を確保できなければ水難からの生還は難しい。要救助側の命を守る考え方が「ういてまて」です。浮き輪を使おうが救命胴衣を着装してようが単純な背浮きであろうが、浮いて呼吸を確保し救助を待てた人が水難事故から生還できます。水難学者であると同時に工学者(材料工学)です。水難事故・偽装事件の解析実績多数。風呂から海まで水や雪氷にまつわる事故・事件、津波大雨災害、船舶事故、工学的要素があればなおさらのこのような話題を実験・現場第一主義に徹し提供していきます。オーサー大賞2021受賞。講演会・取材承ります。連絡先 jimu@uitemate.jp

斎藤秀俊の最近の記事