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コロナ禍によるバイク死亡事故増加で二輪免許の規制強化が始まる可能性も!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
※写真はイメージです。画像出典:Webikeニュース

コロナ禍の影響を受けてバイク事故が増えている。それを裏付けるニュースが連日のように飛び込んでくる。これは忌々しき事態と言わざるを得ない。

東京で倍増、北海道は3倍増、神奈川では4割に迫るバイク死亡事故

東京都内のバイクによる死亡事故は8月末までに26件で、去年の同時期と比べて倍増傾向。新型コロナウイルスの感染が拡大してから都内では全体的に交通量が減少し、交通事故の件数も減った一方で、バイクや自転車による死亡事故が増えているそうだ。警視庁はスピードの出しすぎなどが増加の原因とみて注意を呼びかけている。

北海道内でもバイク事故が相次ぎ9月6日だけで3人が死亡。道警によると、当日時点で今年の交通事故による死者数88人のうち22人がバイク事故のよるもので、全体の25%を占めている。原付を含むバイク事故の死者数は昨年同期の8人を大きく上回り、例年平均の約3倍に急増しているという。

また、神奈川県でも交通事故死者数は9月末時点で103人と前年同期比7人増。9月末時点で愛知県、北海道に続きワースト3位とのこと。神奈川県はバイク事故による死者が多いのが特徴で、9月末までの死亡事故の36.9%がバイクによるもの。これは19年の全国平均15.9%に比べても突出して大きな割合になっているそうだ。例年10~12月は事故が増える傾向にあるため県警がSNSなどを通じて注意喚起を促している。

コロナ自粛の反動によるツーリングの増加も影響か

全体傾向として、新型コロナの感染が拡大した4月以降は外出自粛などにより事故件数は減っていたが、6月以降に移動に関する自粛要請が緩和されたことで、再び増加傾向に転じているようだ。長引く外出自粛への反動などもあるだろう。溜まったフラストレーションをバイクに乗ることで発散させる人が増えたことも影響しているようだ。

前述したように、風光明媚なツーリングのメッカとして知られる北海道や、首都圏からも箱根や富士方面へとアプローチしやすい神奈川県内でのバイク事故が増えていることがそれを物語っている。休日になると、バイク乗りの間では有名な観光道路やワインディングロードでの事故のニュースが後を絶たない。

6月初めに寄稿したコラム「全国でバイク事故が急増中 コロナ自粛解除でさらなる注意を!」でも警鐘を鳴らしていたことが、残念ながら現実になってしまったようだ。

二輪免許の規制が強化されないとも限らない

危惧しているのは、バイク事故増加による悪影響である。

大昔はクルマの免許さえ持っていれば排気量に関係なくバイクを乗れた時代もあったが、国内でも“ナナハン”の登場などにより大排気量化・高性能化が進むにつれ、バイクによる交通死亡事故が増加。暴走族の激化も絡んで社会問題になったことが原因で、二輪の免許制度が一気に厳しくなってしまった。

1975年以降に導入された、いわゆる「一発試験」がそれで、大型自動2輪免許(400cc超)を取得するためには、運転免許試験場でいきなり技能試験に臨むか、あるいは中型自動2輪免許(中免)からの限定解除のみに。

いずれにしても、合格率3%以下と言われるほどの難関で「落とすための試験」とさえ言われたほど。実質的には大型バイクに乗るライダーを増やさない目的での法改正だった。

その後、1996年の免許制度改正により指定教習所で大型二輪教習が開始され、容易に免許が取れるようになるまでに実に20年の歳月がかかった。そのおかげで大型二輪免許の保有者数が飛躍的に増加し今の大型バイクブームがあるのだが、その一方で再び大型バイクによる事故が増加しているのは皮肉なことだ。

だがそうなると、お上も黙ってはいられないはずで、再び規制強化への動きが始まらないとも限らない。このまま死亡事故が相次げば、取締りも益々強化されるだろうし、バイクはやはり危ないから封じ込めておいたほうがいい、という世論に傾くことだってあり得るのだ。

思い出してほしい。東名高速での死亡事故がきっかけとなり「あおり運転」が厳罰化され、6月30日から「妨害運転罪」が施行されている。もし今のタイミングで、無関係な歩行者などを巻き込むバイク事故が起きたとしたら、世間はどう思うのか、社会はどう反応するのか……。

ライダー諸兄には、今そういう局面にきているかもしれない、という危機感を持って、さらなる安全運転に努めていただきたいと思うのだ。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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