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「今あったらなぁ」のバイク達(3)【ヤマハ・XJ400】正統派美人を思わせる凛とした佇まいに惚れた

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
YAMAHA・XJ400(1980) 画像出典:Webikeニュース

今のバイクは素晴らしいけれど、昔にも優れた楽しいバイクがいろいろあった。自分の経験も踏まえて「今あったらいいのになぁ」と思うバイクを振り返ってみたい。第3回は「ヤマハ・XJ400」について。

ヤマハの美学に彩られたモデル

かつて「ペケジェー」の愛称で親しまれたXJ400。小ぶりなティアドロップ型タンクにスリムで伸びやかなボディ。すらりと後方に伸びた左右2本出しのメッキマフラーが美しく夕日に映えるバイクだった。

XJ400が登場したのは1980年の夏。前年にカワサキから衝撃的なデビューを飾った直4マシン、Z400FXの対抗馬として出てきたのがXJだった。Z独特の角張った武骨なデザインに対し、XJは白鳥が首をもたげたような気品ある姿が印象的。

エンジン背面にジェネレーターなどの補器を配することで車体幅を2気筒並みにスリムに収めるなど、ヤマハらしい美意識に彩られたエレガントなモデルだった。

当時は4気筒ヨンヒャクが憧れだった

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ヤマハと言えばSRが未だに高い人気だが、全体的なイメージはXJにとてもよく似ていると思う。だから、SRの形が好きな人はXJも好きかもしれない。ただ、当時はやはり4気筒が人気の的で、若者は皆、次々に出てくる新型をワクワクしながら心待ちにしていた。

ZかXJか、よく話題に上った。やんちゃな仲間内ではZの人気が高かったように記憶しているが、それでも自分はXJに密かな憧れを抱き続けていた。

当時学生だった自分は上野のバイク屋街で見つけた中古のXT250に乗っていた。空冷単気筒のタフなトレールモデルで普段の足としては申し分ないものの、やはり最新のカッコいい4気筒モデルに比べるとずいぶん見劣りする感じがした。

バイク乗りの間にも厳然としたヒエラルキーがあって、免許制度の改定により一発試験で限定解除したナナハンライダーは「神」。レプリカがやってくる前の「ヨンヒャク」ブームの中で、新車のZやXJを乗り回す若者は嫌味な富裕層。そして、貧乏学生は中古のオフ車かホークIIとだいたい相場が決まっていたのだ(笑)。

オジサンの妄言は大目にみてほしい

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XJは400ccクラスとしては車体が大柄で、高めに構えたアップハンで上体を直立させて堂々と乗る先輩ライダーの姿が眩しく見えたものだ。しかも、リヤシートにはいつも綺麗でとっぽい彼女の姿。正直、それが気になって仕方なかった!(笑)

特に憧れたのがサウンドだ。単気筒の「ボッボッ」、2気筒の「ドゥルドゥル」、に対して4気筒は「フォーーーン」とか「コーーーン」と透き通るように美しく、魂が揺さぶられるようだった。その中でもXJは割と重低音で、今ノーマルで聞くとそれほどのものではないかもしれない。記憶とは時間とともに美化されるものだ。

オジサンたちのむさ苦しい4発信奉の妄言の裏にはきっとそういう過去がある。だから大目に見てあげてほしい。

正統派美人のようなヨンヒャク

それから数年が経ち、ようやく自分にも新車が買えるようになったとき、バイク屋の店頭に並んでいたのは水冷エンジンにハーフカウルを纏った「XJ400Z」だった。最高出力は10馬力もアップして、戦闘機のようなコックピットにジェットサウンドがウリになっていた。

それはそれで当時の最先端としてカッコよく、自分にとっての初めての新車の相棒となったが、一方で心のどこかにはいつも空冷の初代XJの面影が残った。

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XJ400の製造期間は80年から84年と短く、今となっては中古車市場でもほとんど見かけることもなくなった。ノーマル車両となれば皆無に近いかもしれない。

自分の中にあるのは、正統派の和風美人のように控えめで端正な美しさを持った4気筒ヨンヒャク。そんなバイクがまたあってもいいのになぁ、と思うのだ。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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