寝かさずに曲がる!? バイクで林道を楽しく安全に走るコツとは…
深まる山々の緑に夏が近いことを感じる今日この頃です。ここ最近、メディアの撮影などで林道を走る機会が多く、あらためてその楽しさを再発見しました。大自然の中、雄大な景色とともに刻々と表情を変えていく路面を、知恵と工夫とテクニックで攻略しながら走破していくのは実に楽しくエキサイティングな体験です。
でも、林道未体験のビギナーにはなかなかハードルが高いことも事実。行きたい気持ちはあっても、尻込みしてしまうこともあるでしょう。そこで、今回は林道を楽しく安全に走るためのポイントを少しだけ紹介したいと思います。
ムリをしない
自分はモトクロスやトライアルといったオフロードのスペシャリストではありません。ただ、バイクが好きで若い頃から未舗装路を含め、いろいろな道を走ってきた経験はあります。そこで学んだ一番大事なこと。それはムリをしないことです。
これは舗装された一般道でも同じですが、自分の技量を超えたレベルで走ることほど危険なことはありません。ましてや初めて走る林道など何が待ち構えているか分かりません。乗り越えられるか不安な倒木や、渡れるかどうか分からない深い溝、スタックしやすい水溜まりなどは最初から避けて通る勇気が大事。そこでムリをして転倒し、マシンを壊したりケガを負ってしまったら、楽しいツーリングも台無しになってしまいます。
「失敗しそうだな~」と思ったときはだいたい失敗するものです。スッパリ諦めてその場所を迂回するか、別のルートを探すのが無難です。
路面とラインを読む
そこで重要になってくるのが状況判断です。林道などの不整地では、より安全で確実に走れそうな路面を探しつつ、ラインを読みながら走ることが重要になってきます。そのためには、目線を広く保ち、「遠くと近くを交互に見ながら」瞬時に最適なラインを組み立てていきます。
ポイントをいくつか紹介すると、ワダチや泥濘は避けて「路面のしまった高い場所」を選ぶと走りやすいことが多いです。逆に低い場所はぬかるんでいることも多く、ワダチにはまるとハンドルを取られやすくなります。
また水溜まりも深さが分からず、スタックする可能性もあるのでできるだけ避けて通りましょう。大小の石がゴロゴロ転がっている砂利道もよく遭遇しますが、「拳より大きな石は避ける」のが無難です。
当然ながら、速度が高くなるほど素早い状況判断が求められるため、特に初めてのルートでは速度を十分に落としましょう。林道はクルマ1台分ほどの道幅しかない場合も多く、ブラインドになっていることがほとんどです。急に対向車が現れることもありますので、特に先が見えない「コーナーの手前では速度を十分に落とす」ことが大事です。
車体を寝かさない
林道などの未舗装路は、アスファルトに比べて路面のミュー(摩擦係数)が低いだけでなく、前述のように路面コンディションがコロコロと変わるので、タイヤのグリップ力に頼った走りは期待できません。
厳密にはタイヤやサスペンションの性能、ホイール径の大きさなどによっても走破性やグリップ性能は大きく変わってしまうのですが、コーナーでは「バンクさせずに曲がる」のが基本になります。もちろん2輪ですから、ある程度は車体を寝かす必要がありますが、オンロードのようにタイヤのグリップ力に任せてバンク角で曲がることはできないということです。
ポイントは「なるべく車体を立てて曲がる」こと。そのための具体的なテクニックとして、まずは「ラインを直線的」にとることです。オンロードのように大きな弧を描いて曲がろうとすると車体を寝かせている時間が長くなりスリップしやすくなります。そこで、ある程度コーナーの奥まで直線的に進入して十分に減速し、ポイントで向き変えをして再び直線的に立ち上がる「くの字」のようなライン取りが有効です。
また、ワダチを斜めに切っていく場合などもハンドルをこじったり車体を寝かせるのではなく、「ステップワーク」でコンパクトに向きを変えるのが効果的。
その場合も、急アクセルや急ブレーキはタイヤが滑ったりロックしたりして転倒リスクが高まるので、アクセルは「じわっ」と当てて、ブレーキはリヤ側を中心に「やんわり」とかけるのが基本です。
足を着く場所を見極める
そして大事なことは「足を着く場所を見極める」こと。Uターンなどで足を着きたい場合は、予めどこに着くかを決めておくと失敗が少ないです。その場合はあえて前後輪をワダチに入れたほうが地面も近くなるので、足を着きやすい場合もあります。自分のバイクでどこまで足が届くのか、どの程度まで支えられるのかを前もって確認しておくと安心ですね。
急ぎ足でポイントを少しだけ紹介してきましたが、林道走行はとても奥が深く、それだけに上手く走破できたときの喜びもひとしおです。本格的なオフロードバイクではなくても走れる、軽めのフラットダートや舗装林道なども全国にありますので、事前に下調べをした上で仲間とトライしてみるのもおすすめです。きっと楽しい体験が待っていると思いますよ。