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頻発する「右直事故」 ギセイにならないためには!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト

右直事故が目立っている。そのほとんどが直進するバイクと右折するクルマとで起きている。新聞報道などで5月中に目についた同様の右直事故をざっくりとピックアップしてみた。

5月も日本各地で「右直事故」が発生

5月3日(水)午後8時50分頃、東京・港区で高速バスが大型バイクと衝突し、大型バイクに乗っていた19歳の少年が死亡。浜松町の交差点で高速バスが右折しようとしたところ、対向車線から直進してきた大型バイクと衝突した。高速バスを運転していた男(45)が過失運転傷害の疑いで現行犯逮捕されている。

5月12日(土)午後10時頃、横浜市旭区の交差点で乗用車とバイクが衝突する事故があり、バイクを運転していた18歳の少年が死亡し、一緒に乗っていた少女が重傷。乗用車を運転していた男(45)が過失運転傷害の疑いで現行犯逮捕された。男は「オートバイに気付かず、右折してしまった」と容疑を認めている。

5月31日(木)午前8時45分頃、広島市の国道で右折しようとしていたごみ収集車と直進していた大型バイクが衝突し、27歳の女性が死亡。現行犯逮捕されたごみ収集車の運転手の男(38)は、警察の調べに「相手が直進してくるのは分かったが、先に行けると思って右折した」と容疑を認めている。

5月26日(土)午後0時35分頃、埼玉県志木市本町5丁目の県道でバイクが軽自動車と衝突。バイクを運転していた20代ぐらいの男性が頭などを打ち死亡した。軽乗用車を運転していた無職の女(26)が現行犯逮捕。女が交差点を右折しようとした際、対向から来たバイクと衝突した。

ネットで数分検索しただけでも、バイクに関する右直事故の例は大量に出てくる。これは明らかに問題ではないか。

気付かなかった、先に行けると思った

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上記の事例でも明らかなように、右直事故の直接的な原因はほぼ右折待ちのドライバー側にある。加害者の多くは「直進するバイクに気付かなかった」とか「先に行けると思った」と口を揃える。

だが何故そうなってしまうのか。経験の浅いドライバーだけではない。高速バスの運転手やゴミ収集車など、職業ドライバーが多く含まれているのが不思議だ。

バイクは過小評価されている

ドライバー側の問題として、バイクの見落としや速度・距離感覚のズレが挙げられる。理由としては、バイクはクルマに比べてサイズが小さく、特に前面投影面積が小さいので見落とされやすいという弱点がある。小さいものは大きいものより遠くにあるように見え、より接近速度も過小評価されるというデータがある。

また、検証したわけではないが「なめられている」のではないかと思う。もし直進してくるのが大型トレーラーやベンツのSクラス、フェラーリなどだったらどうだろう。「大型車や高級車に乗っていると気が大きくなって運転が乱暴になる傾向がある」という記事をどこかで読んだことがあるが、その逆で、ドライバーから見て小さなバイク(たとえ大型バイクでも)は存在を低く見られているのではないか。

考えたくはないが、たとえ衝突しても自分は大丈夫という深層心理が働いているのでは、とこれだけ右直事故が頻発すると勘ぐってしまう。

「自分は優先」という思い込みが危ない

ライダー側の問題もある。「直進車は優先」という盲目的な思い込みだ。もちろん、交通事故を減らすためにこうしたルールが作られた訳だが、たとえ信号で規制されているとしても人間のやることに100%はない。自分は正しくても、相手が正しい判断をしてくれるかは未知数なのだ。

ちなみに欧州でよく見かける環状交差点(ラウンドアバウト)などは信号の規制はないが、その分、互いに譲り合い探り合って速度を落とすため、十字路の交差点に比べて致命的な事故は少ないと聞く。

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ドライバーの意図を見抜く

では右直事故の被害者にならないためにはどうしたらいいのか。

まずバイクの操作では、交差点に進入するときはアクセルオフにして減速しつつ、いつでも止まれるようにブレーキレバーに指をかけ、ブレーキペダルに足をセットしておく。その上で右折車の動きやドライバーの表情や目線から意図を見抜く。

自分はドライバーの目を見るようにしている。ジリジリと曲がり始めていたり、こちらを見ていなかったり、曲がる先だけを見ていたり、助手席の人と話をしているなど、対向車の様子に関心が薄いような場合はさらに減速しつつ、場合によってはヘッドライトをパッシングさせたり、ホーンを鳴らして注意喚起もする。

本当に危なそうな気配を感じたら、止まるぐらいまで減速してしまうことさえある。よくアクセル全開で通勤ラッシュの交差点を通過していくスクーターなどを見かけるが、自分には恐ろしくてとてもできない。

大型車の左後ろは完全な死角

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危ないシチュエーションを避けることも大事だ。渋滞すり抜けは基本的にNG。早く前に進みたい気持ちは重々分かるが、渋滞の切れ目からいきなり右折車が出てくる「サンキュー事故」の餌食になりやすい。右直に限らないが、同様にコンビニなどの出入口も危険がいっぱいだ。

また、ポジション取りも重要。一見安心感のある大型車の後ろはダメで、右折車からは全く見えない。特に大型車の斜め左後ろなどは危険で、大型車をやり過ごしたと思った矢先に、勢いよく曲がってきた右折車と衝突する可能性が高い。とにかくクルマの死角に入らないことだ。

自分の身は自分で守る

最近では4輪の安全テクノロジーが2輪にも応用されつつあり、いずれ衝突低減ブレーキなども実用化される日がくるかもしれないが、現状ではライダーは自衛する他ない。

日頃から危険予知の感性を研ぎ澄ませつつ、慎重で謙虚なライディングを心掛けることはもちろん、装備面でも信頼できるヘルメットや胸部プロテクター、バイク用エアバッグなどのセーフティアイテムを身に付けることを意識してほしい。念には念を。まずはそこからだろう。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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