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【箱根ターンパイク事故からの考察】 バイクで死なないためには!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト

9月に入り夏の暑さもようやく和らいできた日曜の早朝。

また、痛ましい事故が起きてしまいました。

箱根ターンパイクでバイク同士が衝突

警察などによると、3日午前8時20分頃、神奈川県小田原市の自動車専用道路「箱根ターンパイク」でバイク同士が衝突し、運転していた48歳男性が転倒。救急車で搬送された病院で死亡が確認されたとのこと。

また、別のバイクを運転していた47歳男性と後部に乗っていた男性の息子とみられる16歳の少年もそれぞれ怪我をして、ドクターヘリや救急車で病院に搬送されたということです。

現場は片側1車線のカーブで、警察は現場の状況などから、死亡した男性のバイクが対向車線をはみ出した可能性があるとみて、事故原因を詳しく調査中とのことです。

まずは故人とご家族にお悔やみを申し上げると共に、怪我をされた方々の早い回復を祈りたいと思います。

走り屋のメッカに大型スポーツバイク

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箱根ターンパイクはよく整備された観光道路で、季節の移ろいを感じつつ気持ち良くツーリングを楽しめる所です。一方でバイク乗りの間では走り屋のメッカとしても知られ、サーキットまがいの暴走を繰り返す心無いライダーが多いことも、残念ながら事実です。

ニュース映像などによると、事故現場は緩やかな中高速コーナーの出口付近のようです。おそらくは死亡した男性がカーブを曲がり切れずに対向車線にはみ出したところ、反対側から来た親子タンデムのバイクと衝突したのだと思われます。

2台ともスポーツタイプの大型モデルで、破損したバイクの状態からも衝撃の大きさが予想できます。

風光明媚でも思わぬ落とし穴が

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筆者も数えきれないほどターンパイクを利用していますが、この辺りは緩やかなカーブが続き、路面コンディションも良好なのでつい速度も上がりがちです。

ただ、微妙にコーナーの曲率(曲がり具合)やカント(左右方向の傾斜)が変化していたり、また想像以上に勾配が急で、上りと下りでの速度感覚やブレーキングのタイミングなども大きく変化します。

また、特にこの季節は夏に成長した樹木がブラインドになり、先が見通しづらくなっていることも多々あるなど、実は非常に難しい道路なのです。

回避できる余地を残して走ろう

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耳にタコかもしれませんが、事故を防止するためにはとにかく速度を落とすしかありません。制限速度の議論は別の機会にするとして、もし何かのミスをしたときにも落ち着いてリカバリーできる速度で走るべきです。

例えば、ブラインドコーナーを曲がった先に何か不測の事態があっても、回避できる余地を残す速度ということです。

もちろん、心臓発作などの身体的なトラブルで急に制御不能になったり、鹿やイノシシが飛び出してきたり、落石などといった自分ではどうしようもない不可抗力も無いとは言えません。

ただ、それであっても可能な限りの回避行動をして、たとえ結果的に衝突や転倒をしたとしても、死なないように努力することが大事なのではないでしょうか。

バイク乗りはもっと練習すべき

さらに厳しいことを言えば、バイクに乗る人はもっと運転を練習すべきです。

特に最近は大型スポーツバイクによる中高年ライダーの事故が目立っていますが、カーブを曲がり切れずに衝突とか、ブレーキを誤っての転倒などは明らかに本人の認知判断ミス、技量不足によるものです。

高性能なスポーツモデルに乗るということは、それを安全に操るための知識と技術とマインドが必要になります。スキーでもマリンスポーツでもいきなり上級者向けの高性能モデルを使えば、扱い切れずに怪我をすることになるでしょう。バイクも同じではないでしょうか。

腕を磨きたいなら講習会やサーキットへ

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ライディングスクールや安全運転講習会に行けば、自分の技量も客観的に分かりますし、安全マインドも磨かれていきます。確かなスキルを身に付けることで心に自信と余裕も生まれ、峠道をむやみにぶっ飛ばす気もなくなるはずです。

「そんなお金はない」と言う人がいますが、警察などが開催している安全運転講習会なら、保険料のみの数百円程度で参加できます。高速代とガソリン代と多大なリスクを支払って遠くのワインディングまで腕試しに行くより、よっぽど安上がりで得るものも大きいのでは。

「安全はいいからもっと攻めたい」という人は是非サーキットへ行ってください。同じ人間とは思えないほど速くて上手いライダーがいくらでもいますし、速度を上げるほどにどれだけ止まれないか、どれだけ曲がれないかを身をもって理解できるはずです。

バイクに乗ることは責任を持つこと

バイクに乗るということは交通社会の一員としての自覚を持ち、自分だけでなく社会や家族に対して責任を持つということです。

私自身、ここで偉そうなことを言うつもりは毛頭ありません。ただ、大好きなバイクで死んでほしくないのです。他人を巻き込んでほしくないのです。

バイクに乗るということが、大人の趣味として胸を張れるものであってほしいのです。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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