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増える「逆ギレ老人」と運転マナー あなたは大丈夫と言えますか!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト

最近、「逆ギレする老人」とか「暴走老人」など、お年寄りのマナーの悪さを指摘する記事をよく目にするようになりました。

私もスーパーや飲食店などで、店員さんに向かって一方的に怒鳴り散らしているお年寄りを目にしたことが何度かあります。どういう事情か分かりませんが、いい身なりの紳士なのに大人げないと思いますし、邪険にするわけにもいかない店員さんも気の毒だなぁと。

ちなみに、65歳以上の高齢者犯罪の検挙数はここ10年で急激に増え、特に傷害は9倍、暴行は48倍にも増加しているというデータもあるようです。

これまでは他人事だったので、見て見ぬふりを決め込んでいましたが、それが自分の身に降りかかるとは・・・。そしてこの問題は自身の行動や運転マナーを考えるきっかけにもなりました。

輪止めがないことに逆ギレ

実は先週、2度も逆ギレに遭ってしまったのです。

1度目はあるホームセンターでのこと。駐車場にクルマを停めて家族が買い物しているのを待っていたときでした。突然、ドンと後ろから衝撃を感じて振り返ると、ワゴンタイプの車が後ろ向きに自分のクルマに張り付いていました。

どうやら、バックで駐車しようとして勢い余ってぶつかったようでした。そこは輪止めがない駐車場だったので下がり過ぎてしまったようです。

「あ~、面倒だな」と思いつつも、すぐさまクルマを降りて相手の運転席を覗いてみると80歳ぐらいの老紳士。気づいていない様子なので窓ガラスをトントンと叩くと「はあ、何ですか?」と。「ぶつかってますよ」と私。

釈然としない様子のまま出てきた老紳士は、ぴったりくっ付いたクルマ同士を見て「ホントだ、すみません」と反射的に謝罪の言葉が出たようでした。

と、そこまでは良かったのですが、どうも納得できない様子で次第にグズりはじめてしまい、私の「停め方が悪い」とか、「どこも壊れていないからいいじゃないか」などの反撃に転じてきて、さらには怒りの矛先は駐車場の警備員にも飛び火して、「輪止めがないからこうなった」とか「店長を呼んで来い」などと話はエスカレートしていきました。

まあ、私のクルマはボロいワンボックスなのでちょっとぐらい凹んでも気にしませんし、私自身も特にむち打ちなどのダメージもなかったので、相手もお年寄りだから大目に見てあげようかなと思っていたのですが、なんとも後味の悪いことになってしまいました。

そして、それ以上にもし自分の家族や子供などがクルマの間に立っていたらと思うと、ぞっとするとともに相手の無神経さに対して怒りも込み上げてきました。

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危険を知らせる警笛に逆ギレ

2度目は高速道路の料金所でのこと。仕事帰りに高速道路のインターチェンジに差し掛かり、まさにETCゲートに向けてレーンを減速中だった私のクルマの目の前を一台の軽自動車が横切ろうとしてきました。

どうやら現金払いのレーンに入ろうとして間違いに気づき、ゲート直前で慌ててETCレーンにハンドルを切ったようでした。

我が目を疑いましたが、それはまさに横断に近いレーンチェンジで、急に死角から飛び込んできた軽自動車に気づいて急ブレーキをかけて何とか衝突は免れた感じでした。

思わずクラクションを鳴らすと、運転していた初老の女性ドライバーはこちらを睨むように「はぁ?何か?」という表情。悪びれた様子もなくそのままプンと行ってしまいました。

もし衝突していたら、どうするつもりだったのでしょう。軽自動車の運転席に横から突っ込む形となり、相手にとっても非常に危険なことになったはずです。そこまで気づいていたのかどうか・・・。

ふとバックミラーを見ると、後続のクルマもすぐ後ろに止まっていて、けっこうギリギリだったようでした。運が悪ければ自分も追突され、二次災害の要因を作るところだったのです。

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自分に奢りはないだろうか

お年寄りが運転するクルマが暴走して歩行者に突っ込むという事件が後を絶ちませんが、それは極端な例としても、今回のような些細なトラブルは毎日のように日本全国で多く発生しているものと考えられます。

当然、お年寄りだけが事故を起こしているわけではありませんが、社会の高齢化が進むにつれて、社会問題として顕在化することは間違いありません。お年寄りの事故では「ブレーキとアクセルの踏み間違い」や「高速道路の逆走」など、自分が間違いを犯していることを認識していない例が目立ちます。

老人が悪いと言っているわけではありません。加齢によって判断力や集中力が低下しいくのは仕方のないことですし、それでもクルマに乗る必要に迫られる人もいるでしょう。

ただ、そうした行動の根底には“昔とった杵柄”への奢りや強い自己肯定の意識があるかもしれません。「自分のやっていることは常に正しいし、間違えるはずがない」と思う気持ちがそもそも間違いなのかもしれませんが、そうした心理面の変化も老化現象の一部であるとすれば、問題はさらに深いものになります。

高齢ドライバーの身体能力の衰えや認知・判断力の低下をフォローする教育プログラムの充実に加え、こうした事故と「逆ギレ」傾向との関連性も含めて研究することも必要と思います。

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今回のことはけっして楽しい体験ではありませんが、「最近もしかしたら傲慢になっていないか、運転を過信していないだろうか」とあらためて自分自身を振り返る良い機会にもなりました。若い人には関係ない話と思われそうですが、いつか誰もが通る道です。

ドライブやツーリングが気持ちいい季節になりましたが、一方では車もバイクも操作一つで凶器になりうる乗り物です。自分や家族、他人の安全と幸せを守るためにも、運転マナーについて今一度考えてみてはいかがでしょうか。

※原文より筆者自身が加筆修正しています。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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