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「自転車専用ハイウェイ構想」に見るその先の一歩

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
自転車専用レーンの整備は進むのか

最近読んだニュースの中に「自転車専用ハイウェイ」構想が世界の都市で広がっている、という記事があった。

特に進んでいるのは欧州諸国で、中でもドイツでは自転車版のアウトバーンを計画中だとか。首都ミュンヘンと郊外都市を結ぶ自転車専用レーンのネットワークで、自動車道とは完全に分離されるらしい。幅4メートルの専用道路を時速19キロで走行可能で、交差点も信号も基本的にはないとのこと。他にも長距離の自転車専用道路をすでに28本も整備したオランダや、同じく全長約354kmの専用道が整備されているコペンハーゲンの例なども取り上げられていた。

日本では、2020年東京五輪に向けて東京都が自転車専用レーンを整備して総延長を倍増させる計画である。指定地区内で自転車推奨ルートを約200km整備する方針で、主に車道左側に自転車レーン(自転車専用通行帯)、および「自転車ナビライン」などの路面表示を設置するそうだ。

日本が参考にするのは、狭い道路環境など似ているロンドンの例。ロンドンもまた先の五輪を契機に、市街地と近郊都市間を途切れることなく結ぶ「自転車スーパーハイウェイ」の導入に成功したという。ただ、都の計画ではルートが途切れる箇所も多く、国道と都道の交差点など管轄が異なる道路が関係する場所では、その都度交渉が必要になるなど難航するケースも予想される。こうした場合でも、都が主導して自転車推奨ルートの整備を行うそうだが、ここでも縦割り行政が深く根を下ろすなど問題も山積みのようだ。

最近、都内でも本当にサイクリストが増えたし、地方のワインディングでも自転車でヒルクライムなどを楽しむ愛好家の姿を見かけることが多くなった。環境やサイフに優しく健康にも良い自転車に乗る人が増えるのは大歓迎である。ただ、やはりクルマやバイクと共存するのは難しいとつくづく思う。先日も仕事帰りの夜にクルマを運転していたら、暗闇の中から突然自転車が現れて慌てたことがある。ライトや尾灯があっても光源が小さくて目立たないのだ。つい、「危ないなー」と舌打ちしてしまったが、私自身バイクもクルマも自転車も好きなので、悩ましいところだ。立場が違うと、見方も変わってくる。自転車の乗る側の安全意識の向上も求められているのだ。

自転車専用道路が整備されれば、サイクリストだけでなくクルマのドライバーや歩行者にとっても安全だし、自転車が苦手とするストップ&ゴーがなくなることでより快適になり、移動効率も飛躍的に高まることだろう。都市部の渋滞も減って環境にも優しく、経済効果も高まるかもしれない。そうなれば、さらに自転車を利用する人が増えて、道路や施設の整備ももっと進んでいくはずだ。

2輪ジャーナリストとしての立場からもう一歩突っ込んでしまうと、本来ならばクルマとバイク(モーターサイクル)も分けられるべきと思う。動力性能や加速力はクルマと同等でも、アクシデントに対する防護性能がまるで違う。バイクには身を守ってくれる鉄の囲いもエアバッグもない。サーキットでも4輪と2輪は同時に走ることができないが、その理由を簡単に言えば危ないからだ。バイク専用道路とまではいかなくても、いつの日かバイク専用レーンができたら嬉しいと思う。ちなみに以前視察した中国の新しい都市作りでは、自転車と電動スクーターが一緒に走れる2輪専用レーンを設けている例を見たことがある。ひとつの参考例にはなると思う。

「交通分離」を突き詰めていくと都市計画から見直さなくてはならないが、人類がこの先も歩むであろうモータリゼーションの進化を長いスパンで考えたとき、「それはいつ着手するのか」という問題のようにも思える。莫大な費用と時間がかかるだろうが、実現すればすべての利用者が幸せになれるはずだ。すべからく、次世代に引き継げるだけのとっかかりは作っておきたいものだ。

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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