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【負の連鎖か】俳優・萩原さんのバイク事故で思うこと

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
写真はイメージ

ご存じの方も多いと思いますが、22日の夕方6時過ぎ、東京・高円寺近くの青梅街道をバイクで走行中だった俳優の萩原流行さんが交通事故で亡くなりました。

警視庁によると、萩原さんのバイクは片側3車線の中央車線を走行中、何らかの理由で転倒し、前を走っていた護送車の右側の前輪付近に接触。その後、萩原さんは一番右側の車線に投げ出されたところを乗用車にひかれてしまいました。警視庁は萩原さんが護送車を避けようとして転倒した可能性があるとみて、自動車運転処罰法違反の疑いで護送車を運転していた高井戸署の男性警部補から事情聴取をしているということです。

現場は普段なら見通しの良い3車線道路ですが、事故当時は陽も落ちて薄暗く、雨も降っていたようです。時間的にも夕刻で混んでいたことでしょう。当然、視界も悪かったはずで、「2台が異常に接近して並走していた」という目撃証言からも、互いの死角に入っていた可能性もあります。

萩原さんが転倒した1次原因を作ったのが、警察の護送車だったことが波紋を広げていますが、そこだけをクローズアップしても問題解決にはならないでしょう。新聞報道によれば「一番左側の車線を走っていた護送車が路上駐車の車をよけるため車線を変えたところ、中央車線を走っていた萩原さんの大型バイク『ハーレーダビッドソン』が転倒し、護送車の前輪付近に接触した」とも伝えられています。

もちろん、護送車のドライバーに非があるのはもちろんですが、本当の1次原因を作ったのは「路上駐車していた車」なのかもしれません。その時そこに止まっていなければ、負の連鎖は起きなかったのかもしれません。また、一番無念だったのは萩原さん本人でしょうが、結果的に死亡事故の直接加害者となってしまった後続車のドライバーについてもまったく気の毒です。日本の法律においては、たとえ不可抗力であったとしても何らかの刑事、民事、行政上の責任は免れないはずで、実は一番の被害者なのかもしれません。

事故に「たられば」はないですが、もし夕刻でなく雨でなければ、事故の当事者お互いがより早く気づいて回避し、止まれたかもしれません。もしクルマに自動ブレーキが装備されていれば、もしバイクに高精度なABSが装備されていたら救えた命かもしれません。

それでも事故を完全に予測しコントロールすることは不可能です。であるなら、自己防衛するしかありません。運転環境が悪いときほど目立つウエアを着て、車間距離を空けて、速度を落とすなど、より慎重な運転を心掛けるようにしましょう。

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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