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【見ているのに見えていない】ドライバーの意外な盲点とは!?

佐川健太郎モーターサイクルジャーナリスト
バイクは見落とされやすい

あるとき、バイクで地下駐車場に入ろうとして順番を待っていると、いきなり前にいる車がバックしてきました。数メートルあった車間がどんどん詰まってきます。反射的に足で地面を蹴って後退しようとしましたが、大型ツアラーだったのでびくともしません。こんなとき、バックギアがないバイクはどうにもならないものです。

一瞬パニックに陥りそうになりましたが、左手でなんとかホーンを探り当てて警笛を1回、2回、3回と鳴らして、やっと気づいたのか止まってくれました。その若い男性ドライバーは振り返って後ろを目視していたのにも関わらず、直後にいるバイクにはなかなか気付くことができなかったのです。これはまさに盲点です。

「盲点」とは網膜に視神経が入ってくる部分のこと。そこだけ視細胞がないため見えないそうです。子供の頃にやったことがあると思いますが、紙に書いた2つの点に片目をつぶって顔を近づけていくと点が消える瞬間があります。それが生理的な盲点ですが、盲点にはもうひとつの意味があります。本来の意味から転じて「気づいて当然なのに見落としていること」の例えとしてよく使われるのはご存じのとおりです。

この場合、心理的な影響も大きいようです。クルマとバイクが一緒に利用できる駐車場はまだまだ少なく、ドライバーはそんなところにバイクがいるとは考えもしなかったのかもしれません。存在するはずがないと思いこんでいると認知が遅れるものです。交差点でよく発生する「出会い頭」の事故の多くが、実は“思い込み”に起因しているのと同じです。クルマの構造も影響していたかもしれません。車高の高いワゴン車だったので、バイクのヘッドライト(常時点灯式)がリヤウインドーの死角に入り、ドライバーから見えにくかった可能性もあります。

生理的な盲点と心理的な盲点。今回のケースがそのどちらに当たるのかは分かりませんが、いずれにしても人間には盲点があるということ。そのドライバーもこちらに顔を向けているのに、おそらくは知覚として認知できていなかったのでしょう。「心ここに在らざれば視れども見えず」という諺があるように、見ているのに見えていないということは日常の中にもよくあることと思います。春の足音も近いこの頃、あらためて心眼を以て安全運転に努めましょう!

出典:Webikeバイクニュース

モーターサイクルジャーナリスト

63年東京生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、RECRUITグループ、販促コンサルタント会社を経て独立。趣味が高じてモータージャーナルの世界へ。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。㈱モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

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