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止まないブーイング、 “もはやトップクラスではない”、日本にお手上げ、ドイツ代表監督解任秒読み

了戒美子ライター・ジャーナリスト
ドイツに圧勝し笑顔の伊東純也、スタッフ、田嶋幸三会長、森保一監督(写真:なかしまだいすけ/アフロ)

ドイツ代表にとって悲劇の一夜となった。1-4と日本にまさかの大敗。昨年カタールW杯での日本戦は1-2で敗れはしたものの当時は内容的にはドイツが圧倒しており、結果だけが出なかった試合と捉えることもできた。だが、今回の試合は違った。スコアだけでなく、内容でも日本が明らかに上回った。ドイツサッカー連盟のルディ・フェラースポーツディレクターは「ちょっとショックです。雰囲気は素晴らしく最初は観客が私たちに味方してくれた。でも、恥ずかしいけれど、当然の結果だった。こういう負けは痛い」と中継局RTLのインタビューに落胆を隠さなかった。

 この日の日本戦は、2021年にハンジ・フリックがドイツ代表監督に就任して以来ちょうど25試合目の国際試合だった。振り返ると、21年9月のフリック体制初陣から8連勝したは良いものの、25戦トータルで12勝7分6敗と勝率は5割をきっている。2014年ブラジルW杯王者がここまで落ちるとはだれにも予測できなかっただろう。主将を務めたイルカイ・ギュンドアンは「我々は自分たちを過大評価していたかもしれない」と自省していた。

 スタジアムのピッチで試合後に行われたテレビ用のフリック監督インタビュー中、ブーイングのような批判的な口笛が鳴り響いたとビルト紙は伝えている。観客が帰路につき静かになったスタジアムでそれはとても大きく聞こえたそうだ。フリック監督は日本を称えるしかできなかった。

「現時点で、我々にはこれほどコンパクトな守備を打ち破って得点する手段を持っていない。今日はこの相手に勝てる状態ではなかった」

 大敗を受けて、世論やメディアの興味はフリック監督がいつ解任される(もしくは辞任する)かに集まる。フリックがこのまま監督の座に残るには、12日に行われるフランス戦で”奇跡を起こすしかない“とビルト紙。だが、フリック監督は強気を崩さない。「我々はうまくいっていると思うし私はここにふさわしい監督だ。ドイツサッカー界の一員として、目を覚ます必要がある」と自身の退任、責任を否定している。だが、常にフリック監督擁護派に立ってきたルディ・フェラーSDでさえ今は言葉を濁す。

「まずは気を引き締めて、明日少しトレーニングをして、それからフランス戦だ。その後深呼吸をして先のことを考えよう」

 さらにルディ・フェラーは、「もはや我々はトップレベルにはいない」と指摘。もはや世界王者の面影のなくなったことを認めるしかなかった。

 ドイツ代表に立て直しが急務なのは、来年行われる欧州選手権がドイツ開催だから。ホーム開催の大舞台で恥をかくわけにはいかない。そのために、フリック監督はフランス戦で内容、結果の両方、耳を揃えた勝利を挙げるしか残された道はない。

ライター・ジャーナリスト

1975年埼玉県生まれ。岡山、神奈川、ブリュッセル、大阪などで育ち、98年日本女子大学文学部史学科卒業。01年サッカー取材を、03年U-20W杯UAE大会取材をきっかけに執筆をスタートさせた。サッカーW杯4大会、夏季五輪3大会を現地取材。11年3月11日からドイツ・デュッセルドルフ在住。近著に「内田篤人 悲痛と希望の3144日」がある。

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