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「娘」を20回も連れ出したのはやはり後継者だから?「金正恩40歳」の来年1月8日に注目!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
11月30日に空軍司令部を訪れた金正恩総書記と娘

 北朝鮮の18日の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星18」の発射には「ジュエ」と呼ばれている娘の他に妻の李雪主(リ・ソルジュ)夫人も立ち会っていたことが映像で確認された。

 李夫人は娘ほどミサイル発射には頻繁には立ち会っていないが、「火星18」の発射には必ず顔をみせている。

 しかし、今回、国営通信・朝鮮中央通信は夫人だけでなく、金正恩(キム・ジョンウン)総書記が娘を連れて来たことについても言及してなかった。これまでは金総書記が「愛するお子様と共に」とか、「尊敬するお子様をお連れして」と報道していたが、今回は「金正恩総書記がICBM部隊の発射訓練を現地で参観した」とだけ伝えていた。

 昨年11月18日の「火星17」の発射の際にお披露目されてから今年だけで延べ18回、父親の野外活動に同行しているが、不思議なことに3月から7月にかけては北朝鮮のメディアは「お子様と一緒に」の文言が削除されていた。

 この期間、3月9日には新型小型弾道ミサイル発射、3月16日にはICBM「火星17」の発射、3月18日には核戦術核運用部隊の核反撃仮想総合戦術訓練視察、4月13日には「火星18」の発射、4月16日にはサッカー観戦、4月18日には宇宙開発局の視察、5月16日には偵察衛星発射準備委員会訪問、そして7月12日には「火星18」の発射などの「国事」があったが、父親とのツーショット写真は配信されたものの「お子様と一緒に」との言及はなかった。

 「お子様と一緒に」の文言が復活したのは8月26日の海軍司令部訪問からで以後、9月9日の建国75周年閲兵式、11月23日の国家航空宇宙技術総局の科学者、技術者、活動家らとの記念写真撮影及び祝賀宴、そして11月30日の空軍司令部訪問と、「尊敬するお嬢様」「愛するお嬢様」という言葉が立て続けに再登場した。

 報道したり、しなかったりすることにどのような深い意味があるのかは定かではないが、どちらにしても、娘がすでに後継者に「内定」しているか、後継者の最有力候補であることには変わりがないようだ。

 今回、「火星18」が発射された12月18日は月曜日である。発射された時間は午前8時24分。また、11月23日に軍事偵察衛星発射成功を記念して国家航空宇宙技術総局の科学者、技術者、活動家らと記念写真を撮っていたが、この時も平日(木曜日)だった。

 娘の年齢は不詳だが、巷間で言われるように2012年生まれならば、まだ11歳の小学生である。休日や日曜日ではないわけだから本来ならば学校に行っている時間である。

 「お姫様」のような存在であるが故に通学しておらず、御殿のような私邸もしくは官邸で家庭教師を雇って個人教授をしているならば学校に行かせなくてもおかしくはないが、そうでないとすれば、金総書記は娘を休ませて連れていったことになる。祖父の金日成(キム・イルソン)、父の金正日(キム・ジョンイル)時代にはなかったことだけに「異常現象」と言える。

 来年1月8日になると、金正恩総書記はちょうど40歳になる。執権して11年経ったので偶像化の一環として自らの誕生日を「民族最大の名節」(祝日)に定めるかもしれない。父親の金正日氏も1994年に権力を引き継いでから11年目の1995年に「2月16日」の自身の誕生日を「民族最大の名節」に定めたからである。

 北朝鮮では過去の例からして節目の日は必ず表には出さない内々の秘め事がある。例えば、金日成主席は還暦になった1972年に長男の金正日氏を正式に後継者に定めていた。それまでは金正日氏については実名を明かさず、「親愛なる指導者」とか「党中央」という隠語でしか呼ばれていなかった。

 金正恩総書記も2009年に後継者として正式に表舞台に登場するまでは「青年大将」と呼ばれ、学校では子供らが正恩氏を称える賛歌「パルコルム」(足音又は足跡)を歌っていた。

 今は北朝鮮のメディアは娘を「愛するお嬢様」「尊敬するお嬢様」と呼んでいるが、後継者ならば父親の40歳を機に別な敬称が用いられる可能性も考えられなくもない。また、娘が後継者であることを暗示するような記事が登場することも考えられる。

 なお、今回配信された25枚のうち娘が写っていた写真は5枚だが、後ろ姿や横向きの写真ばかりで、正面から撮った写真はなかった。また、李夫人が写っている写真は25枚の中に1枚も含まれてなかった。
(参考資料:デビューから1年 後継者と目される「金正恩の娘」の全公式活動)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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