東京とソウルはなぜ感染者数で4.5倍も差が開いたのだろうか?

PCR検査を行う感染安全診療所のブース(出所:ソウル市)

 韓国中央疾病対策本部が午前10時に発表した韓国の感染状況によると韓国の昨日(17日)の国内感染者は18人。この5日間、25人(12日)、27人(13日)、27人(14日)、22人(15日)、22人(16日)と20人推移していたが、ついに20人を切って18人。20人を割ったのは2カ月ぶりである。

 初の感染者を日本よりも4日遅れの1月20日に確認した韓国は2月18日までは一日の感染者は一桁で推移し、計31人に留まっていた。しかし、翌19日に20人の感染者を確認してからは20日54人、21日100人、22日229人と倍増し、29日には一日で最多の916人の感染者を確認していた。

 韓国で感染者が減少し始めたのは3月8日(367人)あたりからで9日248人、10日131人と大幅に減り、15日には二桁の76人まで減少した。二桁に落ちるまで要した時間は1週間。以降、三桁は4月1日の101人を最後に一度もなかった。

 首都ソウルも昨日の感染者は僅か1人。この一週間は2人(11日)、8人(12日)、3人(13日)、5人(14日)、2人(15日)、2人(16日)、17日(1人)と推移したが、一日1人は3月6日以来である。この1週間の合計は23人。感染者は累計で621人。

 一方東京はどうか?

 この一週間197人(11日)、166人(12日)、91人(13日)、161人(14日)、126人(15日)、148人(16日)、201人(17日)と推移し、合計で1090人、ソウルの約47倍。累計でも東京(2795人)はソウルより約4.5倍も多い。

 初の感染者は東京が1月24日、ソウルは1月23日。ほぼ同じ時期だった。1か月後の2月24日時点でも感染者は東京、ソウル共に同数の32人であった。さらに、その1か月後の3月24日の時点では東京172人に対してソウル334人と、東京の感染者数はソウルの半分程度だった。

 それでも、3月24日に17人、25日に最も多い41人の感染者を出したことで小池百合子都知事は緊急記者会見を開き「ロックダウン(都市封鎖)になるかもしれない」と、都民に週末の不要不急の外出を控えるよう要請していた。実に不思議なことだ。

 ソウルはすでに2月中に2度(26日=19人、28日=12人)も二桁の感染者が出ていた。翌3月も10日に10人、11日に26人、そして12日には49人の感染者が確認されていたが、緊急事態宣言も、オーバシュートも、ロックダウン(封鎖)にも至らなかった。不要不急の外出自制の要請はあったものの飲食店に対する休業要請もなく、平常通り営業していた。

 東京とソウルは人口で東京(約1395万人)がソウル(975万人)よりも420万人ほど多いのと財源規模で差があるぐらいで、首都の機構や機能などインフラ面は東京23区、ソウル25区にみられるようにほぼ変わりはない。医療分野も同等レベルである。それにもかかわらず、東京がソウルよりも感染数で4.5倍も上回ってしまったのはなぜなのだろうか?

 両首都の感染者の推移をみると、一日の感染者数は3月22日(東京2人、ソウル10人)を最後に、逆転していた。3月23日(東京16人、ソウル6人)からは常に東京がソウルを上回っている。まさに、安倍総理が国会で東京五輪、パラリンピック開催の延期を事実上容認した日からである。それまでは安倍総理も小池知事も「五輪」の7月24日開催に執着していたのは周知の事実である。五輪開催に固執したためPCR検査を含む初動対応に遅れが生じたと言うほかない。

 感染病の拡大阻止は検査と隔離・治療に尽きるが、肝心のPCR検査は2週間前(4月4日の時点)ではソウルの9万5850件に対して東京は3806件と、東京はソウルの25分の1程度だった。人口比にすると、ソウル市民は100人に1人の割合でPCR検査を受けていたのに対して都民は3665人の1人と、圧倒的に少なかった。

 4月17日現在のソウルのPCR検査数は10万1266件で、東京は1万7789件。東京の件数はソウルの約5分の1程度にまで増えたが、その分反比例して感染者は3倍も膨れ上がり、累計で2795人に上った。ソウルよりもPCR検査による早期発見が遅れ、感染者を野放しにしてしまった結果、感染者を繁殖させてしまったのではないだろうか。

 「疑いのあるものは検査せよ」との方針からPCR検査を徹底していたソウル市当局のようにもっと早い段階から感染者の発見、隔離、治療に専念していたならば今のような憂慮すべき事態は避けられたであろう。

 ソーシャルディスタンス(社会的隔離)を徹底させ、感染を阻止し、ドライブスルーの導入などPCR検査を増やことで感染者を早期発見、隔離すれば、しばらくの間感染者数は急増したとしても、ソウルと同じような道を辿ることになるのではないだろうか。

 東京都が遅まきながらも本腰を入れて、PCR検査の強化に乗り出しことは評価、歓迎したい。

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(近著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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