「たまねぎ疑惑の法相」VS「背信の検察総長」の最後の死闘

文大統領から任命状を貰う尹検察総長(左端にチョ氏)(青瓦台のホームページから)

 「怪物」のように肥大化した検察を何が何でも改革するとのチョ・グック法相に対して組織防御の立場から監督機関の法相に民間人のチョ氏の起用をこれまた是が非でも阻止したい尹ソッリョル検察総長の攻防は文在寅大統領がチョ氏を法相に任命したことで第1ラウンドはチョ氏に軍配が上がった。

 検察の抵抗をかわし、法相に就任したチョ氏は就任挨拶で「検察への監督を強化する」と宣言し、夫人を起訴した検察への「報復措置」に出たが、その「武器」となるのが人事と組織再編である。チョ法相就任と同時に法務省が検察に対して取った一連の措置をみれば明白である。

 ▲尹検察総長を排除した捜査チームの結成を指示

 チョ法相は9日に法務省の幹部らを通じて大検(最高検察)幹部らに家族の捜査に関連してユン総長を排除した捜査チームを作るよう指示。検察が「捜査に露骨に介入している」と反発すると、チョ法相は「そうしたことを指示してない」と釈明したが、その後この法務省の幹部が金オス法務次官と李ソンユン法務検察局長であることが判明。

 金次官は李ナギョン総理と同郷(全羅南道)でソウル中央地検特捜部第1部長からソウル北部地検長を務め、昨年6月に法務次官となった。次官として民情首席室と検察捜査権調整案を論議したが、当時の民情首席秘書官が今のチョ法相。民情首席室は検察の捜査指揮権をなくし、警察に捜査終結権を付与する案を提示したが、検察上層部が反対したのに対して金次官は賛成に回っていた。李検察局長は文大統領の大学法学部の後輩に当たる。盧武鉉政権時代の2004-06年に民情首席室の特別監査班長だったが、当時の民情首席秘書官は他ならぬ文大統領だった。文政権になった2017年7月に検事長に昇進し、その後、検察局長に起用されていた。

 ▲側近らから成る「検察改革推進支援団」を創設

 チョ法相は10日には「検察改革推進支援団」を創設し、団長に黄ヒソク法務部人権局長を据え、李ジョングン次長検事も加わった。黄局長は「民主社会のための弁護士会」の出身で、検察による「盧武鉉大統領捜査」を批判したことで知られており、李次長検事もまた、盧武鉉元大統領の逝去後の2009年6月に検察内部ネットワーク「イプロス」に検察捜査を批判する書き込みをしたことで知られている。

 ▲検察捜査の縮小を狙った検察制度改善案の早期作成を指示

 チョ法相は11日、検察改革の核心である検察捜査の縮小など検察制度改善案を急いでまとめるよう指示。夫人を調査している特捜部の縮小を狙ってのことだ。検察制度改善案を作成するためチョ法相は「法務部監査官室とともに任ウンジョン検事(女性)を含む多くの検事から意見を聞くよう」指示を出していた。法相が特定の検事を指定するのは異例で、前例がないことだ。任検事はこれまで検察内部の掲示板に文政権に近い立場の発言をしてきたことで知られており、昨年5月には「2015年に性暴力、ストーカーをやったソウル南部地検所属検事2人を懲戒処分せずに退職させた」として金ジンテク前検察総長ら検察首脳らを職務放棄で告発したことで一躍その名が知られていた。

 ▲尹総長が推薦した新任の最高検察の事務局長の任命を拒否

 尹総長は最側近の康ジング水原高等検察の事務局長を推している。最高検察事務局長は一般職では最高ポストで、これまでは検察総長が推薦した人物が自動的に選出されてきた。ところが、今もって任命が遅れている。法務部は「候補者らの人事検証手続きが終わらない」ことを理由にしているが、総長を牽制するため遅らせているとみられている。こうしたことからチョ法相は人事権を発動し、尹検察総長の直系検事らを左遷し、手足を奪い、自らが辞表を出さざるを得ない状況に追い込むものとみられる。

 一方、「私を検察主義者と批判する人がいるが、私は憲法主義者だ」と反発している尹検察総長も捜査の手を全く緩めていない。「検事の政治的偏向は腐敗と同じだ。中立性を守り、正しいと思ったことをやればよい」と部下にはっぱをかけるなど不退転の決意で捜査に臨んでいる。そのことはチョ法相任命後の一連の検察の捜査にも表れている。

 ▲義理弟の前妻の釜山の自宅を家宅捜査

 チョ氏が新法相に9日に任命された翌日の10日に財産隠し疑惑関連で義理弟の前妻の釜山にある自宅を家宅捜査。家宅捜査を行ったのはチョ夫妻の疑惑を調べているソウル中央地検特捜2部で、2部は検察総長の「直属部隊」である。地検特捜部はチョ氏の母親の自宅の家宅捜査も終えている。

 ▲近く本丸のファンド疑惑で夫人を召喚

 夫妻のファンド疑惑絡みで裁判所に請求したファンド運営会社代表らの逮捕令状は棄却されたものの裁判所が事実関係を大部分認めており、すでに証拠を押さえていることもあって、連休後には事件関係者から事情聴取を行った後、夫人を召喚し、捜査する方針を固めている。すでに夫妻の資産管理をしている証券マンを数回召喚し、容疑を裏付ける供述を取っている。

 ▲今月末に娘の不正入学事件の裁判開始

 国民の反発を買っている娘の不正入学(偽造文書)事件を裁判に掛け、夫人の容疑を立証させる方針で、裁判は今月末にも開始される。

 ▲法相に近いユ・ジェス釜山市前副市長の疑惑を再度追求

 チョ法相が民情首席秘書官の時に柳ジェス釜山市副市長(前金融委員会金融政策局長)への青瓦台特別監査班による監査を中断させた疑惑を追及する。今年2月に特別監査班にいた金テウ前検察捜査官が告発していた。

 柳副市長が金融委員会金融政策局長在職時の2017年中盤、各種不正疑惑により民情首席室特別監査班の監査対象となっていた。様々な業者から金品などを授受した容疑が掛けられていたが 民情首席秘書室からの中断指示にこの疑惑事件はうやむやとなってしまった。

 チョ夫人は昨日(11日)、fbで「最近、検察の捜査過程で入手した捜査関係者しか知らない情報が流れ、マスコミに報道されているのは遺憾である」と不満を述べていたが、検察による意図的なリークは世論を味方につけることが狙いであることは明らかだ。

 報道によれば、尹総長は検察OBとの通話で「職を賭して、今回の捜査をやるつもり」と覚悟を語っていたが、チョ法相が先に辞任するか、尹検察総長が先に辞職するのか、まさに時間との戦いとなってきた。

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て、フリー。1982年 朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動開始。98年 ラジオ「アジアニュース」パーソナリティー 。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。著書に「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人、残念な日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙 間違いだらけの日韓関係」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など25冊

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