「朴大統領を弾劾すべし!」文化人ブラックリスト作成疑惑で大統領VSソウル市長

「セウォル号」の遺族らに連帯を表明する映画俳優のソン・ガンホ(右)とキム・ヘス

朴槿恵政権が反政府的な文化人や芸術家、言論人らのリストを秘かに作成し、彼らの文化・芸術活動を支援しないよう圧力を掛けていた疑惑が急浮上し、昨日開かれた国会国政監査委員会で取り上げられた。

青瓦台(大統領府)によるブラックリストの存在は昨年から噂になっていたが、韓国日報は12日付に「青瓦台が昨年文化芸術界検閲対象として9,473名の名簿を作成し、文化体育観光部に送っていた」と報じ、その資料を公開した。公開されたのは、昨年5月の文化芸術委員会会議の資料で、ブラックリストはこの中に記されていた。

それによると、ブラックリストには沈没した客船「セウォル号」の「政府施行令廃棄を求める宣言」に署名した文化人594名、「セウォル号時局宣言」に賛成した文化人754名、大統領選挙(2012年12月)で野党の文在寅候補への支持を宣言した文化人・芸術家6,517名、ソウル市長選挙(2014年6月)で野党の朴元淳市長を支持した1,608名、合わせて9,473名がリストアップされている。野党候補への支持や、「セウォル号」沈没時に政府の対応を批判する宣言への賛同など政治的、社会的行動によって分類されていた。

(参考資料:惨敗した「選挙の女王」朴大統領に政権浮揚の「奥の手」はあるのか

昨年5月1日に発表された「セウォル号政府施行令廃棄を求める宣言」に署名した594名の文化人・芸術家の中には韓国を代表する演技派俳優のソン・ガンホ、様々な主演女優賞に輝いたトップ女優のキム・ヘス、数多くの映画賞を受賞した俳優のパク・ヘイル、韓流ファンならだれでも知っている俳優のキム・テウ、「オールド・ボーイ」でカンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞した映画監督のパク・チャンウク、アーノルド・シュワルツェネッガーの俳優復帰作「ラストスタンド」を監督したキム・ジウン、ベストセラー作家のパク・ポムシン、評論家のファン・ヒョンサンら有名人、著名人が多数含まれている。

「セウォル号」絡みでは6日に開幕した「釜山国際映画祭」に与党「セヌリ党」系の釜山市長が2014年に「セウォル号」事件を取り上げたドキュメンタリー映画「ダイビング・ヘル」の上映中止を要求したことから韓国映画界が「運営に政治的圧力をかけている」として映画監督組合ら4団体がボイコットを宣言している。

所管の文化体育観光部はこのリストに従い、文化芸術委員会に対して「問題の人物を支援しないよう」指示を出していたとされているが、クォン・ヨンビン芸術委員長は昨年から「支援することができないと判断されているリストがあるが、それに対して誰も責任を負わない。そのため我々職員は非常に困っている」と不満を口にしていた。また、昨年11月6日のある会議でも委員の一人が「結局、その人も青瓦台が排除するということで審査から外された」と発言していた。一連の発言はブラックリストが存在するため芸術委員会が該当人物への支援ができないことへの苦しい胸の内を吐露したものと理解されている。

リストが公開されたその日、「共に民主党」の都鍾煥議員が「ブラックリストを作成し、管理していることに青瓦台が関与している」と追及したことから昨日の文化体育観光部への国政監査では同僚の趙承来議員が「徹底して排除の対象にしている芸術家がいるのか」と趙允旋長官に質すに至った。趙允旋長官は「そのような文書は存在しないとの報告を受けている」と返答したが、「共に民主党」は納得せず、今後も徹底追及する構えだ。第二野党「国民の党」の前代表で次期大統領候補の一人である安哲秀議員も発言し、「これは暴力的文化政策であり、憲法を全面的に否定するものだ」と政府を批判。第三野党の「正義党」も13日、政府に対して「ブラックリストを破棄し、真相を明らかにするよう要請している。

一方、支持者らがブッラクリストに挙げられたことに激怒した朴元淳ソウル市長はこの「文化芸術系ブラックリスト疑惑」との関連で昨日、朴大統領の弾劾を呼び掛けるなど以下のような強硬な発言な自身のブログに載せていた。

「もうこれ以上我慢できない。このような野蛮な不法行為や権力乱用を行っている現政府と大統領は弾劾対象にすべきではないか?このような事件が西欧で起きたならば、いかなる大統領も、いかなる内閣も辞任することになるのでは?」

「2014年の地方選挙の時に私への支持を宣言してくれた1、608人の名簿も重要対象に含まれていた。単に私を支持した文化芸術人が含まれていたというだけの問題ではない。ニクソン(大統領)のウォーターゲートを考えてもらいたい。西欧の民主主義の下では公的候補者を支持したからといってブラックリストに挙げられ、あらゆる不利益を被ったという事例は聞いたことがない」

「権力の大引けのドラマであり、私有化の極致である。直ちに国会は特別調査委員会を設置し、その調査結果に基づき、弾劾なり、辞任要求なり、何であれ適切な措置を取ってもらいたい。総選挙で示された民意が何を望んでいるのかまだ忘れてないならば野党は野党としての役割を果たしてもらいたい。今までメガトン級の権力非理と権力乱用が数多くあったのに多数党になった野党の対応は本当に失望せざるを得ない」

「この機会に国報院(国家情報院)の『朴元淳制圧文書』も質してもらいたい。情報機関が千万市民の手で選ばれた市長を制圧することを考えるとはとんでもないことだ。国民の忍耐にも限界がある。国が奈落に墜ちているのにこれ以上、我慢できないではないか」

この朴市長の発言に与党の「セヌリ党」のスポークスマンは「存在感が薄くなった朴市長が自らの存在を浮かび上がらせるため大統領を相手に弾劾を持ち出し、自身の支持者におもねるため極端な言論テロを行った疑いがある」と非難し、保守層では「次期大統領選挙に向けてのパフォーマンスではないか」と冷ややかに見ているが、弾劾に繋がるぐらい騒ぎが大きくなるかどうかは、世論の動向にかかっているようだ。

(参考資料:下降線をたどる朴槿恵大統領の支持率 依然浮上せず!

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て、フリー。1982年 朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」創刊。1986年 テレビ、ラジオで評論活動開始。98年 ラジオ短波「アジアニュース」パーソナリティー 。2003年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会会員、日本ペンクラブ会員。著書に「在日の涙 間違いだらけの日韓関係」(飛鳥新社)「世界が一目置く日本人、残念な日本人」(三笠書房)「大統領を殺す国 韓国」(角川)「金正恩の北朝鮮と日本」(小学館)「北朝鮮100の新常識」(マサダ)「韓国人と上手につきあう法」(ジャパンミックス)など20数冊

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