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日本に飛び火するか「ロッテ・スキャンダル」

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
ロッテワールドタワー

韓国のロッテグループに検察が家宅捜索に入った。

売上額が83兆ウォン、系列会社80社、国内で12万、海外で6万人、合わせて18万人の従業員を抱える韓国財閥第5位のロッテグループが司直の対象となったのは初めてのことである。

報道ではソウル中央地検特捜4部と先端犯罪捜査1部は捜査員200人以上を動員し、10日午前ソウルのロッテグループ本社と系列会社7社、役員宅など17か所に対して強制捜索を行ったそうだ。

捜索対象にはロッテグループ創業者である申格浩(シン・ギョクホ、日本名:重光武雄)ロッテグループ総括括会長の執務室があるロッテホテルの34階及び後継者である次男の辛東彬(シン・ドンビン、日本名:重光昭夫)韓国ロッテグループ会長兼ロッテホールディング(HD)副会長の自宅も含まれている。検察は辛東彬会長の側近の一人であるロッテグループNO.2のロッテショッピング制作本部長ら幹部らの出国禁止措置も取っている。

昨年夏に表面化したロッテグループの跡目を巡る長男・辛東主(シン・ドンジュ、日本名:重光宏之)ロッテグループ元副会長との骨肉争いは次男の辛東彬氏の「勝利」で終わり、お家騒動は収拾の方向に向かっていた。それだけにロッテにとっては衝撃である。

検察の捜索は唐突の感もあるが、韓国のイメージを貶めた大韓航空の「ナッツ・リターン事件」に続くロッテファミリーのお家騒動によりロッテグループの不透明な持株構造が明らかにされたことで財閥に対する世論の反発を検察は無視できなかったようだ。

昨年8月に市民団体「金融消費者院」は「ロッテの問題は韓国の財閥の非良心的な振る舞いを露わにしたもので、財閥が社会的な責任や貢献に関心がないことを明白にした」とロッテを非難し、ロッテカードやロッテ百貨店などグループ全社に対し不買運動を展開していた。また韓国政府に対して、ロッテグループの政経癒着や資金調達、相続、脱税などに関する調査に乗り出すよう促していた。こうした世論の反発もあって、韓国の崔ギョン煥経済副首相兼企画財政部長官は同グループの不透明な支配構造や金の流れを厳しく調査する方針を示していた。

崔副首相の指示に基づき、公正取引委員会や金融監督院もロッテグループに支配構造に関する資料の提出を求め、国税庁と関税庁もいつでも動ける準備をしていた。実際に国税庁は昨年7月頃からロッテグループ傘下の広告代理店、大弘企画に対する税務調査に着手していた。

検察は今年に入って内偵を始め、ロッテ一家に対する全般的な税務調査を行い、各種情報を収集していたが、その過程でロッテグループが系列社間の資産取引の過程で数十億ウォンの秘密資金を調達していたとの疑いが持ち上がった。関連口座を調べた結果、ホテルロッテが売り上げを帳簿に記さず巨額の秘密資金を調達していた疑惑が浮上したとのことだ。

さらに、第2ロッテワールド事業及び各種免税品店事業の権利を取得する際にも不正があったとされる疑惑も捜査の対象となっているようだ。

韓国ロッテは李明博前政権下では最大の受恵企業と言われてきた。李明博政権時代にロッテワールドが認可され、釜山のロッテワールドの敷地不法用途の変更、さらにはビール事業への進出を巡って各種特恵を得ていたとの指摘がある。こうしたことから認可取得の過程で不正があったとみて捜査を拡大する構えだ。

しかし、検察の最大の狙いはどうやらホテルロッテを通じて韓国国内で得た収益の大部分が日本に流出されているロッテの体質、支配構造にメスを入れることにあるようだ。

ロッテ商事、ロッテ物産、ロッテケミカル、ロッテ製菓などを網羅する韓国ロッテグル―プ(ロッテホテル)の株主構成は日本の「L投資会社」が77.65%、日本ロッテHDが19.1%、光詢社が5.5%となっている。また「L投資会社」の株主構成は日本ロッテHDが100%、そして、日本ロッテHDは光詢社が32%、従業員株主が32%、ロッテ日本理事が32%となっている。

ロッテホテルは全体の売り上げの95%を韓国であげているが、ほぼ100パーセントの株を日本企業が保有しているため、ホテルロッテの配当金はほとんどが日本に渡っているのが実情である。

例えば、ホテルロッテは2014年、1株当たり500ウォン(53円)、総額255億ウォンの配当を実施したが、このうち254億ウォンをロッテHDなど日本の株主が手にしたとされている。日本ロッテグループの系列会社が2011-2014年の3年間で韓国国内の法人から総額1400億ウォン(約148億円)近くの配当金を受け取っていたことされている。こうしたことから韓国ではホテルロッテは事実上日本の企業とみられている。

後継者争いを制した辛東彬会長は経営権をめぐる一族の対立を謝罪するとともに、不透明との批判が出ているグループ支配構造の改善案を発表し、ホテルロッテを上場し、グループ企業間で株式を持ち合う複雑な「循環出資」を解消する方針を明らかにした。日本ロッテホールディングスの持ち株を60%水準まで引き下げ、日本の支配構造から脱皮すると約束し、実際にホテルロッテは今月29日、企業公開の準備をしていた。その矢先に家宅捜索が入ったとなると、上場が流れるかもしれない。

検察の捜査が大企業の不正,非理の追及だけにとどまるのか、それとも政経着絡みで政界にまで拡大するのか、あるいは日本にまで飛び火するのか、「ロッテ・スキャンダル」の行方に目が離せなくなった。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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