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児童ポルノ画像・動画の60%は欧州に。EU加盟国内でワースト2位のフランスはどうするつもりなのか?

プラド夏樹パリ在住ライター
(写真:アフロ)

検挙者の1/4が子どものいる職場で働く人々

フランスでは、年に少なくとも一度、児童ポルノ画像・動画所持者の一斉検挙が行われ、メディアで大々的に発表される。

今年は、11月16日、全国で48人が検挙された。もちろん、警察の暴力対策本部は一年を通じて児童ポルノ法違反者を捜査しているが、一人が検挙されるだけではニュースにならない。しかし、数十人が一斉検挙され、その職業や社会的地位が発表され、社会的地位のある人もその中に含まれていれば、「あの人が?」と、国民にはかなりのショック療法、及び防止キャンペーンにもなる。今年も各メディアで大きく取り上げられた。

今回、検挙されたのは26歳から79歳。全員男性という以外には特定のプロフィールはなく、社会層は様々である。これまでにも、難関大学の学長や、元陸軍将校などを含めた有名人が逮捕され国民を驚愕させたことがあったが、今回は、小さな村の村長、数人の文部省職員、3人の子どもの父親が含まれていた。とくに、検挙者の1/4が子どものいる職場で働く人々であることが、大きく問題視されている。

5年以下の禁固刑、罰金約1050万円以下

児童ポルノ画像・動画の単純所持に罰則が科される改正児童ポルノ禁止法が日本で成立したのは2014年。G7国の中では一番遅い法制化だったが、これにより、所持者には1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるようになった。

フランスでは、児童ポルノ画像の製造・頒布・輸出入はもちろん、2002年から単純所持、オンラインでの常習閲覧、購買も刑法227-23条によって罰則の対象となった。その刑罰の程度は日本よりもはるかに重く、5年以下の禁固刑と7万5千ユーロ(約1050万円)以下の罰金支払いが科される。また、レイプや誘拐などの事件を起こす犯罪者が児童ポルノ画像・動画の常習閲覧者でもあり得るので、性的犯罪者リストに名前が記載される。今回検挙された48人のうち、4人にレイプ罪と性的攻撃罪の疑いがあると報道された。日本と大きく違うのは、日本で合法とされている児童ポルノ描写のマンガやアニメを含む創作物も、刑罰対象になっている点だろう。

子ども向けの、児童ポルノ撲滅運動キャンペーン

ところで、この一斉検挙のために、仏警察はアメリカ製ソフトウェア、Child Protection Systemを使用した。Child Rescue Coalitionというフロリダ州に拠点を置く児童保護運動団体が制作したもので、マーカーがつけられたある特定の画像(ダークネット上のものも含める)を閲覧した人のIPアドレスがわかるというものだ。アメリカの連邦捜査局FBI及び、97か国の警察機関で使用されており、これまでに世界中で13800人の検挙を可能にした。

世界でワースト4位のフランス

インターネット上の児童ポルノ画像・動画流通の撲滅を目指している国際的な連合組織であるINHOPEによる調査によると、児童ポルノwebサイトが一番多いのはオランダ、そしてアメリカ、ロシア、フランスの順である。

同団体は「未成年者を性的搾取する内容」の画像は、2021年、世界中で8500万あまりあったと報告。そして、その約60%がEU加盟諸国のサーバーからのものであり、「人権の尊重」を基本条約で掲げているEUにとっては大問題になっている。この10年で、EU内での通報件数は6000%増加したという。

そのため、欧州議会はインターネットのサービスプロバイダーに、これまでは自主的措置に過ぎなかった児童ポルノ投稿の監視・通報・消去を義務付ける指令案を今年の7月に可決した。一方、「表現の自由の侵害」を懸念する声も多く上がっており、今後EU理事会で厳重に審議される予定だ。

被害者のプロフィールは?

フランスの通報窓口point de contactによると、被害者は96%が女子で5人中4人は3歳から13歳未満ということだ。最近は、未成年者による自撮り画像・動画の流通が増えていると警告している。多くは、子どもと同年代のフリをしたおとなとTikTokやSnapchatといったSNSを通じて知り合い、グルーミング行為(注)にあい、自撮りした画像を送ってしまうというケースだ。こうした危険について子どもたちに情報を与えることだけではなく、市民にホットラインへの通報を促すことも重要だろう。日本での通報先は次のページ。https://www.internethotline.jp/

(注)グルーミング:性犯罪目的に未成年者を手懐ける、一種のマインドコントロール。

パリ在住ライター

慶応大学文学部卒業後、渡仏。在仏30年。共同通信デジタルEYE、駐日欧州連合代表部公式マガジンEUMAGなどに寄稿。単著に「フランス人の性 なぜ#MeTooへの反対が起きたのか」(光文社新書)、共著に「コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿」(光文社新書)、「夫婦別姓 家族と多様性の各国事情」(ちくま新書)など。仕事依頼はnatsuki.prado@gmail.comへお願いします。

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