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欧州とコロナウィルス イタリアで感染者急増 ベルギーでは隠しカメラでアジア人差別の実態に迫る

プラド夏樹パリ在住ライター
世界に広がるコロナウィルス(写真:ロイター/アフロ)

イタリアでコロナウィルス感染者が急激に増えている。北部にあるロンバルディア州とベネト州だ。22日土曜日、51人が入院しており、死亡者は2人、欧州で一番感染者が多い国になった。有名なベネチアのカーニバルは中断された。(23日日曜日現在、入院者は100人を越えた。)

ところで、ベネト州Vo'Euganeo市で亡くなった男性78歳は中国に行ったこともなければ、他の感染者と接触もしていないという。

ロンバルディア州では11の市町村に住む約5万2千人が外出しないように言い渡され、学校、図書館、バー、すべての公共施設が閉鎖、町は完全封鎖されている。サッカーの試合3戦が延期された。Codogo市に住む78歳の女性が亡くなった後でコロナウィルスに感染していることがわかったからだ。また、現在、38歳の男性感染者が集中治療を受けている。彼は中国から帰国した友人と何回か食事をしているが、その人自身は感染していない。しかし、彼は仕事場の工場で500人余りの同僚と接触しており、感染者のさらなる増大が心配されている。

今のところ集団パニックにはなっていないが、政府は上記の地域の封鎖を厳重にするために、場合によっては軍隊の出動もあり、また、外出にはあらかじめ許可を取らなければいけない、許可なしで外出しバリケードを越えた場合は600ユーロの罰金、禁固刑もありと発表している。

ベルギーのメトロ内でアジア人に対する差別的言動を隠しカメラで撮影

コロナウィルスの感染が広がるにつれて、世界中でアジア人に対する人種差別的言動が増えている。カナダではショッピングセンターの駐車場でアジア人女性に対して「ウィルスは持ってくんなよ」と怒鳴っている場面が撮影されSNS上で広まり、マレーシアでは50万人が「中国人の入国を禁止する嘆願書」に署名。オーストラリアでは患者から握手を拒否されたアジア系の外科医が抗議を公に。昨日はウクライナで武漢からの退避者受け入れに反対する人々が、退避者を乗せたバスを襲い投石、バリケードに火をつけるなど大規模な暴力行為があった。筆者は再来週からイタリアに行くのだが、感染より差別が怖いというのが本当のところだ。

ところでベルギーでは、Would You Reactという隠しカメラを使用したヴィデオを発信して市民連帯の促進に努めるグループが、下記のヴィデオを製作した。2月5日に撮影されたもので、メトロの中で起こるアジア人に対する人種差別シーンだ。しかし、差別をする女性2人と、被害者であるアジア人3人は俳優で彼らはシナリオに沿って演じる。そして隠しカメラで他の乗客の反応を写したというものだ。2月末から88万回以上視聴された。

ヴィデオはまず、「現在のところ、ベルギーではコロナウィルスよりも普通の風邪に感染する可能性の方が高い」との説明から始まる。

その後、メトロ内でのシーンに移る。二人の女性が途中から乗ってきた3人のアジア人の旅行者に「あんたたち中国人?コロナウィルスに感染したくない。降りて!」と言う。

他の乗客は、最初はびっくりして黙っているが、3人のアジア人が降りると、そのうち「そんなこというなんて、それでも人間なの?」、「警察呼ぶわよ」、「じゃあ、アナタ、白人だから電車から降りろって言われたらどうする?」、「アジア人だからって感染してるとは限らないよ」と抗議、車内は騒然となる。

安心するのは、乗客全員が、俳優の差別的発言に対して抗議することだ。同じシチュエーションで、数回、電車を変えて何回か撮影、3回目はマスクをして乗るが結果は同じだった。もちろん差別的言動は厳として存在するが、そういう人々だけではないとほっとするヴィデオだ。

23日(日曜日)に加筆しました。

パリ在住ライター

慶応大学文学部卒業後、渡仏。在仏30年。共同通信デジタルEYE、駐日欧州連合代表部公式マガジンEUMAGなどに寄稿。単著に「フランス人の性 なぜ#MeTooへの反対が起きたのか」(光文社新書)、共著に「コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿」(光文社新書)、「夫婦別姓 家族と多様性の各国事情」(ちくま新書)など。仕事依頼はnatsuki.prado@gmail.comへお願いします。

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