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「PTAに入らないなら子どもに○○をあげない」が増加?「入らない人もいる」を前提に活動見直しを

大塚玲子ライター
「全員必ず入る」を前提にしていると齟齬が生じます(写真:イメージマート)

 PTAは長い間「義務」だと思われてきましたが、実は入りたい人が入る団体であり、「入らない」という選択肢もあるということが、だんだん知られるようになってきました。

 ところが、いざ「入らない」「退会する」と伝えると、会長さんから「それなら子どもに○○をあげない」「お子さんは××に参加できない」などと言われてしまうことがあります。そのために非加入をあきらめる人や、トラブルになるケースも見かけます。

 ここ数年はやや減ったように感じていたのですが、今年は非加入を選ぶ人が増えたためでしょうか、比例してこの手のトラブルも増えている印象です(*1)。

 繰り返し書いてきたことですが、非会員の家庭の子どもを活動対象からはずすのは、間違ったことと考えられます。学校はPTAに対し、施設を使わせる、教室を与える、手紙を配ってあげる、提出物を回収してあげるなどの厚遇をしていますが、それはPTAが学校に通うすべての子どものために活動する団体だからと考えられます。

 おやじの会もPTAにやや近い扱いを受けていますが、それもやはり学校に通うすべての子どもを対象とするからでしょう。もし、おやじの会が「学校内で会員家庭の子だけにプレゼントを配りたい」などと言い出したら、まともな校長は許可しないはずです(*2)。

 つまり最大の問題は、会員家庭だけを対象とする活動をPTAに許可する“校長先生”にあるわけですが、PTAも校長先生にこんな間違った判断をさせないで済むよう、学校に通うすべての子どもを対象に活動をする必要があるでしょう。

「全員入る」を前提とした活動は齟齬が出る

 ただ、こういった説明を聞いても、あまりピンとこない人もいるかもしれません。「PTAに入らないなら、子どもが○○をもらえないのも、××に参加できないのも当たり前」「非加入の家庭の子が、会員家庭の子と同じ扱いを受けるのは“ズルい”」と考えるPTA会長や役員(経験者)さんも、意外と少なくないようです。

 「ズルい」と感じるのは、どこかでまだ「PTAは全員必ず入るもの」と思っているからでは。「加入は任意なんでしょ」と半分はわかっていながらも、ついこれまでの「全員必ず入る」を前提に考えてしまう。だから入らない家庭の子が会員家庭の子と同じ扱いを受けるのは「ズルい」と感じるのではないでしょうか。

 筆者も昔「PTAは任意加入の団体だ」と知ってから、すぐ丸々理解できたわけではありませんでした。わかったようなつもりでも、やらない人にモヤッとしてしまったことがあるのは、たぶんまだどこかに「全員必ずやるもの」という考えが残っていたからです。すっかり腑に落ちるまでには、何年かかかりました。

 もうひとつ考えられる「ズルい」の原因は、現在のPTAの「活動」と「前提」の齟齬です。そもそもいまPTAが行っている活動は「全員必ず入る」を前提に始められたものが多いので、「入りたい人が入る」を前提にしたときに齟齬が出るのは、ある意味必然です。

 たとえば「子どもたちに記念品をあげる」という活動も、「全員必ず入る」という前提がなければ、そもそも始めなかったのではないでしょうか(少額なものは別として)。もし「入りたい人が入る」という前提だったら、「入らない家庭の子がもらえるのはズルい」と感じるようなものは最初から配らなかったと思うのです。

 いま必要なのは、「PTAは入りたい人が入る団体だ」という前提をみんながよく理解し、且つその前提でPTAの活動や仕組みを見直すことだと感じます。「入りたい人が入る」という(本来の)前提を心から受け入れてもらうのには、まだちょっと時間がかかるかもしれませんが、活動や仕組みの見直しはすぐに可能でしょう。

 記念品の配布は、少なくとも高額なものは、やめてはどうでしょうか。もし配るなら「非会員家庭の子にも配ってもズルいとは感じないもの」にとどめ、もし何を配ってもズルいと感じるなら一切配らないことです。

 「実費を払ったら、非会員家庭の子にも(代理購入して)あげますよ」というPTAもときどきありますが、それでは結局、会員家庭の子だけを対象に活動していることになりますし、今後非会員が増えたときは、それぞれの家庭からお金を徴収する事務コストが膨大になります(*3)。

 ほかの活動についても、「入りたい人が入る」を前提にしたとき齟齬が出るようなものは見直すか、やめるかにしたほうがいいでしょう。そうすれば、非加入の家庭の子どもを活動対象からはずすような状況は減らしていけるはずです。

  • *1 非加入を選んでも何も起きなかった人のほうがおそらく多いのですが、何も起きなかった人は大体黙っているため、問題が起きた事例のほうが目立ちます
  • *2おやじの会の会員家庭限定イベントが校長に許可されてしまった例も1度だけ聞いたことがあります
  • *3 現状、非会員家庭からの実費徴収は、大概教頭(副校長)先生の役回りになっていることが多いです
ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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