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いま保護者がやるべきは「動かない・広めない」こと 活動は休止、PTA総会をするなら書面やWebで

大塚玲子ライター
総会資料はすべてホームページに。質疑応答も全部Web上で行うPTAも(写真:アフロ)

 新型コロナウイルスが広がるなか、新学期の学校再開はまちまちの状況です。当面休校が続く学校もある一方、変則的に再開する学校や、通常通りに始まる学校もあります。

 そんななか、各PTAでも対応をどうするかが話し合われており、特にいま注目を集めているのが、書面によるPTA総会や決議(議決権行使)の方法です。

 PTA総会は多くの場合、学校の教室や体育館に会員(保護者と教職員)が集まって行われますが、書面総会は会員に議決権行使書を配り、各議案への賛否を答えてもらうので、大勢が一堂に会する状況を避けることができます。(*1)

 書面総会を行うには、具体的にどうしたらいいのか? ネットでいろいろ情報を見つけられますが、筆者も以前参考記事を書いていますので、興味のある方はご覧ください。

 この春は、P連(自治体ごとにつくられるPTAのネットワーク組織)が書面総会を呼びかける例も見かけます。たとえば奈良市PTA連合会は、各PTAに「活動の休止と学校再開後の書面総会の提案」を行っています。事務局の岡田由美子さんはこう話します。(*2)

 「役員さんは毎年入れ替わりがあるので、PTA総会を開くのは初めてという方が少なくありません。通常通りの総会をするのさえ心配なところ、こんな状況でいきなり書面総会をするのは不安だと思うので、私たちで参考資料をととのえてお渡ししました。

 PTAがいまやらないといけないのは『動かず、感染を広げない』というところ。子どもたちより感染しているリスクが高い保護者が、やっと再開した学校に頻繁に出入りすることは避けなければなりません。先生方からPTAの保護者に『蔓延するから集まらないで』とは言いづらいですから、私たちが言っていく必要があると思います。

 役員さんたちは『クラス役員決めなど、去年やっていた活動は今年も同様にやらなければ』と思いがちなので、『もっと柔軟に考えていいんだよ』ということも伝えています」

 他方では、書面ではなくWebで総会を行うPTAも現れています。松戸市立栗ケ沢小学校PTA会長の竹内幸枝さんは、狙いをこんなふうに話します。

 「うちの場合はコロナとは関係なく、形骸化したシャンシャン総会をなんとかしたいという目的です。毎年たくさんの人の時間と労力を使いながら、台本を読み上げるだけで終わるのが不毛過ぎるので、以前から書面総会を提案していました。

 議決権の行使(議案の承認)だけをGoogleフォームなどWebでやる方法もありますが、いま私たちが考えているのは、総会のすべてをWebで行う形です。ホームページ上にすべての資料を載せて、質問や意見を受けつける期間もしっかりと設け、回答も含めてすべて公開すれば、議事録も兼ねることができます」

 なお、書面総会でもWeb総会でも、本来は会則上にそれを可能とする根拠規定が必要です。現状はそういった規定がないPTAが大多数なので、今年度は緊急措置として書面総会やWeb総会を行い、そのなかで規約の改正を行っておくのが妥当かもしれません。そうすれば来年度以降は、規約にもとづいて書面やWeb総会を行うことができます。

*書面総会、なぜ規約の根拠が必要?

 ややマニアックな話になりますが、そもそもなぜ、書面総会やWeb総会を行う際には、会則上の根拠が必要なのでしょうか? 高崎市の中学校でPTA役員をする司法書士の泉純平さん(*3)は、こんなふうに説明します。

 「書面決議やWeb総会は利点も多いですが、やり方次第で、(人が集まる)通常の総会より会員の権利が制約されることも考えられます。ですから、役員など一部の人だけの意見でそれが可能になると、濫用されてしまうリスクもあるわけです。だから本当は、会員全員の同意、つまり会則に基づいて、開催される必要があります」

 なるほど、よく考えなければいけない点です。この春は何しろ特別な状況ですから、敢えて書面やWeb総会に踏み切らざるを得ないと筆者は感じますが、これまで通りのPTA総会にしろ、書面総会やWeb総会にしろ、「会員みんなの意見を聞く、開かれた場」であることを心がけていく必要があります。

 また泉さんは、学校再開や延期等の状況によっては、いま無理に急いで書面総会等を開かなくても「PTA活動を一度フリーズさせるという選択もある」と話します。

 「今回は未曽有の非常事態なので、総会を含むあらゆる行事をいったん停止して、『一切何もしない』という対応でもいいのではないかと思います。事態が収束したあとに、事業計画案や予算案を立てて承認してPTAを再開すれば、問題はないはずです。これなら(規約に基づかない)決議は無効だ、といった争いが起きるリスクも避けられます」

 いま最優先すべきは感染を広げないこと。PTAは「例年通り」を手放さなければなりません。

ライター

主なテーマは「保護者と学校の関係(PTA等)」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』ほか。共著は『子どもの人権をまもるために』など。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。ohj@ニフティドットコム

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