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低迷するドラゴンズの一番の話題は「赤味噌さん」(?)。大人気アカウント主をインタビュー!

大竹敏之名古屋ネタライター
「赤味噌」さんのTwitterフォロワーは実に8・4万人!

フォロワー数8・4万人! 連日のトレンド入り

プロ野球セリーグで最下位に沈む中日ドラゴンズ。「歴史的貧打」「エラー多すぎ」「完封負け日本最多ペース」「采配ミス」など、話題に上るのはもっぱらネガティブなワード。成績不振は今シーズンに限った話ではなく、この10年でBクラスが9度という長期低迷ぶりで、ファンのフラストレーションもたまる一方です。

ポジれる要素が数少ない中で、Twitterでしばしばトレンド入りしているのが「赤味噌さん」。ドラゴンズのファンアカウントで、フォロワー数は実に8・4万人!(2023年6月4日現在) 主力選手や試合結果にも負けないほどの注目を集めています。

人気の理由は、外国人選手の情報に精通していること、そして豊富なデータを駆使したタイムリーなツイート。つい先ごろは5月にドラゴンズ入りが発表されたウンベルト・メヒア投手の獲得を4月の時点で“予言”。これにSNSが騒然となり、何とスポーツ専門サイト『NumberWeb』が赤味噌さんをインタビューするほど話題になりました。

「赤味噌」の赤はレッズの赤? 話題のアカウント主をインタビュー

“時の人”赤味噌さんは一体何者なのか? 当サイトでも“中の人”を直撃しました。

――そもそも赤味噌さんは何者なのでしょうか?

赤味噌「住まいは東海地方。年齢は20代、男性です」

――「赤味噌」というアカウント名の由来は?

赤味噌「メジャーリーグだとシンシナティ・レッズを応援しているんです。レッズ=赤、そして名古屋といえば味噌。ふたつを合わせてこの名前にしました」

――ドラゴンズファン歴は?

赤味噌「最初に好きになった選手がトニ・ブランコ(2009~2012年在籍。2009年にホームランと打点の二冠王)だったので、15年くらいです」

――ドラファンへの入口も外国人選手なのですね。他にドラゴンズで思い入れのある選手は?

赤味噌「まずはビシエド。メジャーリーグ時代から好きな選手だったので、入団が決まった時は“日本に来るんだ!”とうれしかったです。バルデスおじさん(ラウル・バルデス。キューバ出身の左腕投手。2015~2017年在籍)も好きでした。援護がなくてなかなか勝てなくてもくさらずに頑張っていたのが印象的。45歳になった今でもベネズエラで現役で投げています」

――外国人選手はドラゴンズ入団前からチェックし、退団後もフォローしている?

赤味噌気になる選手は海外のリーグにいる時から注目していて、退団してもほとんどの選手のことを把握しています。モイセ・シエラ(ドミニカ出身の外野手。2020年在籍)は今はベネズエラの国内リーグでプレイ。ジョエリー・ロドリゲス(ドミニカ出身の左腕投手。2018、2019年在籍)はメジャーの球団を渡り歩いていて、今季はまだちょっと球速が上がってきていないんですけど、頑張ってほしい選手です」(ドラゴンズファンでも覚えていないような名前がすらすら出てくる)

(※ 赤味噌さんのジョエリー・ロドリゲスを心配するツイートはこちら

外国人選手の情報収集のためにTwitterアカウントを開設

――Twitterのアカウント開設(2018年1月)のきっかけは?

赤味噌「当初は中日ファンとして、というつもりはありませんでした。当時から好きだったのがドミニカやメキシコ、オーストラリアなどの海外リーグ。それらの外国人選手に関して詳しくツイートをしている人がいて、その情報を得るために自分もTwitterを始めることにしたんです」

――現在は外国人選手の情報だけでなく、ドラゴンズのファンアカウントとして広く知られるようになっています

赤味噌「もともとプロ野球のデータ、記録が好きで、自分でもドラゴンズを中心に外国人選手の情報をつぶやくようになったらたくさんの人がフォローしてくれるようになった。ドラゴンズファンのフォロワーが増えていくにつれてドラゴンズのこともつぶやくようになり、徐々に今のような内容になっていきました」

「仕事放棄すんな」に瞬時にデータを示す神対応も話題に

――今ではフォロワー数は8万人以上。今年に入って何度も「赤味噌さん」がTwitterのトレンド入りをしています

赤味噌こんなことになるとは想像もしていなかったのでびっくりです。メヒア投手について契約前に紹介したことや、それを『NumberWeb』が取り上げてくれたことでもフォロワーが増えましたが、今年初めのWBCの時もフォロワー数が伸びたことがあったんです。スポーツ系のサイトでオーストラリア代表の投手について『不明』と書かれていて、僕が日ごろ追っているキューバリーグの投手がオーストラリア出身だったので“この選手じゃないか”と特定したところそれが的中した。それから各国の代表選手のデータなどを紹介するようになったら、どんどんフォロワーが増えていきました」

――フォロワー数の多さにプレッシャーを感じることはないですか?

赤味噌「いろんな意見が来るのでたまに“何でこんなことを?”と思うこともありますが、それよりもたくさんの人が賛同したり楽しんでくれて、プレッシャーよりも感謝の気持ちの方が大きいです

――ツイートする際に心がけていることはありますか?

赤味噌「大前提として誹謗中傷はしない。技術論は他にもっと詳しい人がいるので自分ではしない。データに基づく客観的なツイートを心がけています

――その典型的な例が5月20日の巨人戦。大城卓三選手に満塁ホームランを打たれ、絶句するかのように「…」とツイートすると、あるファンから「仕事放棄すんな。小笠原が満塁ホームラン打たれるのは何年ぶりか早く調べてこい」とツッコミが入りました。すると即座に「2021年9月26日山田哲人に浴びて以来2年ぶりです」と返し、この冷静な神対応もファンから絶賛されました

赤味噌「あれはクレームというより面白いツッコミだと思ったので乗っかったんです。すぐにデータで返すことができてよかったです」

膨大&瞬時のツイートの裏に情報の蓄積と“読み”

――データの豊富さもさることながらスピード感がスゴい。しかも過去までさかのぼった数字が試合展開に合わせて次々出てくるのに驚きます。例えば「福永、村松でルーキー2人が1年目から20安打、これは1988年の立浪和義・音重鎮以来35年ぶり!!」(5月27日)、「(ドラゴンズが)最後に1週間でチームが5勝したのは2020年10月20日~25日。去年も一昨年も一度もありませんでした」(5月28日)など…。このようなデータはどうやって収集し、整理しているのでしょう?

赤味噌「公式のデータブック、データサイトをチェックして、面白そうなものを集めてExcelで整理しています。選手の成績だったら頭の中に大体インプットされているのですぐ出てきますし、あとは試合の前に出場選手や対戦相手などを見て、起こりそうなことを予想しておく。その上で何年か前までデータをさかのぼって照らし合わせておくんです」

――なるほど! そういう“読み”もあってこそのスピーディーなツイートなのですね

世界の野球に目を光らせる。観戦試合数は数え切れない

――日本のプロ野球から海外リーグまで、どれくらいの試合やリーグに目を配り、年間何試合を観戦しているのでしょう?

赤味噌「ドラゴンズの1軍は基本的に全試合観戦し、2軍や他球団も可能な限り観戦。メジャーリーグはレッズの試合はどうしても観られない深夜帯以外はできるだけ。数は自分でも把握できていません。他にもドミニカ、メキシコ、ベネズエラ、キューバ、オーストラリア…。データだけというケースもありますが、プロスペクト(若手有望株)を中心に気になった選手は動画を検索します。英語とスペイン語は独学で勉強して、データを読むくらいは苦になりません。あとはKBO(韓国プロ野球リーグ)の情報を得られるよう韓国語も習得できればと思っています」

――世界中の野球に目を配っている赤味噌さんからすると、WBCはまさに夢の祭典ですね

赤味噌「キューバ代表も好きですし、ドミニカ、ベネズエラ、メキシコも有名選手が多くて、普段はなかなか見られない選手が見られる。どの試合でも楽しめます。野球の国際的発展を本当に願っていて、野球発展途上国のような地域からも力のある選手がどんどん出てきたらもっと面白くなると期待しています」

今季はCS進出に期待。恐竜復活に必要なピースは?

――肝心の中日ドラゴンズは長い暗黒時代が続いています。現状をどのようにとらえていますか?

赤味噌「野手が高齢化して若手が出てこないという時代が続き、今年も序盤は完封負けが考えられないくらい多く、ここ一番でタイムリーが出ない。観ていて本当に辛かったです。でも、若い選手が積極的に起用されて結果も出始めている。立浪監督の試合後の談話も、選手をほめる前向きな発言が増えてきた。明るい要素はある、と感じています」

――中でも期待している選手は?

赤味噌「石川昂弥選手に鵜飼航丞選手です。2人とも天性の長打力があり、チームが長年苦しんできた弱点を解消してくれる可能性を持っている。他にも、現役ドラフトで加入した細川成也選手はここまで圧倒的な成績を残していて、本当にスゴイなと思います」

――今シーズンの巻き返しはありそうですか?

赤味噌「首位の阪神とは10ゲーム差以上あるのでさすがに優勝、とは言いづらいですが、2012年以来出ていないクライマックスシリーズへの進出は期待したいです」

――近未来の黄金時代復活の展望は?

赤味噌「投手力があって若手野手も出てきている、というイメージがありますが、2軍はピッチャーがいないような状態で、1軍も高橋宏斗投手の他に柱になるような若手がいない。左投手は小笠原慎之介選手がメジャーへ行くことになったら先発がいません。野手も長打を期待できる左バッターがいないんです。今年のドラフトは即戦力投手が豊富だと聞くので先発タイプの有力な投手を左を含めて複数人、あとは左の強打者を取ってくれたら、バランスがとれていっそう期待できると思っています」

――個々の選手だけでなく編成、スカウト目線でチームを見ているわけですね。赤味噌さん自身としては今後やりたいと思っていることはありますか?

赤味噌「最近、自分の正体を知りたがっている人が増えているので、機会があればYouTubeなどもやってみようかな、とも考えています。まだ全然ぼやっとした感じなんですが…」

――今後は違う形でドラファン、プロ野球ファンとやりとりできる可能性もあるということですね。それでは、最後に好きな赤味噌料理を教えてください。

赤味噌「味噌カツと味噌おでんが好きです。あとは味噌煮込みうどんも(笑)」

――赤味噌系の名古屋めしがひと通り出ましたね。ありがとうございました!

◆◆◆

インタビューはリモートで6月2日に行いました。ちょうどドラゴンズがホークスに連勝した翌日で、そのおかげもあってかお互いに前向きな気分で話をすることができました。

ようやく明るい兆しも見えてきた今季のドラゴンズ。観戦の楽しみを広げてくれるファンアカウントにも注目しながら、ポジティブに応援していきましょう!

名古屋ネタライター

名古屋在住のフリーライター。名古屋メシと中日ドラゴンズをこよなく愛する。最新刊は『間違いだらけの名古屋めし』。2017年発行の『なごやじまん』は、当サイトに寄稿した「なぜ週刊ポスト『名古屋ぎらい』特集は組まれたのか?」をきっかけに書籍化したもの。著書は他に『サンデージャーナルのデータで解析!名古屋・愛知』『名古屋の酒場』『名古屋の喫茶店 完全版』『名古屋めし』『名古屋メン』『名古屋の商店街』『東海の和菓子名店』等がある。コンクリート造型師、浅野祥雲の研究をライフワークとし、“日本唯一の浅野祥雲研究家”を自称。作品の修復活動も主宰する。『コンクリート魂 浅野祥雲大全』はその研究の集大成的1冊。

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