猛暑の名古屋で老舗のアイスグルメが人気!逆転の発想とは?

暑い名古屋の夏を乗り切るのにぴったりのアイスグルメ。意外な開発の理由とは?

納屋橋まんじゅう万松庵の「納屋橋キューブ」&「納屋橋ジェラート」

夏の暑さは全国でも屈指の名古屋。今年はコロナ禍による外出控えもあってか、持ち帰りや通販で食べられるアイスグルメの需要も伸びているようです。名古屋きっての和菓子の老舗・両口屋是清には、定番の千なり(どら焼き)でアイスクリームをはさんだ「アイス千なり」という夏季限定商品があるのですが、今年は例年にも増して注文が殺到。何と既に販売打ち止めという人気ぶりです。

アイス千なりに替わるアイスグルメはないものか? 探してみると老舗が開発したユニークな商品がいくつも見つかりました。今回は暑気払いにもなる、名古屋の老舗のアイスグルメを紹介します。いずれも店頭販売のみなので、店舗に足を運んでお買い求め下さい。

納屋橋まんじゅうは100年以上の歴史を誇る名古屋銘菓。いわゆる酒蒸しまんじゅうで、素朴な甘みの中に酒のほのかな香りがあり、幅広い世代に親しまれています。その製造販売元である納屋橋まんじゅう万松庵(名古屋市中区)がこの夏売り出した新商品が「納屋橋キューブ」です。

今年7月に発売した「納屋橋キューブ」。9個入り270円。大須の直営2店舗でのみ販売
今年7月に発売した「納屋橋キューブ」。9個入り270円。大須の直営2店舗でのみ販売

「主力商品である納屋橋まんじゅうのあんと皮をペースト状にし、葛(くず)を加え、食べ歩きしやすいようにキューブ状に固めました」と同社広報担当の中島健一朗さん。ひんやり冷たく、少しとけたころ合いで食べるともちもちした柔らかさもある不思議な食感が特徴的です。

同社には、やはり納屋橋まんじゅうを丸ごと活かした納屋橋ジェラートがあり、カップ入りと最中を選べます。いずれも和菓子らしいさっぱりした口当たりが特徴です。

不朽園の「アイスクリーム最中」&「葛アイス」

1927(昭和2)年創業の不朽園(名古屋市中川区)は最中が名物。10年ほど前に売り出した「アイスクリーム最中」は、今では通年の人気商品に。さらに一昨年に商品化したのが「葛アイス」です。

不朽園の「葛アイス」(手前)270円は夏季限定商品。「アイスクリーム最中」は金時バニラ(左奥)216円と金時抹茶(右奥)270円の2種類で通年販売。いずれも店頭販売のみ
不朽園の「葛アイス」(手前)270円は夏季限定商品。「アイスクリーム最中」は金時バニラ(左奥)216円と金時抹茶(右奥)270円の2種類で通年販売。いずれも店頭販売のみ

「食べやすいバータイプのものを作りたいと考えて商品化しました。凍らせても固くならず、もっちりした食感を楽しめる葛を使ってたっぷりの小豆とともに固めてあります」と4代目の杉村武宏さん。

不朽園は最中の名店として知られる。店舗は金山総合駅から徒歩10分ほど
不朽園は最中の名店として知られる。店舗は金山総合駅から徒歩10分ほど

「アイスクリーム最中」は種(最中の皮)のパリッとした食感が小気味よく、ソフトクリームのコーンと比べても軽やかで、甘さ控えめのアイスクリームとよく合います。一方、「葛アイス」は水ようかんをキンキンに冷やしたような感覚で、小豆の風味とひんやり感を同時に楽しめます。店頭販売のみなので、身近な人へのおもたせにするのにちょうどよい氷菓です。

名古屋喫茶を支える本間製パンの小売り専用商品「アイスパン」

アイスパンは小倉&ホイップ、カスタード&ホイップ、チョコ&ホイップ、アイスメロンパンの4種で各200円
アイスパンは小倉&ホイップ、カスタード&ホイップ、チョコ&ホイップ、アイスメロンパンの4種で各200円
「アイスパン」ののぼりが涼を誘う。愛知県小牧市、長久手市、名古屋市西区の直営店「パン工房アヴァンセ」で販売
「アイスパン」ののぼりが涼を誘う。愛知県小牧市、長久手市、名古屋市西区の直営店「パン工房アヴァンセ」で販売

本間製パンは1957(昭和32)年に名古屋で創業(現在は愛知県小牧市)。名古屋喫茶のモーニングサービスに欠かせないトースト、その実に5割のシェアを誇る、この地域の業務用パンメーカーの草分けにして最大手です。同社の中で直営店限定の一般消費者向け商品のひとつが、夏季限定のアイスパン。その名の通り凍らせて食べるパンで、月1000個ほども売れる隠れたヒット商品となっています

「およそ15年前に売り出した当時は同様の商品は他になかったと思います。近年は冷やしたメロンパンなどはよく見かけるようになりましたが、パンの中では依然珍しいタイプではないでしょうか」と同社ベーカリー事業部の武藤隆典さん。

丸型パンにホイップクリームやあんこなどがつめてあり、アイスなのにパンにしっとり感があるのが不思議。5~10分ほど置いておくとパンも中のクリームもちょうどよい冷たさと柔らかさとなりお薦めです。

アイスグルメ開発のきっかけは“ウイークポイント克服”

これらのアイスグルメ、聞けば各社ともウイークポイントの克服が開発のきっかけだと言います。まんじゅう、最中、菓子パンはいずれも夏は売り上げが伸び悩む時期。これを何とかしたいとの思いが商品づくりの原動力になっているのです。もちろん、既存の商品を単に凍らせるだけではなく、氷冷化してもおいしくなるための工夫が必要だと、これまた各社が口をそろえます。

「和菓子本来の口当たりのよさをアイスクリームからも感じられるように、乳脂肪分を市販の高級アイスの半分ほどにあえて抑えてあります」(納屋橋まんじゅう万松庵・中島さん)、「あんこはアイス専用に炊いています。糖度を控えめにし、あっさりと水分を多めに炊いています。種もアイスがとけてもふにゃっとしないよう固めに焼いています」(不朽園・杉村さん)、「パン生地は凍らせても“さく味”を感じられるよう独自に粉から配合しています」(本間製パン・武藤さん)。

納屋橋まんじゅう万松庵の「納屋橋ジェラート」。最中、カップとも250円。納屋橋まんじゅうのあんこと皮をペースト状にして再利用した“フードロス対策”商品だ
納屋橋まんじゅう万松庵の「納屋橋ジェラート」。最中、カップとも250円。納屋橋まんじゅうのあんこと皮をペースト状にして再利用した“フードロス対策”商品だ

味の追求に加えて、商品開発の背景にはこんなテーマも。「フードロス対策です。まんじゅうの製造工程で、皮がやぶれたりあんこがはみ出たりして商品化できないロスがどうしても一定割合で出てしまう。これを再利用した商品ができないか、と考えて試行錯誤した末に納屋橋ジェラート、納屋橋キューブが誕生しました」と納屋橋饅まんじゅう万松庵の中島さん。

老舗のアイスグルメには、単に暑い時期に冷たい商品を投入するというだけではなく、季節による消費動向に合わせた販売戦略、確かな技術にのっとった商品開発力、さらには環境にも配慮した企業観なども反映されているのでした。こうした姿勢は、コロナショックで多くの事業者が苦境にさらされている今だからこそ、ピンチを克服する一手として参考になる部分もあるのではないでしょうか。

もちろん消費者としては、まずは“冷たくておいしい!”と楽しめば十分。暑さが厳しい名古屋だからこそ、そのひんやり感がいっそうおいしく感じられるはずです。

(写真撮影/すべて筆者)