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新型コロナ流行下でも忘れないで欲しい、がん早期発見の重要性

大須賀覚がん研究者
(写真:rammy2/イメージマート)

新型コロナの感染拡大で、不安な日々を送っている方も多いかと思います。こんな時だからこそ、忘れて欲しくないことが一つあります。それはがん早期発見の重要さです。

実は、新型コロナの世界的な感染拡大下で、がん診断の遅れが世界的な問題となっています。

がん検診受診者の急減

新型コロナ流行とともに世界中で起こったのが、がん検診受診者の減少です。こちらは日本対がん協会が調査した2020年上半期におけるがん検診受診者数のデータです。

引用元:公益財団法人日本対がん協会 対がん協会報 第694号
引用元:公益財団法人日本対がん協会 対がん協会報 第694号

日本での新型コロナの感染拡大に伴って、病院への受診を不安に思って取りやめる人が増えました。また、新型コロナ対応のために検診を一時休止する病院施設が出て、それも合わさって、例年よりも受診者数が急減しました。この傾向は世界各国で同様に見られています。

がん診断数の減少

がん検診数の減少はがん診断数の減少につながります。以下のデータは、米国で2020年上半期に、がんと新規に診断された人数の推移を示したものです。

引用元:JAMA Netw Open. 2020 Aug 3;3(8):e2017267.  作者が日本語訳を追加
引用元:JAMA Netw Open. 2020 Aug 3;3(8):e2017267.  作者が日本語訳を追加

米国で最初の大流行が起こった3〜4月にがん診断数は急減しました。乳がん・大腸がんではパンデミック前に比べて、約50%近く低下しました。

がんの発生は他病気の流行に関わらず、常に起こっていることですので、この「減少数=見つからずに放置された数」ということになります。このことは多くの人の未来に影響を与えるのではと危惧されています。

早期発見をする重要さ

皆さんもご存知のように、がんは早期に発見して早期に治療することが極めて大事です。まず、この国立がん研究センターのデータを見てください。

このデータでは、胃・喉頭・肺・皮膚・膀胱がんの患者の、進行度別の5年生存率を示しています。「限局」というのは小さな早期がんで、「領域」というのは周辺まで広がったもの、「遠隔」というのは他の臓器などの遠いところまで転移してしまったがんです。

見ていただくとわかるように、早期の限局がんだと、どのがんでもとても高い生存率です。しかし、「遠隔」がんとなってしまうと、どのがんであってもとても厳しい結果となっています。

がんは早期に発見して治療することが重要であることがわかるかと思います。

適切な感染予防をして検診受診を

2020年にがん検診を受け忘れてしまったという方は、今年は検診受診を検討してください。緊急事態宣言が出ている今すぐではなくても構いません。1−2ヶ月、時期を少し待っても構いません。しかし、新型コロナ騒動が終わってから行こうでは遅すぎます。まだまだ、事態が落ち着くまでには長い時間がかかることが予想されますし、何よりがんは待ってはくれません。適切な感染予防対策をして、検診を毎年受けていただきたいと思います。

検診を行う病院施設の側も、感染対策を当然しています。施設側の指示に適切に従ってもらえば、検診自体は感染リスクの高い行為とはなりません。ぜひ、行ってもらいたいと思います。また、がん以外の健康診断などものびのびとなっている方は、それも放置せずに毎年1回は受けるようにしていただきたいと思います。

気になる症状があったら病院受診を

検診とは別に気になる症状がある方も、受診を控えずに医師に相談をしてもらいたいと思います。主にがんを疑う症状は以下のようなものになります。

尿・便・痰に血が混じる、異常な性器出血、乳房・皮下のしこり、原因不明の体重減少、飲み込みにくさ、声がかすれる

これらの症状や、持続的に続くその他の気になる症状がある場合にも、長期に放置しないで、早めにお医者さんに相談をしていただきたいと思います。

がんは待ってくれない

新型コロナの感染拡大で皆さん大変な時だと思います。また、感染拡大が騒がれる中で、病院に行くことを躊躇する気持ちも大変にわかります。

しかし、がんは待ってくれません。

そんな状況の中でもがんは起こって、放っておけば進行して治療が難しくなってしまいます。がんは日本の死因の第1位です。2人に1人は生涯のうちにかかってしまう病気です。他人事とは思わないでいて欲しいです。

新型コロナ一色の今だから、その頭の片隅に置いてもらって、ぜひ定期的な検診や、適切なタイミングでの病院受診をしていただければと思います。悲しい思いをする方が少しでも減ってもらえればと願っています。

がん研究者

がん研究者 / アラバマ大学バーミンハム校助教授。筑波大学医学専門学群卒。卒後は脳神経外科医として、主に悪性脳腫瘍の治療に従事。患者と向き合う日々の中で、現行治療の限界に直面して、患者を救える新薬開発をしたいとがん研究者に転向。現在は米国で研究を続ける。近年、日本で不正確ながん情報が広がっている現状を危惧して、がんを正しく理解してもらおうと、情報発信活動も積極的に行っている。Twitter (フォロワー4万人)。著書に「世界中の医学研究を徹底的に比較してわかった最高のがん治療」(ダイヤモンド社、勝俣範之氏・津川友介氏と共著)。わかりやすくて、温かい、がん情報を発信していきます。

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