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惜敗も不安を払拭したバスケ日本代表 スペイン戦のMVPは渡邊雄太だ!

大島和人スポーツライター
渡邊雄太選手(中央) (C)FIBA

現役NBA選手2名を擁する日本

バスケットボール男子日本代表にとって、東京大会は45年ぶりのオリンピックだ。人によっては期待より不安のほうが大きかったかもいれない。しかし26日のスペイン戦を終えて、フリオ・ラマスヘッドコーチ(HC)と選手たちへの期待値は確実に上がった。

日本の世界ランキングは42位。長く世界レベルから大きく水を開けられていたが、2016年に45歳で就任した東野智弥・技術委員長のもとで改革を進めてきた。

2019年のワールドカップ(W杯)はアジア予選を突破し、21年ぶりに“自力”で世界大会に出場した。2018年には渡邊雄太、19年には八村塁がNBAデビューも果たしている。2020-21シーズンのNBAには450名の選手がいて、アジアで生まれ育った選手は二人しかいない。その2枠を日本が占めている。

また日本はこの夏ベルギー、フランスとの強化試合に勝利している。フランスは2019年のW杯でアメリカを下していて、東京大会における優勝候補の一角。いわゆる練習試合とはいえ、勝利の価値は大きい。

19年のW杯は失望が残った

ただし日本は2019年夏に苦い経験をした。直前の強化試合で好結果を残していたもののW杯本大会は1次ラウンドでトルコ、チェコ、アメリカに完敗。八村塁が離脱した順位決定戦はニュージーランドに81-111で大敗するなど大会を通算0勝5敗で終え、我々は大きな失望を味わった。

しかも32カ国が出場するW杯と違い、オリンピックの出場はわずか12チーム。南北アメリカ、ヨーロッパの代表チームは率直に言って「格」が違う。

スペインは直近のW杯王者

そして26日に対戦したスペインは2019年のW杯王者。揃ってNBAの優勝経験を持つパウ、マルクのガソル兄弟やリッキー・ルビオといった世界的スター選手も擁している。昨季のBリーグ王者・千葉ジェッツ所属のセバスチャン・サイズもスペイン人だが、彼は代表メンバー入りを逃した。つまりBリーグのファイナルMVPでも「入れない」レベルだ。

日本はこの顔ぶれで試合をスタートした。

★センター(C)

エドワーズギャビン(千葉ジェッツ)

★パワーフォワード(PF)

八村塁(ワシントン・ウィザーズ)

★スモールフォワード(SF)

渡邊雄太(トロント・ラプターズ)

★シューティングガード(SG)

馬場雄大(メルボルン・ユナイテッド)

★ポイントガード(PG)

田中大貴(アルバルク東京)

先発は平均201センチ

平均身長はちょうど201センチ。決して「無理な大型化」をしたわけでなく、アスリート能力の高い5人が集まっている。他競技で日本のハンデとしてよく言及される「身体能力」は、むしろこのチームの強みかもしれない。しかも八村23歳、馬場25歳、渡邊26歳と海外組の3名はこれから脂が乗る世代だ。

エドワーズギャビン(※Bリーグの登録名はギャビン・エドワーズ)は2013年に来日して昨年に日本国籍を取得した帰化選手。206センチとセンターにしては小柄だが、速攻に参加する機動力や守備力、3ポイントショットといった強みを併せ持つ。エース八村塁へのマークが想定される中で、それを補える人選だった。

試合の入りは?

開始直後は完全なスペインペースだった。連続7ポイントを許し、開始5分の時点で2-11までビハインドは広がっていた。

しかし日本はリバウンドや守備で健闘し、比江島慎(宇都宮ブレックス)、シェーファーアヴィ幸樹(シーホース三河)、富樫勇樹(千葉ジェッツ)といった交代選手が強みを出す。シェーファーは第1クォーター残り0分22秒にウスマン・ガルバのシュートをブロック。富樫は第1クォーター終了と同時に得意のフローターショットを決め、日本は14-18と追い上げて第1クォーターを終了する。

第2クォーターの日本は素晴らしい入りだった。残り9分9秒、馬場雄大がスティールから一気にアタックしてダンクを決めて試合は2点差。さらに富樫勇樹、八村塁の3ポイントショットが決まり、日本は第2クォーター残り5分25秒で26-26の同点とする。スペインはここでたまらずタイムアウトを取った。

第2クォーターに「魔の5分間」

先に「敗因」を振り返ると、ここからの5分間だった。スペインはPGリッキー・ルビオをコートに戻すと、ルビオが完全に展開を掌握。14歳11ヶ月でスペインリーグデビューを果たした天才が連続19得点のビッグランを演出し、自らも5分足らずで7得点3アシストを記録する。日本は28-48と大きなビハインドを許して前半を終えた。

日本目線で見ると第2クォーター残り4分55秒でエドワーズギャビンが犯した「アンスポーツマンライクファウル」がいい流れを止めてしまった一因だ。“アンスポ”は相手にフリースローだけでなく再開後のボールポゼションを与えてしまう。バスケットボールはファールをいつ、どう使うかという冷静さが必要な種目だが、この場面に限っていえば単なる損だった。

金丸が短時間でインパクト

ただし日本は攻守とも立て直して、再びスペインを追い上げる。第3クォーターにはシュートの名手・金丸晃輔(島根スサノオマジック)を起用すると、彼は期待に応えて立て続けに3Pショットを2本成功。金丸は6分24秒の出場でフリースローも含めて8得点を記録し、世界レベルでもその強みを出せることを証明した。

日本は56-69で第4クォーターを迎える。するとそこまで鳴りを潜めていた八村塁がダンク、3ポイントショットと最終クォーターだけで11得点を記録。チームは77-88と敗れたものの、失望よりは手応えの多い戦いを見せた。

期待以上のスペイン戦

「手応え」の部分を言うなら、まず安定して相手コートまでボールを運べたこと。ターンオーバーは11個で、これは及第点だろう。19年のW杯では低迷した3ポイントショットの成功率も、スペイン戦は40.7%と合格。リバウンドは32本でスペイン(42本)を下回ったが、想定の範囲内だ。守備も第2クォーターの「魔の5分間」を除けば、大きく崩れた時間帯がない。77-88というスコア、内容は期待以上のものだった。

渡邊雄太、八村塁、馬場雄大(7得点5アシスト)といった海外組が“通用”したことに特段の驚きはない。ただスペイン戦の日本は世界大会初出場の富樫勇樹(8得点)、金丸晃輔(8得点)がオフェンスで持ち味を出すなど、W杯と比較して武器が増えていた。それも大きな収穫だ。

スペイン戦のMVPを挙げるなら、やはり渡邊雄太だろう。まず8リバウンド、5スティールがいずれもチーム最多。守備と速攻でチームの先頭に立ち、相手のファウルも誘い、さらに19得点を記録している。

1勝は高い壁だが……

12チームが3組に分かれて戦う1次リーグだが、日本は極めて厳しいグループに入った。7月29日(13時40分開始)にスロベニア、8月1日(13時40分開始)にアルゼンチンとの戦いが待っている。スロベニアは世界ランクこそ16位だが、26日にアルゼンチンを下している。アルゼンチンは世界4位で、世界大会におけるメダルの常連だ。

となればラマスHCが口にする「1勝」という目標は、もちろん低い壁ではない。しかし金星がまったく無理というわけでもなさそうだ。残り試合への期待が膨らんだ、26日のスペイン戦だった。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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