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高校野球の穴場はここ 春季大会をおすすめする3つの理由

大島和人スポーツライター
春季埼玉県大会2回戦のネット裏

夏、秋との違いは全国大会につながらないこと

高校野球の「頂点」が夏の全国高等学校野球選手権だ。厳密に言うと秋の国際大会や国民体育大会に出場する選手もいるが、選手権を終えると選手たちは高校野球に区切りをつける。

春の選抜も甲子園球場を舞台とし、テレビなどで大きく取り上げられる全国大会。その選抜の出場権を懸けて争われるのが秋季大会だ。毎年11月には北海道から九州までの各地区を制した高校による明治神宮野球大会というトーナメント戦もある。熱心なファンにとっては春、夏と同じくらい気になる大会だ。

ただ夏の選手権、春の選抜、秋の地区大会と神宮が決して「すべて」ではない。高校野球の中で最大の「穴場」となるのが春季大会だ。

春季大会は夏や秋の都道府県大会と違い地区大会止まりで、全国大会にはつながっていない。その結果で夏のシード校が決まるといった「ご褒美」はあるが、「どうしても勝ちに行く大会」という重みはない。全校応援をするチームはあまり見ないし、負けたチームが涙を流すようなドラマ性も乏しい。主力を休ませて手の内を隠しつつ、新戦力の発掘をする有力校もある。

いいチーム、選手が見られることは不変

ただ野球の本質に変わりはなく、逸材は逸材だ。しかも秋に比べれば一回り成長もしている。「いいチーム、選手が見られる」ことは春季大会をおすすめする最大の理由だ。

ドラマでなく「野球」を見に来る観客、スカウトは秋や夏と同じ熱心さでこの大会を観察している。メディアにとっても夏に向けた大切な「仕込み」の時期だ。

筆者は4月26日(木)の上尾市民球場に足を運んだが、埼玉栄高校の注目株・米倉貫太投手を目当て多くの観戦者が足を運んでいた。埼玉、千葉は平日に試合が組まれているから、「色んな試合、選手を見たい」マニアやスカウトは足を運びやすい。観客の「マニア度」は夏よりも間違いなく濃かった。そういう「コアな雰囲気」を楽しめることは、春季大会をおすすめする2つ目の理由だ。

4月28日(土)には横浜スタジアムで神奈川県大会の準決勝、神宮第二球場で東京都大会の準決勝が行われる。神奈川のベスト4は桐光学園、東海大相模、横浜、鎌倉学園の4校。横浜は選抜出場を逃したが、入学直後の1年生も含めて有望選手がより取り見取りのタレント軍団だ。東京の準決勝では日大三と早稲田実業の超注目カードが実現する。

神奈川、東京は降雨順延などが無ければ29日(日)に決勝が行われる。埼玉県大会は来月4日、千葉県大会は7日に決勝戦が行われる予定だ。九州のようにもう最後の地区大会が終わっている地域もあるが、このゴールデンウィークには全国各地で春季大会の試合が組まれている。各都道府県の高野連公式サイトを見れば、対戦カードと球場、試合開始時間は分かる。

昨年の春季東京都大会は清宮フィーバーもあって神宮球場に2万人が詰めかけたが、それは例外。春は夏の都道府県大会決勝、準決勝に比べて客席が空いていて、灼熱もなく、ゆったり見られる。「観戦環境の良さ」が春季大会をおすすめする3つ目の理由だ。今までこの大会に目の向いていなかった高校野球ファンもいると思うが、足を運んでみたらいかがだろうか?

スポーツライター

Kazuto Oshima 1976年11月生まれ。出身地は神奈川、三重、和歌山、埼玉と諸説あり。大学在学中はテレビ局のリサーチャーとして世界中のスポーツを観察。早稲田大学を卒業後は外資系損保、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を始めた。サッカー、バスケット、野球、ラグビーなどの現場にも半ば中毒的に足を運んでいる。未知の選手との遭遇、新たな才能の発見を無上の喜びとし、育成年代の試合は大好物。日本をアメリカ、スペイン、ブラジルのような“球技大国”にすることを一生の夢にしている。21年1月14日には『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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