96%が「不妊治療と仕事の両立困難」半数が「不妊退職」、保険適用はもちろん、政府は両立制度の検討も

仕事と治療の両立イメージ(提供:ideyuu1244/イメージマート)

10月11日、NHK日曜討論に出演した田村憲久厚生労働大臣は「菅総理大臣も『経済的な支援だけでなく、不妊治療をしっかりできる環境を作っていかなければならない』と言っており、厚生労働省と内閣府のもとで議論する場を作り、働く場の環境整備を早急に進めたい」と述べた。

不妊治療の保険適用は素晴らしいことだが、金銭面ばかりが話題になり、仕事と両立できるサポート制度の議論が聞こえてこなかったので、田村大臣のこの発言にはいい意味で驚いた。

金銭面が軽減されても、実際に治療を受けられなければ意味がない。現在、育児介護休業法改正の審議会が行われているが、是非この場で不妊治療休暇の導入などを検討してもらえたらと思う。

不妊治療の当事者が望むことはなにか。

当事者団体「NPO法人Fine(ファイン)」が実施した「仕事と不妊治療の両立に関するアンケートPart 2(2017年版)」から見てみたい。

(なお、この調査は「仕事をしながら不妊治療を経験したことのある、もしくは考えたことのある男女5,526件(うち有効回答数 5,471件)」の回答をもとにしている。)

参考:

NHK NEWS WEB「不妊治療 助成制度の拡充 早急に結論出す」田村厚労相

NPO法人fine「仕事と不妊治療の両立に関するアンケートPart 2(2017年版)」
NPO法人fine「仕事と不妊治療の両立に関するアンケートPart 2(2017年版)」
NPO法人fine「仕事と不妊治療の両立に関するアンケートPart 2(2017年版)」
NPO法人fine「仕事と不妊治療の両立に関するアンケートPart 2(2017年版)」

●96%が「仕事との両立が困難」、5割が「不妊退職」

仕事をしながら不妊治療を経験したことのある人のうち 95.6%が「両立は困難」と回答。

両立が難しい理由は「頻回かつ突然な休みが必要である」(71.9%複数回答)、「あらかじめ通院スケジュールを立てることが難しい」(47.3%複数回答)、次いで「周りに迷惑をかけて心苦しい」(25.6%複数回答)など(上記Q11の図参照)。治療のためのスケジュール調整に苦慮している様子がうかがえる。

仕事との両立が困難で働き方を変えざるを得なかった人のうち、半数が「退職を選択(=不妊退職)」(上記Q13の図参照)した。

働き方を変えざるを得なかった「おもな理由」は、「通院の負担(回数が多い、時間がかかるなど)」と「精神的な負担(責任のある仕事ができない、不妊治療に対する理解がないなど)」である。

不妊治療のために働き方を変えざるを得なかった時の気持ちのコメントからは、当事者が本当は仕事を辞めたくなかったことや、職場における理解不足から「プレ・マタニティハラスメント(プレ・マタハラ)」が起こっていると考えられる。

以下、アンケート調査のフリーコメントをいくつか抜粋した。

上司には不妊治療をすることと、休みが増えてしまうことを告げてあったのですが、恐らく欠勤遅刻早退が上司の想像を超えて頻繁だったのだと思います。

ある日、妊活か仕事かどちらかを選びなさいと言われました。

治療のための休暇は取れるが、今の時期は治療しないで欲しいと上司に言われたことがあり、人事にも相談したが、休暇の変更権限は上司にあると言われた。

休職を許していただいたが、その後、上司の態度が急変し、退職へ追いやられた。

ほとんどが女性の職場で、女性上司の理解が得られず、「病院通いは休みの日に行きなさい」と言われとても悲しかった。

職場環境がストレスフルな状況だったため、「治療のために休職したい」と申し出ましたが、「それなら辞めろ」と言われました。

部長級の男性上司から、「不妊治療するなら契約社員になったらどうか」と言われた。

NPO法人fine「仕事と不妊治療の両立に関するアンケートPart 2(2017年版)」
NPO法人fine「仕事と不妊治療の両立に関するアンケートPart 2(2017年版)」

●88.7%が職場の不妊治療をサポートする制度が欲しい

「職場に不妊治療をサポートする制度がありますか」の質問に対し「ある」と答えた人はわずか5.8%。「サポート制度がない」「わからない」と答えた人の88.7%が、「サポートが欲しい」と回答した。

企業側が不妊治療を「制度として」サポートできていないことが読み取れる。その結果、多くの人が退職や雇用形態の変更を余儀なくされ、社会的にも大きな損失といえる。

「制度がある5.8%」が答えた「実際に存在する制度」と「制度がない・わからない」と答えた人が「必要としている制度」を比較すると、そのギャップがうかがえる(上記Q20×Q25の図参照)。就業時間制度については「欲しい」73.3%に対して「ある」は25.5%とギャップが大きく、頻繁な通院に対応するための時短やフレックスなど、就業時間の柔軟性が求められているものの、整備は不十分であることがわかる。

求められている制度としては、仕事を続けられるための制度、または一時休職もしくは退職しても再び働くことができるような制度だとわかる。

●政府には、不妊治療の保険適用と職場での両立支援を両輪で進めて欲しい

日本では、3組に1組が不妊を心配したことがあり、5.5組に1組は何らかの不妊治療を受けていると言われ、その数は50万人と推測されている。不妊治療の保険適用と職場での両立支援は、是非とも両輪で進めてもらいたい。

現在、育児介護休業法改正の審議会が行われている。男性育休が主な議題のようだが、是非ここで不妊治療と仕事の両立支援制度についても議論してもらえたらと願う。

フレックス制度や在宅ワークは子育てや介護を担う人だけでなく、全社員が使える制度として欲しい。子の看護休暇、介護休暇(年5日)に加え、不妊治療休暇も検討して欲しい。「不妊治療休暇」という名称で使いづらいようであれば、生理休暇なども含めた「婦人休暇」としたり、看護休暇、介護休暇、不妊治療休暇すべてで「ファミリー休暇」としたりすると、治療していると特定されずにいいかもしれない。(「婦人休暇」「ファミリー休暇」は一例として挙げたまで)

看護休暇、介護休暇は、半日(所定労働時間の1/2)単位で取得できる。私(筆者)が不妊治療で通院した際は、だいたい3時間ほどの治療時間だったことから、まる1日の休暇を取得するまでではない。半日単位、時間単位で取得できる休暇制度だと使いやすいだろう。

政府は不妊治療の両立支援制度を推し進めてこそ、不妊治療の保険適用化、そして少子化対策への本気度を見せることができるのではないか。

この記事の元となった調査結果

NPO法人fine「仕事と不妊治療の両立に関するアンケート Part 2(2017年発表版)」

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