独身は損してると思わせない、産休・育休の穴をどう埋めるのか論争の解決策はこれだ!

(写真:アフロ)

男性育休義務化のニュースを受け、「産休・育休のフォローをする人の負担を軽くして働きやすくなって欲しい」「誰かにしわ寄せがいかないようになって欲しい」という意見が上がっている。

◆参考資料:

独身は損してる!? 「産休・育休の穴をどう埋めるのか」論争

●フォローは周囲の社員が負っているという企業が7割!

現実として、誰かが産休・育休で抜けた時の穴埋めに、代替要員を確保している会社は多くない。わたしが取得したアンケート結果では、「産休育休を取得する社員が出ると、その社員の業務は周囲の社員が負うことになる労働環境だ。」の質問に対して、7割の企業が「周囲の社員が負う状況」と答えた。

たとえば、入社1~2年目の社員が産休育休に入ったのであれば、派遣や契約社員などで直接代替が可能かもしれない。しかし、入社10年以上の社員の業務は派遣社員等では賄えず、直接代替はほぼ不可能。従業員1001名以上の大企業でも7割が周囲の社員が負う状況とのことから、代替要員を賄う人件費の問題だけでないことが伺える。

そしてこの結果、抜けた人の業務を部署内だけで分担せざるを得なくなり、誰かにしわ寄せがいき、不満が溜まってしまうという状況が多くの企業で起こっている。

(出典:2016年4月発表 Profuture株式会社との協働調査結果より)
(出典:2016年4月発表 Profuture株式会社との協働調査結果より)

● “逆マタハラ”や“お妊婦様&モンスターワーママ問題”まで含めてマタハラ問題と捉えることが解決のカギ

2014年度に「マタハラ」という言葉が新語・流行語のトップ10に入り、急速に浸透するとともに、ネット上では「逆マタハラ」という言葉が広まった。

「逆マタハラ」とは、妊娠や出産・育児休業で休んだ社員の業務のしわ寄せで、長時間労働を余儀なくされ、過労死しそうな周囲からの訴えを象徴した言葉だ。 

マタハラ問題解決のためには、この逆マタハラ、つまり制度の利用をフォローする社員たちに目を向けることが解決のカギで、ここにマタハラ問題が単にコンプライアンスやモラルの問題だけでなく、組織問題・経営問題と言える所以がある。

逆マタハラを解決しなければ、仕事のしわ寄せによって「婚活する暇がない」「もう一人、子どもを持つ余裕がない」という次なる少子化問題を生むことも考えられる。

そして、単にマネジメントの問題で起こしてしまう逆マタハラだけでなく、もっと悪質になると制度を利用する女性側が加害者となってくる「わざと保育園に落ちる問題(保育園の不承諾通知歓迎問題)」「お妊婦様問題」「モンスターワーママ問題」というのがある。

「わざと保育園に落ちる問題(保育園の不承諾通知歓迎問題)」とは、入園しづらい人気の保育園1カ所でしか申請しないなどして、あえて保育園に落ちて育休を延長することをいう。

「お妊婦様問題」「モンスターワーママ問題」とは、妊娠や育児というカードを最大限に利用して、仕事や周囲への気遣いをせず、過剰な権利意識で職場に迷惑を掛けたり、周囲を傷つけたりする行為をいう。

わたしは、逆マタハラ、わざと保育園に落ちる問題、お妊婦様&モンスターワーママ問題まで含めてマタハラ問題と捉えることが解決のカギだと考える。すべての問題は繋がっているからだ。

(図:株式会社natural rights作成)
(図:株式会社natural rights作成)

◆参考資料:

マタハラ防止で出没しはじめる、お妊婦さま!

育休復帰面談で会社をイラつかせる女性の事例をご紹介。多くの女性は不安で仕方ない。お互いの努力が必要

●フォローする上司・同僚の評価の見直し、対価の見直しを!

逆マタハラを解決するには、フォローする上司・同僚の評価の見直し、フォロー分の対価の見直し、結婚や妊娠を望まない社員にも長期休暇が取得できる制度の導入が必要だ。

多くの企業において、他者へのフォローが人事評価の項目に入っていない。仮に入っていたとしても、それが給与(対価)に反映できる仕組みになっていない。給与アップはプロジェクトの成功や商品開発の成功など、売上や利益に直結するものとなっている。

育児・介護等の様々な制約を持つ社員が増えるこれからの時代に合わせて、各企業には他者へのフォローを人事評価の項目に入れる検討をしてもらいたい。

また、休職者の給与はうっすらと会社全体にばらまかれることが多い。休職者の業務をフォローしている部署(チーム)に、的確に休職者の給与を分配してもらいたい。そうすれば、産休・育休で長期の休暇を取る側も、後ろめたい気持ちに悩まされずに済む。

1つの案として、スペシャリスト(仕事の領域を限定し、専門的な知識や技術で仕事をする人)を抱える部署向けに“ドミノ人事”という仕組みがある。

産休・育休の休職者が出たら、その人の仕事を洗い出し、必要な業務のみを部署内の各メンバーに分配する。その際に休職者にとっては、不要になったと思える業務をなくす見直しの機会とする。

休職者のすぐ下のポジションにあたる人(Aさん)に、休職者の必要な業務の半分近くを分配する。このことで、後輩社員の育成の機会としていく。ポイントは、休職者の業務をすぐにできてしまう人では育成にならないので、ある程度努力しなければできない人材に引き継ぐことである。

そして、Aさんの下のポジションの人(Bさん)に、休職者の業務とAさんの業務を合わせて半分近く分配する。Bさんの下のポジションの人(Cさん)に、休職者の業務とBさんの業務を合わせて半分近く分配する。最後に各メンバーは持っていたルーティンワーク(定型業務)や簡易業務を休職者の間接代替要員として、派遣や契約社員、パート等にお願いする。こうすることで組織としてのレベルアップを図り、いつ誰が抜けても業務が滞らない状態へと成長させていくという仕組みだ。

最後に忘れてはいけないのが、この部署の管理職。このような仕組みでチームを育成できる管理職はマネジメント能力が高いということなので、昇進・昇格の機会に繋げてもらえたらと思う。

(図:株式会社natural rights作成)
(図:株式会社natural rights作成)

●わざと保育園に落ちる問題、お妊婦様&モンスターワーママ問題の解決策は?

わざと保育園に落ちる問題は、育休から復帰しても仕事とワンオペ育児が過酷だからという理由で、あえて保育園に落ちて育休を延ばしている。自己防衛と選択肢の少なさが要因と考えられる。

産休・育休の状態(仕事0%)、3歳までは時短勤務を取得する状態(仕事60~70%)フルタイムで働く状態(仕事100%)、多くの企業ではこの3種類しか働き方がない。たとえば、育休復帰後の半年間は、4時間勤務という選択肢がある。週3~4日の時短勤務という選択肢があるなどスロースタートでの復帰の道も用意されていたら、長期の育休を取らなくても復帰できる人が増えるかもしれない。また、出産して子どもが病弱だった場合などの不測の事態でも、育休から復帰できる可能性が高まる。

もちろん、その代わり給与は下がる。本人が自ら進んでその道を選べば、マタハラではない。いずれ必ず制度利用前のキャリアに戻れることが約束されていれば、制度利用者には無理がない。

◆参考資料:

企業のお妊婦様&モンスターワーママ対策は、産休育休復帰者を増やし複数ルートを作ること、専門家に聞いた

お妊婦様&モンスターワーママは、社会人としての常識やマナーの問題だ。妊婦、子育て中のママの自己中な態度に嫌気がさしている人たちが実際に存在する。制度の利用は権利なのだから当然という態度では、マタハラは良くないけど、してしまう人の気持ちも分からなくもない、となってしまう。

お妊婦様&モンスターワーママを出さないためには、新卒入社時から社員研修をしていく必要がある。

産休育休は「仕事を継続するためのサポート制度」であり、「権利」という言葉をあえて使うのであれば「働き続けるために行使する権利」であって「今まで働いたから得られる権利」ではない。あくまでも“架け橋制度”なので、制度を使って辞めたり、フォローする周りへの気遣いをしないというのは、マナー違反だとしっかりと教育していく必要がある。

制度利用者は、制度を利用させてくれた会社への恩返しの気持ちや、フォローしてくれた社員への感謝の気持ちを忘れずに持ってもらいたい。

●制度利用者がいることで、それ以外の社員に好影響がもたらされる

今まで述べてきたように、マタハラ解決のポイントは、「逆マタハラ、わざと保育園に落ちる問題、お妊婦様&モンスターワーママ問題の解決」にあり、だからこそ、マタハラ解決はすべての労働者の労働環境の見直しへと繋がっていく。

制度利用者がいることで、それ以外の社員にしわ寄せがいくのではなく、逆に好影響がもたらされるよう意識してもらいたい。たとえば、育児や介護と仕事の両立のため在宅ワーク制度を社内に作ったら、それ以外の社員も全員、在宅ワークが利用できるようにする。こうすることで、育児や介護など制約がある社員(=ダイバーシティ人材)がいることがきっかけで、それ以外の社員にもメリットが生まれる。こうしていかないと、多様性のある人材(=ダイバーシティ人材)が社内にいる意味がない。つまりは、ダイバーシティを会社が経営戦略に掲げる意味がない。

本気のマタハラ・パタハラ防止には、働きやすい職場へのヒントが詰まっている。これをきっかけに、誰にとっても働きやすい職場へと変貌してもらえたらと思う。

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