フリーランスや零細企業の経営者にも病気やけが、育児・介護等の保障を!

育児しながら在宅ワークするフリーランスのイメージ(写真:アフロ)

●国内のフリーランスは1000万人強に増加

ランサーズ(株)が昨年2016年に行った実態調査(3000人対象)では、フリーランスの数が1,064万人(労働力人口の16%)と前年度対比で17%増加した。フリーランスの魅力は” 自由な働き方”。今後、働き方の多様化が進めば、日本でますますフリーランスが増えることになる。

ちなみにランサーズ(株)によると、アメリカではすでに5,400万人がフリーランスで働いているとのこと。Forbesの記事によると、アメリカ全体の就業人口のうち約1/3がフリーランスで生計を立てているという。

参考文献:ランサーズ(株)フリーランス実態調査2016年版

国がフリーランスの人材活用を推奨

昨年2016年11月に経済産業省はフリーランス人材を活用しようと、有識者でつくる「雇用関係によらない働き方」に関する研究会の初会合を開いた。ITなどの専門技術者や出産、育児で企業を退職した女性の新しい労働の形を模索し、政府が進める「働き方改革」に取り入れるのが狙いだ。フリーランスで労働力不足を補ったり、外部から人材を取り入れることで既存組織にイノベーションが起きることを期待しているようだ。

特に人件費の限られている零細企業の場合、フリーランスは雇用負担がなく、プロジェクト単位で人材や成果物を得ることができる。企業の希望と人材を適切にマッチングできれば、企業にとっても活用の幅が広がる。

参考記事:フリーランスの人材活用を検討 経産省が「働き方改革」の新施策として期待

一方で収入の不安定さがフリーランスになる障壁に

フリーランスは自由な働き方と引き換えに、働かなければ収入がゼロになってしまうという不安定さもある。雇用保険に加入できないため、育児給付金や介護給付金、失業手当等がない。国民健康保険に加入していれば産休(産前6週間/産後8週間)の間だけ出産手当金(1日につき報酬の2/3が支給)を受給できるが、その後は働き出さないと収入がない。

労働基準法では産後57日目から働き出せることになっているが、保育園に57日目での受け入れ義務は無く、各園で定められた月齢でしか入園を受け付けてもらえない。一般的に首が座る生後4~6ヶ月以降に設定してる園が多い。出産時期によってはすでに保育園がいっぱいで、4月入園を待たなければならないこともある。しかも、在宅で働くフリーランスは、認可保育園への入園条件が厳しい。

働き出さないと収入がないにもかかわらず、保育園に預けられないという矛盾を何かしらのかたちで埋めない限り、女性のフリーランスを活用することは難しい。国が子育てを在宅で行いながら、育児と両立して仕事を行えるという意図で” フリーランスの活用” と言っているのであれば、今後育休が最大2年(現在1年半)に延長される雇用保険加入の従業員女性との格差がますます開くことになる。

また今年1月からマタハラ防止措置が施行されたが、「事業主が従業員に行なう」妊娠を理由にした解雇や退職強要は違法とされているため、都度契約で働くフリーランスの女性はこの措置義務の対象になっていない。フリーランスの女性が妊娠を理由に契約していた仕事を打ち切られても、現状は「仕方ない」と飲まざるを得ない可能性が高い。フリーランスは成果物を企業に提供する契約となっているので、それが出来ない以上、契約を切られるのは仕方ないと思うが、であるならばその場合の保険がないと妊娠に対し後ろ向きになるか、身体を押してまで成果物を出さなくてはならない状況となってしまう。この点について、以下で記載している官民で動き出したフリーランスの失業保険に期待したいと思う。

国がフリーランスの支援に向けて動き出した

そもそも育児や介護の給付金が雇用保険から賄われるという立て付け自体がどうなのか、改めて考え直さなくてはならないのではないかと私は思っていた。

そんな中、3月14日の日経新聞に、「フリーランスに失業保険 政府・損保が創設 対象1000万人」との記事が掲載された。「政府は特定企業に属さずに働くフリーランスを支援するため、失業や出産の際に所得補償を受け取れる団体保険の創設を提言する。損害保険大手と商品を設計し、来年度から民間で発売。政府は契約ルールを明確にしたガイドライン作成を企業に求めるほか、教育機会の拡充も検討。介護や子育てを理由に自宅で働く人も増えており、若年層や女性の多様な働き方を支える」とのこと。フリーランスに新たなセーフティーネットが整備されそうだ。名ばかりでなく、是非とも実効性のある内容になってもらいたい。

参考記事:フリーランスに失業保険 政府・損保が創設 対象1000万人

●経営者にだって保障を!

経営者もフリーランス同様に雇用保険に加入できないし、ケースとしては少ないだろうが、妊娠した際に自らが事業主のためマタハラ防止措置の保護対象でもない。

東京商工リサーチの2015年の調査によると女性経営者は増えていて、2014年末で約31万人と2010年から5割増え全体では11.5%を占める。妊娠適齢期の女性経営者は少数であり、その経営者に対するマタハラとはどういったものかという議論は残るが、起業家が事業リスク以外でのリスクで二の足を踏むような状況は可能な限り排除し、若い女性視点の新しいサービスが生まれる土壌を整えていくことも肝要と思う。もちろん、経営者として起業するからには、自分が実働に回らずに、意思決定だけで組織が回るようマネジメントするべきという意見もあるだろうが、立ち上げの時や従業員が極少数の零細企業の場合に、経営者の病気やケガ、やむを得ない妊娠や介護と重なれば組織自体が傾きかねない。

働き方の多様化とともに、” すべての働く人”の最低限のセーフティーネットが整備されることを願う。

参考記事:女性社長が増加、全体の1割超に

参考文献:東京商工リサーチ「2015年全国女性社長調査」

参考:フリーランスってなに?個人事業主ってなに?

フリーランスとは、雇用契約がなく独立して都度契約で仕事を請け負う「働き方」をいう。個人事業主は「税務上の所得区分のこと」で、株式会社や合同会社などの法人を設立せず、個人で事業を営んでいる人をいう。法人を設立している場合には売上を法人の事業所得として申告するが、個人事業主では個人の事業所得としての申告となる。つまりフリーランスのうち、法人を設立している人以外は基本的に「個人事業主」となる。