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2023年10月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポート

大濱崎卓真選挙コンサルタント・政治アナリスト
画像は筆者作成

2023年9月最新「内閣支持率・政党支持率」トレンドレポート」に引き続き、世論調査会社グリーン・シップの「GS選挙調査センター」が全国規模で毎日実施している情勢調査のデータ提供を受け、モーニングコンサルト社の調査や、その他の調査機関の数字などから、内閣支持率や政党支持率の分析をお送りします。

岸田内閣の支持率 さらに下降トレンドへ

モーニングコンサルト社(https://pro.morningconsult.com/trackers/global-leader-approval)より引用
モーニングコンサルト社(https://pro.morningconsult.com/trackers/global-leader-approval)より引用

 まず、モーニングコンサルト社のデータです。世界各国のトップ間における比較に適しているモーニング・コンサルト社の調査は、11月1日時点で、支持率が21%、不支持率が67%となりました。先月の調査と比べて支持率が2pt減少、不支持率が4ptの上昇で、不支持率が支持率を大幅に上回る状態は変わっていません。

内閣支持率(2021年10月〜)、月次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用
内閣支持率(2021年10月〜)、月次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用

 国内の調査会社グリーン・シップ社の調査も下降トレンドを示唆しています。先月(10月)の不支持率は70%を超えており組閣後過去最高となったほか、支持率も21.7%と過去最低を記録しました。「わからない」と回答する人が徐々に少なくなってきていることは、岸田政権に対するイメージが固定化してきていることを表していますが、下降トレンドの際には「わからない」が減る傾向にあり、上昇トレンドの際には「わからない」が増える傾向にあるため、ネガティブなイメージが醸成されている状況にあるといえます。

補選のコンセンサスと、辞任ドミノの先にあるもの

写真:つのだよしお/アフロ

 10月に行われた衆参補選は与党の1勝1敗に終わりました。いずれも与党が議席を有していた補欠選挙だったことから与党は2勝を目指す姿勢でしたが、結果的には衆議院長崎4区で自民党公認候補が勝ったものの、参議院徳島高知選挙区では自民党公認候補が負けたことで1勝1敗という結果で、必ずしも支持率の上昇、ならびに政権浮揚に繋がるものにはなりませんでした。

 月の後半には、山田太郎文科政務官による不倫報道があり、また昨日は木村弥生前江東区長の公職選挙法違反容疑にからみ、柿沢未途法務副大臣が辞任するなどの動きがあったことから、今国会における岸田政権は、辞任ドミノの様相を呈しています。今後、さらに大臣級の辞任などがあれば、致命的な傷となる可能性があります。

 (新聞社などが行う世論調査の数字ベースで)一般的に内閣支持率は30%を切ると倒閣危険と言われ、20%を切ると倒閣は時間の問題とされますが、ANNで26.9%、比較的与党政権には優しい数字が出るとされる日経・テレビ東京の共同世論調査でも内閣支持率は33%と、厳しい状況にあることは変わりありません。

自民党支持の減少と、内閣支持の減少のかけ算

政党支持率、月次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用
政党支持率、月次、GS選挙調査センター「世論レーダー」より引用

 政党支持率も、自民党支持者が減少傾向にあることがわかります。無党派層が増え、自民党支持者が減っていることから、いわゆる「なんとなく自民党」層が無党派層に回帰していることが観測できます。国政選挙においては、内閣支持・与党支持者を固めて与党候補者の名前を書いてもらう、というのが一般的なセオリーです。本来であれば、与党支持者と内閣支持者はイコールの関係にあるべきですが、時の総理総裁に対する不満などもあり、必ずしも100%イコールにはならず、9割や8割になることもあります。直近ではこの数字が7割程度になることもあり、自民党支持の保守層の一部が、岸田内閣に対して支持しない傾向があることが読み取れます。さらに自民党そのものの支持者が減れば、衆議院小選挙区における自民党公認候補の戦いはダブルで厳しいものになります。

 ところが、自民党の下げ幅を無党派層がすべて吸収しているわけでもなく、国民民主党や「その他の政党」が吸収している傾向があることにも注目です。「その他の政党」はこれまで1%前後でしたが、9月以降急速に伸ばしてきた背景には「日本保守党」の存在が挙げられると考えられます。

 日本維新の会と立憲民主党の支持者は横ばい傾向が続いています。報道各社の調査では、立憲民主党の支持率が日本維新の会の支持率を上回ったとの観測もありますが、衆参補選で候補者を擁立できた立憲民主党と、擁立できなかった日本維新の会との差ともいえ、候補者擁立のスピードアップが日本維新の会には求められています。立憲民主党は、自民党支持層の減少にもかかわらず支持を広げられていないことから、無党派層へのアピールについて戦略を大きく変える必要があります。

解散総選挙の見通しは

 現実問題としてこれだけの低支持率では、解散総選挙は厳しいとみられます。すでに岸田首相の外交日程などから、年内の解散見通しはほぼ無くなったと考えられます。来年以降の解散総選挙は内閣支持率浮揚のきっかけがどこにあるかにもよりますが、現状ではかなり厳しい状況と言わざるをえず、もし仮に新たな総裁にむけて総裁選候補者が公然と語られるようなことあれば、解散総選挙をできずに総辞職という見立てもあります。

 ただ、現時点で総辞職に至るような「致命的で大きな失策があった」とも言いにくく、更に言えば野党が台頭してこない現状からも、与党内で「岸田下ろし」が始まるような状況でもありません。減税を含む経済対策を速やかにまとめることができるのかに加え、保守層を固めるための憲法改正論議を進めることができるかも、岸田総理が問われている課題です。

選挙コンサルタント・政治アナリスト

1988年生まれ。青山学院高等部卒業、青山学院大学経営学部中退。2010年に選挙コンサルティングのジャッグジャパン株式会社を設立、現在代表取締役。不偏不党の選挙コンサルタントとして衆参国政選挙や首長・地方議会議員選挙をはじめ、日本全国の選挙に政党党派問わず関わるほか、政治活動を支援するクラウド型名簿地図アプリサービスの提供や、「選挙を科学する」をテーマとした研究・講演・寄稿等を行う。『都道府県別新型コロナウイルス感染者数マップ』で2020年度地理情報システム学会賞(実践部門)受賞。2021年度経営情報学会代議員。

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