令和3年初となる大型選挙である岐阜県知事選挙が今日24日、投開票日を迎えます。昨年もみられた知事選挙の保守分裂構図が岐阜県でも再現され、特に現職の古田肇候補の陣営と新人の江崎禎英候補の陣営を中心に激戦を繰り広げています。投票日である今日までの古田・江崎両陣営の動きと選挙の行方、また保守分裂選挙が国政に与える影響について考えたいと思います。

国会議員の推す古田候補

 コロナ禍ということもあり、古田肇陣営は現職である候補者本人は街頭演説などは行わずに、県知事の職務に専念する形をとりました。ただし、組織選挙としての選挙カーは岐阜県内の各地域をまわり、国会議員の総支部を中心とした地域単位で本人不在での集会などを行っています。

 コロナ禍で本人不在という選挙は、昨年の熊本県知事選挙や東京都知事選挙でも現職候補が行ったものであり、特に目新しいものではありません。ただし、緊急事態宣言下における知事選挙となると別です。岐阜県知事選は7日に告示されましたが、同日に1都3県に対して緊急事態宣言が発出されると、それ以外の府県でも緊急事態宣言の発出を要請する声があがり、9日には古田知事は県独自の緊急事態宣言を発出、12日には愛知県知事と連携して国に緊急事態宣言の発出を要請して、翌13日に緊急事態宣言の発令が決定しました。緊急事態宣言は相応のインパクトがあることからも、(緊急事態宣言の目安となるステージに岐阜県は到達していましたが、)選挙戦との兼ね合いも考慮した発出要請だったのではないか、と見る声もあります。

 緊急事態宣言は、県民が外出を自粛したりイベントが中止になるなどの効果をもたらしますが、一方で現職の県知事としてコロナ対策に集中していることから、その職務が報道されるにつれて「コロナ対策に一生懸命である現職を落選させるようなことはよくない」という心理も有権者に働くことになります。また、記者会見などでメディアへの露出も頻回になりますが、コロナ禍が長く続いていることから、首長からの自粛要請などのメッセージに対して有権者である県民が飽き飽きする現状もあり、現状では緊急事態宣言が選挙戦に与えた影響は、(減少にとっては)一長一短といえるでしょう。

 選挙戦全体として古田候補は優位に進めていましたが、最終盤になって江崎候補が猛追しているとの情報なども出てきたことで、終盤戦にかけて野田聖子議員が演説に入るなど国会議員クラスの応援も本格化しました。当初はコロナ禍における現職の自粛選挙ムードで戦いきれると判断していた模様ですが、やはり終盤戦にかけて江崎候補との差が縮む状況から、国会議員のてこ入れが必要と判断されたのでしょう。

地方議員の推す江崎候補

 江崎禎英候補は、岐阜県議会議員の重鎮・猫田孝岐阜県連会長代行らを中心とした地方議員が陣営を支える構図で選挙戦を迎えました。猫田県議は岐阜県政では史上最多となる13回の当選を誇り、岐阜県だけでなく東海三県や永田町にも強い影響力を持つことで知られています。

 猫田氏は12月上旬の記者会見で、自ら退路を断つため「知事選に退路を断って臨む」と事実上の引退宣言までして選挙戦に臨む考えを示しました。13期当選で岐阜の「陰の知事」とまで呼ばれている猫田氏の発言が陣営の強力な推進剤となって、特に12月中旬以降、江崎陣営の猛追に繋がります。国会議員が推す古田候補と地方議員の推す江崎候補との二項対立がクリアになった12月中旬以降は特に態度表明をしていない地方議員や各種団体を中心とした切り崩し工作が本格化しましたが、猫田氏は自らこの切り崩しに積極的に関与しており、選挙戦への強い思いが垣間見えます。

 県内選出国会議員7人の中で唯一、江崎候補を推す大野泰正参院議員は、出陣式でも江崎候補の応援で「江崎さんは人を育て、能力を引き出すことができる人」と持ち上げるなど、積極的に江崎陣営に関与してきました。実質的な「野田対猫田」の代理戦争の様相をみせる岐阜県知事選挙において、地方議員と同調した大野泰正参院議員の動きが、知事選挙後どのようになるかも注目です。

新人候補が勝つためには、投票率を大幅に上げることが必要です。昨年、同様に保守分裂選挙となった末に新人が現職に勝った富山県知事選挙では、投票率(60.67%)が前回投票率(35.34%)から大幅に伸びました。岐阜県知事選挙も前回投票率(36.39%)が低いことから、今回の投票率を大きく上げるため、主に集会と電話作戦での投票促進運動が行われています。

衆院選・岐阜市長選への影響は

岐阜駅前に設置された岐阜県知事選挙の投票を呼びかける選管ののぼり旗=筆者撮影
岐阜駅前に設置された岐阜県知事選挙の投票を呼びかける選管ののぼり旗=筆者撮影

 保守分裂選挙は最終盤の各紙報道では、「古田氏リード、江崎氏が追う展開 岐阜県知事選情勢調査」(岐阜新聞)など、現職がリードし新人が追いかける展開とされ、今週末は未決定層の多い都市部である岐阜市を中心に最後まで激戦が繰り広げられました。

 さて、今後はどうなるでしょうか。知事選挙で仮に古田候補が勝利すれば、岐阜県の国会議員団にとっては安堵となる一方、僅差の決着となれば、国会議員のほとんどを相手に回した上でも善戦したことが、猫田県議の影響力は健在との評価に繋がる可能性が高いでしょう。コロナ禍という特殊事情を鑑みれば、タイミングが悪かったというコンセンサスに繋がることも考えられます。また、江崎候補が勝利すれば猫田県議の影響力はやはり大きいという評価に繋がる一方で、たとえば小選挙区での保守分裂というような今年の衆院選に直接的な影響に即座につながるとは考えにくい状況です。岐阜県は小選挙区では自民党議員がいずれも盤石であることを考えれば、今回の知事選挙が即座に岐阜県内の衆院選に与える影響は少ないとみて間違いないでしょう。

 一方、来年1月にも行われる予定の岐阜市長選挙への影響は未知数です。今回、現職の柴橋市長は、コロナ対策でも連携する古田知事の応援を表明しました。一方、前回市長選では猫田氏らが若手擁立を焦り、自民党岐阜市議団らとの調整に失敗し、結果的に自民党推薦候補者が敗北する経緯がありました。柴橋市長の市長選再出馬は確実視される一方で、対抗馬として猫田氏らが再度若手を擁立するようなことがあれば、やはり「野田対猫田」の代理戦争が来年またも勃発することになります。いずれにせよ、今回の岐阜県知事選挙の結果が大きな命運を分けそうです。

 なお、岐阜県知事選挙にはこのほか、日本共産党推薦で新人の稲垣豊子候補(69)、元県職員で新人の新田雄司候補(36)も立候補をしており、今日24日の20時まで投票を受け付けています。

 (1/24 20:15 追記)地元CBCテレビは、現職の古田肇候補に当確を出しました。