特別な機材不要で会場を下見できる

全国の自治体で取り組みが進む新型コロナウイルスのワクチン接種。医療従事者に続き、5月からは75歳以上の高齢者による集団摂取も始まった。その後も、より広い世代の摂取が予定されている。そこで懸念されるのが摂取会場での誘導や三密対策だ。一度に会場に入れる人数を制限するなどの対策が取られているが、事前に会場内の様子や導線が確認できれば、より効率的な摂取が可能になるだろう。

こうした中、バーチャルリアリティ(VR)技術を活かして、興味深い取り組みが見られはじめた。ワクチン接種会場を専用カメラのMatterport(マターポート)で撮影し、体験型のVRコンテンツに加工して、自治体のホームページなどで公開するというものだ。VRコンテンツにつきもののVRヘッドセットなどは不要で、PCやスマートフォンのブラウザだけで再生できる。

5月の東京都港区の7会場に続き、6月からは東京都小平市の2会場で公開が始まった本施策。実際に小平市の会場に足を運び、違いや効果について確認してみた。

文化学園大学小平キャンパス(体育館会場、筆者撮影)
文化学園大学小平キャンパス(体育館会場、筆者撮影)

体育館会場の3D-VRコンテンツ(3D-VRコンテンツをキャプチャ)
体育館会場の3D-VRコンテンツ(3D-VRコンテンツをキャプチャ)

体育館会場のワクチン接種風景(筆者撮影)
体育館会場のワクチン接種風景(筆者撮影)

摂取会場と動画内容を比較してみる

東京都小平市の集団接種会場は文化学園大学小平キャンパスの体育館と校舎の二箇所だ。体育館会場では間仕切りを設置し、校舎会場では建物の構造を活用するなどして、簡易の摂取場所を作成。ともに地面にビニールテープで進行方向を示したり、立て看板を設置するなどして、迷わずに進めるように工夫されていた。筆者が取材に訪れた5月30日は週末で好天に恵まれたにもかかわらず、かなり会場内に余裕があり、予約段階から三密対策に配慮されていることが伺えた。

その後、6月3日に公開された3DーVRコンテンツと見比べてみた。会場内で撮影された動画素材をベースとしており、内容はリアルそのもの。会場の入り口から出口まで、ワクチン摂取の流れが自動で再生されるため、リンクを開くだけで誰でもコンテンツが体験できる。自動再生だけでなく、画面をタップするなどして、自分で会場内を移動したり、説明書きを読んだりすることも可能だ。これを事前に視聴していれば、よりスムーズに摂取できるように感じられた。

もっとも、現在は接種対象が高齢者のため、本コンテンツを事前に視聴して接種に臨む人は少ないだろう。接種対象が拡大するにつれて、本コンテンツによる「予習」効果が高まっていくのではないだろうか。

校舎会場の3D-VRコンテンツ(3D-VRコンテンツをキャプチャ)
校舎会場の3D-VRコンテンツ(3D-VRコンテンツをキャプチャ)

校舎会場のワクチン接種風景(筆者撮影)
校舎会場のワクチン接種風景(筆者撮影)

全国の接種会場に拡大することを期待

本コンテンツを作成したのは都内でソリューション開発事業などを手がける、IT企業のハートコア株式会社だ。博物館などの公共施設をVRコンテンツ化し、ブラウザ上で公開するなどの取り組みは他でも見られるが、同社では音声や画像の埋め込みや、外部サイトに顧客を誘導するためのリンクを設置するなど、独自の付加価値を提供している。コロナ禍における大学のオープンキャンパスむけコンテンツや、オンライン上でのVR展示会など、さまざまな用途で導入が進んでいる。

同社ではこのたび社会貢献活動の一環として、新型コロナウイルスのワクチン接種会場をVRコンテンツ化することを発案。無償でコンテンツの製作を行った。会場の広さや内容にもよるが、撮影自体は1時間未満ですみ、2週間程度で納品可能だという。同社は「来場される方々が事前に接種会場の動線や、ワクチン接種までの手順を確認することができれば、当日の不安や困惑を最小限に抑えることができ、ワクチン集団接種当日をよりスムーズに実施することが可能となります」とコメントしている。

今回の事例は社会のデジタルトランスフォーメーション(DX)化が進む中、IT企業ならではの社会貢献という点で、興味深い取り組みだと言えるだろう。こうした取り組みが全国のワクチン接種会場で進み、ワクチン接種の効率化や迅速化につながることを期待したい。

VR360による3D-VRコンテンツ対応会場一覧

東京都小平市

体育館会場 校舎会場

東京都港区

みなとパーク芝浦 生涯学習センター 西麻布いきいきプラザ 高輪区民センター

国際福祉医療大学 赤坂キャンパス 東京慈恵会医科大学附属病院

赤坂区民センター