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台風の停電時は寝るしかないのか  薄明りでもできる「新作・手延べそうめん」の提案   

奥田和子甲南女子大名誉教授、日本災害救援ボランティアネットワーク理事
買って来た食品で色々と作ってみた。(筆者撮影)

去る9月、台風21号が猛威をふるい長時間停電になった。なにかやろうとしたがすべて不可能。電気の影響はさすがに大きい。けっきょく寝るしかなかった。まだ夏のさかりで冷房が使えなかったのは辛かった。あれから停電の時に何をしたらいいのか、わたしは本気で考えた。思いついたのが「新作・手延べそうめんづくり」だ。

9月末、また大型台風24号がまたやってきた。ニュースを聞いた直後、わたしはすぐさま買い物に出かけた。カップ麺やおにぎりの爆買いではない。手作りそうめんに練り込む加工食品を探すためだ。店の食品棚で使えそうな食材をいくつか選び、実際に食べたことがない自分好みの新作・手延べそうめんの創造に向けて出発する。

 さて、予想通に台風24号が列島を駆け抜けた。おそらく夜半は停電になるだろう。念入りに準備をした。

ラーメン鉢に小麦粉(50g)、その半量の水(25g)、塩一つまみ入れ、買って来た食品(図)を適宜加え(粉末の場合は振り入れ、ペースト状の場合は加える水を減らす)スープ用スプーンで混ぜる。次に団子状になるまで手でよくこねラップに包んで寝かせる。30分おきに団子をこねて寝かせこれを何回か繰り返す。団子がよく伸びるようにするためだ。テーブルの上に平らに薄く(3m位)延ばし、5mm幅に切る。

台風が音を立てて家を揺さぶるさなか、わたしはひも状の生地を手のひらにはさみ、縒(よ)りをかけながら細く長く伸ばし、そうめんの形を整えた。18cmの長さに切そろえて切れば終わりである。

なぜ、うどんやそばではなく「手延べそうめん」か、その深いわけを述べたい。

1 手のひらで粘土細工のようによりをかけて引き延ばすので、とくに道具が不要。

2 停電で代用の懐中電灯の薄明りでもできる。手がそうめんの太さを感知しているからカン(・・)が働く。

3 細いので、熱湯に入れると3分間で煮あがる。災害時、時間、燃料、水が節約できる。

4 いろいろの加工食品を練り込むので、多様な風味、色合いのそうめんが楽しめ飽きない。

5 停電という無力な時間が創造的で意欲的な時間に変わり、不安が消えて憩いになる。

6 もし家族が一緒なら、各自の好みのそうめんをつくることができ関係が深まる。

まだまだ創造をかりたてる練り込み用の加工品は多い。ぜひ災害時に生まれた予期せぬ時間を有効利用してみてはどうか。爆買いの行列に加わり待ち時間を浪費するより、自分好みの食事が楽しめ、手指を動かし続けることで手のひらの血行がよくなり脳の活性化にもつながるかもしれない。なにより不安が解消できる。

ただし、停電中に浸水、土砂崩れなど予期せぬ災難が待ち構え避難勧告などがでている場合はこの限りではない。一刻も早い避難を勧める。これはあくまでもゆとりがある場合に限っての提案である。

甲南女子大名誉教授、日本災害救援ボランティアネットワーク理事

専門は食生活デザイン、食文化、災害・危機管理と食、宗教と食。広島大学教育学部卒業。大阪市立大学学術博士取得。米国カリフォルニア大学バークレー校栄養学科客員研究員、英国ジョーンモアーズ大学食物栄養学科客員研究員、甲南女子大学人間科学部人間環境学科教授を経て、現職に至る。「震災下の食―神戸からの提言」(NHK出版)、「働く人たちの災害食―神戸からの伝言」(編集工房ノア)、「和食ルネッサンス『ご飯』で健康になろう」(同時代社)、「箸の作法」(同時代社)、詩集など著書多数。

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