7月18日から東京ドームで行われる『第93回都市対抗野球大会』。3年ぶりの夏開催で、3年ぶりに“都市対抗の華”と呼ばれる応援合戦も復活します。既に各地区の2次予選で応援があったものの、やはり本大会は別格でしょう!

 社会人1年目で本大会を経験する三菱重工Westの金田和之投手(31)は、その応援合戦が楽しみな様子でした。初出場のロキテクノ富山・藤田太陽監督(42)も、選手とともにしっかり味わって来てほしいですね。

 でも残念ながら、ここでいつも取り上げている阪神OBたちの中で福間納監督(70)と藤井宏政助監督(32)のカナフレックス、阪口哲也コーチ(29)のいるパナソニックが本大会出場を逃しています。

 石井将希投手(26)が加入したエイジェックは昨年初出場を果たしたのですが、2年連続とはならず。同じく、元オリックス・武田健吾選手(28)が入った三菱重工Eastも予選で姿を消しました。

 しかし、都市対抗には“補強”というシステムがあります。

 武田健吾選手は同じ西関東地区・ENEOSの補強選手に選ばれました。おめでとうのメールを送ったら「頑張ってきます!」という返事。たとえENEOSのユニホームでも、かけがえのない経験になるはずです。

 近畿では都市対抗に6年連続55回も出場していたパナソニックだけでなく、全国で歴代最多の62回出場を誇る日本生命も予選敗退。よって日本生命から、5代表すべてに計10選手が補強されています。

 パナソニックからも、榎本亮投手がNTT西日本、與座健人投手がミキハウス、横田拓也内野手が大阪ガスの補強選手に選ばれました。

 2日のニチダイ戦が終わった時、パナソニックの片山勢三選手が「横田さんは10年目なので、10年表彰に自チームで行かせたい!」と力を込めていたのが印象的でした。自チームで、という願いはかなわなかったけれど、横田選手は東京ドームで10年連続出場選手表彰を受けることになります。

※昨年9月27日の都市対抗野球近畿地区第二次予選、三菱重工West戦で、試合前のシートノックでノックをする阪口コーチ。
※昨年9月27日の都市対抗野球近畿地区第二次予選、三菱重工West戦で、試合前のシートノックでノックをする阪口コーチ。

55回出場を誇るパナソニックが…

 きょうは、まさかの予選敗退となってしまったパナソニックの近畿地区二次予選を振り返ります。

 1回戦から、敗者復活の第4代表決定トーナメント4回戦まで、計5試合のうち2試合が完封負けでした。それ以外の3試合は1戦目が5安打5得点(5打点)、4戦目が9安打 3得点(打点2)、5戦目は5安打2得点(打点0)です。

 タイムリーヒットが出たのは1戦目だけで、4戦目は2点とも犠飛、5戦目は相手エラーによるものです。そして放った28安打すべてが単打か内野安打で、長打は1本もありません。

 そんな苦しい戦いが続いていても、第5代表までには入るだろうと思っていたので、私もぼう然としました。本大会出場を逃したのは、ちょうど阪口コーチが選手として入った2015年以来ということですね。

 なおコメントは試合後に現場で行われた囲み取材と、予選終了後に改めて聞いたものを合わせ編集しているため、時系列でないところもあります。ご了承ください。

サヨナラ勝ちした2試合とも課題は山積みでしたが、それでも「勝って反省できることのありがたさ」を阪口コーチは口にします。これは6月2日のニチダイ戦が終わったところ。
サヨナラ勝ちした2試合とも課題は山積みでしたが、それでも「勝って反省できることのありがたさ」を阪口コーチは口にします。これは6月2日のニチダイ戦が終わったところ。

◆粘り粘ってのサヨナラ勝ち!

 1回戦はクラブチームの強豪である大和高田クラブが相手。土壇場で2度追いついたパナソニックがサヨナラ勝ちしました。

《都市対抗 近畿地区第二次予選》

◇1回戦 (5/24)

 大和高田クラブ-パナソニック

  大和 000 002 000 20 = 4

  パナ 000 000 002 21x= 5

    ※延長10回からタイブレーク

  ▼バッテリー

  【大和】黒岩-松林-金村 / 安岡

  【パナ】井奥‐與座-勝田-鈴木-北出 / 三上

  ▼二塁打 大和:西浦

《試合経過》※敬称略

 先発はパナソニックがルーキー・井奥で、大和高田クラブは昨年までカナフレックスにいた黒岩。互いに5回まで無失点の投げ合いだったのですが、6回に井奥は遊ゴロと中前タイムリーで2点を失います。以降も継投で追加点を与えず。

 ただ打線は黒岩の前に8回まで2安打無得点で、9回も簡単に2死を取られました。しかし、そこから代打・田中と植田が連続四球を選び、暴投で2死二、三塁となって黒岩は降板。代わった松林から3番・三宅が右前に2点タイムリー!同点で延長戦突入です。

9回裏2死二、三塁で三宅浩史郎選手が右前タイムリー!
9回裏2死二、三塁で三宅浩史郎選手が右前タイムリー!

三塁の阪口コーチは手を回し、その前を二塁走者の植田勝至選手も通過。見事ホームインして2対2に追いつきます!
三塁の阪口コーチは手を回し、その前を二塁走者の植田勝至選手も通過。見事ホームインして2対2に追いつきます!

 延長10回以降はタイブレークで無死一、二塁からのスタート。投手は北出。まずバントで三塁をアウトにするも、次はヒットで一、三塁。続く二ゴロで併殺を狙った送球が逸れ2人生還。また勝ち越されました。

 でもあきらめなかったパナソニック。その裏は途中出場の稲村を二塁に、藤井を一塁に置き、法兼が犠打で1死二、三塁として2死後、9回から出場の松根が中前打を放ち、稲村に続いて藤井もホームイン!もう一度追いつきます。

10回裏2死二、三塁で松根優選手が中前タイムリー!
10回裏2死二、三塁で松根優選手が中前タイムリー!

稲村晃希選手に続いて藤井選手も生還!またまた4対4の同点になりました。
稲村晃希選手に続いて藤井選手も生還!またまた4対4の同点になりました。

 4対4の11回、続投の北出が先頭に大きな当たりを打たれるも、10回からセンターに回った藤井が好捕!三者凡退に切って取った、その裏に植田の犠打は失敗で1死一、二塁となりますが、2死後に横田が四球を選んで満塁として稲村が左前タイムリー!

 全得点を9回以降に挙げたパナソニックのサヨナラ勝ちでした。

北出浩喜投手が11回表を三者凡退に切って取ると…
北出浩喜投手が11回表を三者凡退に切って取ると…

その裏に2死満塁として、稲村選手が左前タイムリー!
その裏に2死満塁として、稲村選手が左前タイムリー!

土壇場で追いつき、勝ち越されてもまた追いついて、最後はサヨナラ勝ち!心底嬉しそうな顔でハイタッチしていますね。
土壇場で追いつき、勝ち越されてもまた追いついて、最後はサヨナラ勝ち!心底嬉しそうな顔でハイタッチしていますね。

今までなら負けていた試合

 田中篤史監督(41)は、追い込まれてからの粘りに「絶体絶命のところからですよね。今までの我々だったら、そのまま負けていました。あそこで追いついたのは1つ力がついたのかな」と振り返っています。

 ルーキー・井奥勘太投手(22)の先発指名は「予選がどんなものか経験していない分、怖さを知らないので、よくも悪くも思い切っていけるんじゃないかと期待して」とのことです。

 「もちろん榎本、與座というのが主戦でいるんですけど、新人ながら井奥もそこに割り込む力が十分あると、この春先から見せてくれたので自信を持って送り出しました」と田中監督。期待に応える内容ですね。

「この試合、今までなら2対0のまま負けていたかも」と振り返るパナソニックの田中篤史監督。
「この試合、今までなら2対0のまま負けていたかも」と振り返るパナソニックの田中篤史監督。

“先発で負けない”ルーキー

 その井奥投手は天理大学時代、阪神ファームとの練習試合でも2度投げました。3年生だった2020年8月14日は、先輩・森浦大輔投手(現広島)のあとを受け、7回から登板して3イニングを1安打無失点。そして4年生になる2021年の3月6日は先発で5回5安打2失点という結果です。

 あれから約1年2か月、社会人となった井奥投手の試合後のコメントをご紹介しましょう。

 初めての都市対抗予選、しかも初戦で先発。告げられた時の気持ちは?「JABA大会も2試合で先発させていただいて2勝できて、投げることに不安はないので特には。いい先輩方、いいピッチャーがたくさんいる中で自分を指名してもられたのは嬉しかったです」

 プレッシャーよりも「来年の10月にはドラフトで選ばれたいので。無理にアピールする必要はないですが、欲しいと言ってもらえるようなパフォーマンスをするには、こういう舞台で投げないといけない」と思ったそうです。だから「先発を任せてくれた監督に感謝しています」と。頼もしいルーキーです。

 7回からはベンチで応援?「はい。負けないと思っていました。僕、大学2年の春に1敗したんですけど、公式戦はそれ以来負けていないというのをトレーナーさんに言ってもらったんです。『だから絶対負けへん!』って。本当に追いつきました」とニコニコ。

 “負けない井奥”ですね?「すごい球を投げるわけじゃないんですけど、その闘志で」。そう言ったあと「あ、でも神宮大会は5回くらいから投げてサヨナラ負けしたので…(黒星が)ついていますね」と自己申告してくれたけど、リリーフなので除外しましょう。

 ちなみに次の先発だったニチダイ戦でも、同点でマウンドを降りた後にチームはサヨナラ勝ち!この日もしっかりゲームを作り、逆転勝利に貢献したわけです。負けない井奥投手、持っていますね。

5月24日の初戦で先発したルーキー・井奥投手。写真は6月2日のニチダイ戦のものです。
5月24日の初戦で先発したルーキー・井奥投手。写真は6月2日のニチダイ戦のものです。

盛り上げ役は任せて!稲村選手

 延長11回に試合を決めた稲村晃希選手(25)は、サヨナラ打の手応えを聞かれ「手応え?めちゃくちゃ悪かったですねえ(笑)。どん詰まり!でも振ったので、いいところに落ちてくれました」と明るい返事。

 その前の10回、タイブレークの走者として出てのホームイン後、打った人よりも派手なガッツポーズでしたねと言ったら「あははは!」と笑って続けます。「キャラ的にも結構、盛り上げようと思っているので、なるべくそういうところでチームが盛り上がればいいなと」

 また「井奥がいいピッチングをしていたし、監督からも『先輩たちが頑張ってやらなあかんぞ』という話もあって、助けるためにも全員で頑張りました!」と誇らしげで、どこかホッとしたような様子です。

延長11回、三塁の田中宗一郎選手がホームを駆け抜けて、サヨナラ打の稲村選手(中)は勝利の雄叫び!
延長11回、三塁の田中宗一郎選手がホームを駆け抜けて、サヨナラ打の稲村選手(中)は勝利の雄叫び!

頼もしさが増した阪口コーチ

 最後までわからない試合でしたが、阪口コーチは「勝って反省できたので、よかったです」いう、いつもの言葉。負けた時に「勝って反省したかった」と、よく言っていますね。

 勝因の1つとして、延長11回に藤井健(つよし)選手がセンターフライをつかんだところも挙げられるのでは?「ナイスプレーです!マジで。あそこはノーアウト一、二塁で外野を前にしていたんですよ」。そう、前進守備の場面ですからね。いや~よく捕りました!

 そして、その裏に打った稲村選手はすごく気持ちが前面に出るタイプ?「はい、それが取り柄です」。やっぱり(笑)。9回に追いついた時もヒーロー並みのガッツポーズだった。「そうやって、みんなの活躍を喜べるヤツなんですよ。チームのために頑張ってくれるんで」

 こうやって若い選手のことを語る阪口コーチ、なんだか大人になったなあと思っちゃいました。すると「稲村は僕と会社でも同じ部署なんですよ。あ、関係ないか」と自分で突っ込んだあと「いいヤツです!」と。こういうところは変わりませんね。

 ところで、今までなら2対0のまま負けていたと田中監督が。「チームとしても何か変えていかんとあかんなというところだったので、その何かが結果として出せてよかったです。いろいろ課題は出ましたけど、勝ちゃいいです。勝って反省です」

タイブレークの10回と11回を投げた北出投手。サヨナラで勝利投手となりました。
タイブレークの10回と11回を投げた北出投手。サヨナラで勝利投手となりました。

信頼で結ばれた同期の絆

 阪口コーチと同い年で同期の北出浩喜投手(29)にも聞きましょう。エラーによる失点だし、そもそもタイブレークなので自責はつかないけれど、10回の2失点は痛かったかと尋ねたら「痛い!だいぶ痛い!」と即答。でも11回は3人で抑えてサヨナラにつなげましたね。

 「いや~もう全部、藤井健くんのおかげです!記録に残らない一番のファインプレーでしょう。記録上はただのセンターフライとしか書かれない、見ていた人にしかわからないことですけど。あ、来ました!」

 登場したのが、やはり同い年で同期の藤井選手(29)。3人揃いましたね。藤井選手にファインプレーの解説をお願いします。

10回裏、松根選手の中前打で二塁から生還した藤井選手。頭から突っ込んで、もう泥んこですね。
10回裏、松根選手の中前打で二塁から生還した藤井選手。頭から突っ込んで、もう泥んこですね。

そして11回、試合が結してネクストでご覧のポーズ。ヒットこそなかったものの、藤井選手は守備と走塁で貢献しました。
そして11回、試合が結してネクストでご覧のポーズ。ヒットこそなかったものの、藤井選手は守備と走塁で貢献しました。

 「あれはもう入っていましたねえ!よかったです。打った瞬間は無理やと思ったんですよ。前進守備やったし、きついなと。でも目を切って思い切り走ったら『うわ!ギリギリいける?』って。それで『頼む、入ってくれ!』と伸ばしたグラブに入って、ああ~よかった!という感じでした(笑)」

 自分でも一か八かの?「そうです!」。直後の10回裏には、松根優選手の中前打で二塁から生還しました。藤井選手は「あれもギャンブルですね、哲(阪口コーチ)と2人の」と言い、阪口コーチは「もうアウトになったら試合が終わるんで」と引き取ります。

 さらに藤井選手いわく「行くしかないっていう状況でしたね。流れが、きゃんさん(三上選手)が三振した時点でちょっとまずいなという感じになったんで『1本出たら回るよ!』くらいの感覚です。どんな打球でも回るよ、と。だから打った時に三塁コーチを見るより、もう回っていた」そうです。

 そこはもう阿吽の呼吸?「まあまあ、その前から合わせていたんで。哲とは」。選手とコーチに立場は分かれたものの、同い年でともにパナソニック8年目。目を見れば、いや見なくてもわかってしまうんでしょうか。

昨年11月、都市対抗出場を決めた試合後のパナソニック同期4人衆。後列左が藤井選手、右が阪口コーチ。前列は左が北出投手、右が目をつぶっちゃっていますが榎本投手です。
昨年11月、都市対抗出場を決めた試合後のパナソニック同期4人衆。後列左が藤井選手、右が阪口コーチ。前列は左が北出投手、右が目をつぶっちゃっていますが榎本投手です。

◆勢いに乗れず…連続完封負け

 2日後の準決勝はNTT西日本と対戦しています。阪口コーチと同期の榎本亮投手(29)が先発して6回まで無失点。7回にソロホームランを浴びたものの、7回5安打1失点の好投です。しかし打線が援護できずに完封負けを喫しました。

《都市対抗 近畿地区第二次予選》

◇準決勝 (5/26)

 NTT西日本-パナソニック

  NTT 000 000 100 = 1

  パナ 000 000 000 = 0

 ▼バッテリー

  【NTT】田村-大江 / 辻本

  【パナ】榎本-鈴木 / 川上-三上

 ▼本塁打 NTT:山田ソロ(榎本)

NTT西日本戦の先発は榎本投手。写真は6月2日、ニチダイ戦のマウンドです。
NTT西日本戦の先発は榎本投手。写真は6月2日、ニチダイ戦のマウンドです。

 敗者復活の第3代表決定トーナメントへ回ったパナソニックは、その1回戦で日本生命に完封負け。投手陣は計14安打で8点を失い、打線は先発・吉高壯投手らに3安打と抑え込まれています。

《都市対抗 近畿地区第二次予選》

◇第3代表決定トーナメント 1回戦 (5/31)

 日本生命-パナソニック

  日生 004 010 111 = 8

  パナ 000 000 000 = 0

 ▼バッテリー

  【日生】吉高-喜多川-本田 / 立松

  【パナ】與座‐城間-柏野-北出-鈴木 / 久保田

 ▼本塁打 日生:廣本3ラン(與座)

 ▼二塁打 日生:藤本、船山

日本生命戦で先発した與座投手。写真はその2日後、ニチダイ戦でリリーフ登板したところです。
日本生命戦で先発した與座投手。写真はその2日後、ニチダイ戦でリリーフ登板したところです。

◆またもやサヨナラゲーム!

 今度は第4代表決定トーナメントへ回り、ここで2つ勝って準決勝まで行けなければ、もう敗者復活がありません。まさにあとがなくなった状況です。でも、この日は“先発で負けない”井奥投手。またしてもサヨナラを呼んでいます!

 3対2というスコアですが、ともに自責は1点ずつ。パナソニックは3失策で、最後の決着もニチダイのエラーによるものでした。

《都市対抗 近畿地区第二次予選》

◇第4代表決定トーナメント 3回戦 (6/2)

 ニチダイ-パナソニック

  ニチ 000 010 001 = 2

  パナ 000 010 002x = 3

 ▼バッテリー

  【ニチ】戌亥-吹本-山下 / 池田

  【パナ】井奥-與座 / 三上

 ▼二塁打 ニチ:道井2、池田

《試合経過》※敬称略

 先発の井奥は1回を除いて毎回ヒットを許す投球ながら4回までは無失点でしたが、5回は先頭の8番・池田に二塁打を浴び、続く犠打でファーストの送球エラーがあり、一気に池田を還します。

 パナソニック打線も同じく、毎回ヒットを打ちながら得点なし。しかし先制を許した直後の5回裏、先頭の9番・松根がなんと17球も粘って四球を選び、捕逸で二塁へ。上田の犠打で1死三塁として植田が中犠飛!すぐに追いつきました。

 ただ、そのあとは両チームとも追加点がなかなか奪えません。6回からパナソニックは與座が登板し、8回まで1安打のみで抑えます。でも打線が6回以降も毎回ランナーを出し、8回には3番・三宅のヒットと2四球で2死満塁としながら、あと1本が出ず…。

 1対1のまま迎えた9回、與座は先頭に内野安打とショートのエラーで二塁へ進めると犠打、四球、さらに盗塁で1死二、三塁として、池田がスクイズ!土壇場で勝ち越しを許してしまいます。

 そして9回裏、先頭の代打・藤井が中前打を放ち、上田は犠打。ついで代打・横田が左前打で1死一、三塁、続く三宅が左犠飛!同点となって4番・片山が2ボールから3球目を打って中前打、さらにセンターのエラーで横田は一気に生還!またしてもサヨナラ勝ちです。

9回1死一、三塁で三宅選手が左犠飛!これで同点となり、サヨナラ勝ちへつながります。
9回1死一、三塁で三宅選手が左犠飛!これで同点となり、サヨナラ勝ちへつながります。

ちなみに5月24日の大和高田クラブ戦でも9回に同点打を放った三宅選手。二塁上で満面の笑みを浮かべた、この写真もどうぞ。
ちなみに5月24日の大和高田クラブ戦でも9回に同点打を放った三宅選手。二塁上で満面の笑みを浮かべた、この写真もどうぞ。

監督が信じた「5年目以上の力」

 試合後、片山勢三選手(26)は「気合と根性、意地と4番のプライドを持って打席に立って、その気合が向こうのエラーにつながったのかなと思います。外野オーバーで一塁ランナーも還してやろうという気持ちで思いきり狙いました」と殊勲の打席を振り返ります。

 それから「ちょうど監督から5年目以上の選手を集めて『お前らの力が必要やぞ』と言われて、その翌日の最終回に5年目以上が打った!」と目を丸くする片山選手。へえ~そんなことがあったとは!

 確かに8年目の藤井選手と10年目の横田拓也選手が連打でチャンスを作り、最後に決めたのは5年目・片山選手でした。

 これまで監督から、そういう話は?「初めてですね。ちょっとカツを入れられたというか。ここからは経験がものを言う。生かしていかないと、と言われました。スイッチはもともと入っていたけど、改めてギアチェンジですね」

 昨年は2度の骨折で、ほとんど試合に出られなかった片山選手。昨オフは「体重管理を改めてやりました。監督から『105キロを超えたら試合には出さない』と言われたので、キャンプ中に105キロに落として、今は102とか103ぐらいをキープしています」とのこと。

 8キロも減量したら結構動ける感じ?「全然違いますね。きつかったですけど。キャンプで宮崎に行っても病院食みたいなものしか食べられなくて(笑)」。こうやって囲み取材を受けるのも久々だったそうで、記者陣も笑顔がこぼれるひとときでした。

延長11回、片山選手の中前打でエラーがあり、結果サヨナラ勝ちしました。写真は8回に犠打を決めて戻るところ。
延長11回、片山選手の中前打でエラーがあり、結果サヨナラ勝ちしました。写真は8回に犠打を決めて戻るところ。

◆最後は粘り切れずに敗れる

 結果的に最後の試合となった日本新薬戦は、終盤の3イニングで計6点を奪われて逆転負け。7年ぶりに本大会出場を逃しました。先発は榎本投手です。

《都市対抗 近畿地区第二次予選》

◇第4代表決定トーナメント 4回戦 (6/3)

 日本新薬-パナソニック

  新薬 010 000 132 = 7

  パナ 000 002 000 = 2

 ▼バッテリー

  【新薬】小松-斎藤-西川 / 千葉

  【パナ】榎本‐與座-鈴木-北出-城間 / 三上

 ▼本塁打 新薬:大石ソロ(榎本)

 ▼三塁打 新薬:若林、武田

 ▼二塁打 新薬:若林

《試合経過》※敬称略

 2回にホームランで1点を失ったものの、以降は要所を締めて無失点。パナソニックの方もやはり散発ながらヒットを打ちますが、同じく決定打を欠いて得点できません。しかし6回、榎本が初めて三者凡退で終えると、その裏に打線が反撃しました。

 1死から片山が右前打、小峰の二ゴロで送球エラーがあり1死二、三塁。田中の一ゴロはバックホームされて…と思いきや送球が逸れて2人生還!2対1と逆転です。

 ところが7回に榎本が1死三塁となって降板。代わった與座は遊ゴロの間に1人還して追いつかれ、8回には鈴木が2四球と1安打で満塁とし、走者一掃のタイムリー三塁打。

 さらに9回は北出が2安打で1点を失い、あとを受けた城間もタイムリー三塁打を浴びました。7回以降、チャンスを広げられなかった打線。7対2で試合終了です。

この試合の8回に登板した鈴木佳佑投手。
この試合の8回に登板した鈴木佳佑投手。

同じく9回2死で北出投手をリリーフした城間竜兵投手。
同じく9回2死で北出投手をリリーフした城間竜兵投手。

どこか吹っ切れなかった戦い

 田中監督は試合後に「初戦から終始、硬い感じというか消極的な野球になってしまって、どこかで吹っ切れることを期待したんですけど。選手も一生懸命やったので、そういうふうに仕向けられなかったのは私の反省でもある」と話しています。

 それから「(都市対抗出場を)落としたってのは、いけないこと。会社にとってもマイナスですし。そこをどう立て直すか…。頑張ります」と言い、連続出場が途絶えてしまったことには「本当にもう残念というか、申し訳ないです」と言葉少なでした。

 主将の法兼駿選手(27)もしかり。「やっぱり序盤のチャンスをものにできなかったことが…。また僕が何度かあったチャンスで1つでも点を取れていれば、また違ったかなと思います」と猛省。

打線は6回、1死二、三塁で田中選手の打球をファーストがホームへ悪送球。このエラーで2点取り、一時は逆転に成功しました。
打線は6回、1死二、三塁で田中選手の打球をファーストがホームへ悪送球。このエラーで2点取り、一時は逆転に成功しました。

これで生還した片山選手(左)と小峰聡志選手(右)もご覧の笑顔。
これで生還した片山選手(左)と小峰聡志選手(右)もご覧の笑顔。

◆応えたい鳥谷コーチの教え

 ところで、昨シーズンをもって引退した鳥谷敬さん(41)がパナソニックとコーチ契約!というニュースが3月に出たのはご存じでしょう。すべての試合や練習に帯同するわけではありませんが、既に指導は行っています。その“鳥谷効果”について話を聞いてみました。

 田中監督は「(効果が)出ていると選手は感じ、僕自身もそう見ています。鳥谷氏の顔に泥を塗るわけにはいかないので、それをしっかり生かさないと。結果として今回(本大会に)出られないのは泥を塗っちゃったのかなと思うんですけど。まあこれからです。確実に影響は受けています」と話していました。

 また「僕らにはもったいないくらい、いいことを聞かせてもらっていますが、試合で形になるまではまだ時間がかかるかも」と冷静なコメントだったのは法兼選手

試合終了後の挨拶で整列する田中監督と法兼主将。
試合終了後の挨拶で整列する田中監督と法兼主将。

 阪口コーチは「練習の時や試合にも来てもらって、バッティングも守備も全部教えてくれます!」とニコニコ。自分でやって見せてくれることもありますか?「はい。それに何か聞いたら答えてくれますし」。やっぱり嬉しそうです。

 そう言ったら「嬉しいというか、ありがたいです」とのこと。そうなんですね。「鳥谷さんは全体を見てくれる感じがします。いろんな考え方を教えてくれる。選手だけじゃなくて、コーチにも」。それはありがたいでしょう。

 「鳥谷さんが、鳥谷さんは」と連呼するので、現役時代の接点を聞いたら「現役の時はしゃべったことがなかったんですよ。納会で挨拶するぐらいで」と。納会って…年に一度?それだけに今、目に前で話が聞ける貴重な時間を無駄にするまいと阪口コーチも一生懸命です!

 ちなみに、そばにいた北出投手の鳥谷コーチ評は「イケメンです」でした。

 稲村選手に聞いてみると「僕は個人的にも教えてもらいましたし、みんなバッティングのアドバイスを聞きにいったりして、それぞれ引き出しは増えていると思います」という返事。

 たとえばどんなことか、聞いてもいいですかね?と言ったら、ちょっとだけ小さな声になり「僕はインコースの打ち方を聞きました。どうすれば打てるかと。意識の問題なんですけど、懐を広げるという感じで」と教えてくれました。

 自分から聞きにいく?「はい。みんなそれぞれ聞きにいっている感じですね。メッチャ教えてくれます。すごいです!引き出しがすごい。ほんと、えげつないです!最高です!」。え、えげつないって(笑)。稲村選手にとって、一番のほめ言葉なのでしょう。

これは5月24日の大和高田クラブ戦で、延長10回にホームインしてガッツポーズをする稲村選手。打った松根選手より大きなアクションでしたね。
これは5月24日の大和高田クラブ戦で、延長10回にホームインしてガッツポーズをする稲村選手。打った松根選手より大きなアクションでしたね。

◆「秋に必ず借りを返します!」

 では最後にもう一度、阪口哲也コーチの話を書いておきます。予選敗退については「悔しいです」のひとことでした。

 打撃に関する課題はもちろん、守備や走塁も攻撃に生かせなかったですね。「守備と走塁が僕の担当なので、エラーとかミスは気にします。それもですけど、勝ちに結びつけられなかったことが残念。走塁からもっとリズムを作っていけたかなと思います」

 「失点に絡んでいないミスも、巡り巡ってピッチャーに影響してくる。こっちが点を取れていない以上、走塁でいかにチャンスを作っていくかというのもあるはず。(サヨナラ勝ちした)あの2試合で流れをこっちに引き寄せないと。相手のミスからもらった点を守り切れんとダメですね」

 こういう言葉で、人としてもコーチとしても本当に成長したなあと、また感じます。パナソニックに入って2年目に都市対抗本大会に出場しましたが、これが1回戦敗退。しかも自身は出番なしで…試合終了の瞬間に涙があふれていたのを思い出します。

また出しちゃってすみません。2016年7月19日の都市対抗1回戦(東京ドーム)で敗れ、涙があふれた阪口選手。
また出しちゃってすみません。2016年7月19日の都市対抗1回戦(東京ドーム)で敗れ、涙があふれた阪口選手。

 「悔しい。出たかった」とポロポロ泣いていたと言ったら「そんなことがありましたねえ。懐かしい」と笑う阪口コーチも、今や都市対抗や社会人日本選手権で試合前シートノックのノッカーを務める立場です。初めて東京ドームでそれを見た時、堂々たる姿に感激しました。

 ところで選手たちは?「へこんでいます。(本大会出場を)落としたことのない子ばっかりなので。僕より先に入った人しか経験していませんから」。そこでまた「悔しいです。日本選手権で借りを返さないと!」と阪口コーチ。

 ちなみに7年前の社会人1年目と、コーチとして逃した今回では、どちらが悔しい?と比べにくい質問をしたんですけど、こんなふうに答えています。

 「あの時も悔しかったけど、ほんまに社会人野球をやっていたら、出場できた時の嬉しさがあった。都市対抗というものの位置づけですよね。僕らは都市対応のために1年間やっていると言ってもいいくらい。本当に都市対抗がメインなんです」

 ここはもう力説でした。そして最後は「秋に、変わった姿を見にきてください!最終予選で勝って、日本選手権で借りを返します!」という力強い宣言だったので、それを楽しみに長い夏を過ごします。

最後の日本新薬戦が終わり、何とも言えない表情で引き揚げる阪口コーチ(右)と藤井選手(左)。
最後の日本新薬戦が終わり、何とも言えない表情で引き揚げる阪口コーチ(右)と藤井選手(左)。

畑山スカウトが嬉しかったこと

 社会人8年目、まだチームの中では唯一の20代コーチですが、コーチになって4年。もう哲ちゃんとは呼べないですね。私生活でも1月に男の子が生まれて、話をするたびにデレデレのパパになりました。これからが働き盛りです。

 阪神入団の際、担当スカウトだった畑山俊二さん(現・阪神アマ統括スカウト)は阪口選手が選手からコーチになった際、「哲がコーチをさせてもらうなんて、ありがたいことです」とおっしゃっていました。そして

 「田中監督が『哲はすごく貴重な戦力』だと。実績がないから選手に引け目を感じるところもあって、その分ものすごく自分で勉強してやっている。本当に大事な戦力だ、と言ってもらったんですよ」と。

 そう話す畑山スカウト自身が嬉しそうで、聞いている私も心がじんわり温かくなったのを覚えています。

※ことしの秋、そして来年の夏には阪口コーチの、この笑顔が見られるよう祈っています。
※ことしの秋、そして来年の夏には阪口コーチの、この笑顔が見られるよう祈っています。

 <掲載写真はチーム提供、※印は筆者撮影>