昨秋の都市対抗予選で見せた“旋風”を再び!元阪神・藤井宏政コーチとカナフレックス

サードコーチを務める藤井コーチ。背番号77も、腕を回す姿もおなじみになりました。

 選抜高校野球に続いて、プロ野球も無事に開幕しました!3月26日といえば奇しくも昨年、阪神タイガースのすべてがストップしてしまった日ですね。あれからステイホームの時期を経て6月に開幕したものの、取材に行くことすらできないままシーズンが終わってしまって…。何もしていないのに、ものすごく長く思えた1年です。

 阪神甲子園球場の周りに咲く桜も、昨年とは色合いまで違う気がします。もちろん気のせいなんですけど、ユニホームや制服姿の高校生を迎えて何だか明るい花びらに見えました。それは眺める側の気持ちが違うからでしょうね、きっと。

 さて昨年は社会人野球も、大会がことごとく中止になり、オリンピック対応で11月下旬に変更されていた都市対抗野球大会だけが何とか行われました。対外試合が解禁になった6月からオープン戦をこなし、9月の都市対抗予選がシーズン初の公式戦というチームがほとんどだったはずです。

 その都市対抗近畿2次予選で、元阪神タイガースの藤井宏政コーチ(30)がいるカナフレックスの躍進ぶりは新聞でも取り上げられたので、ご存じの方も多いでしょう。都市対抗の本大会で優勝経験があるチームを撃破したり、逆転勝ちしたり。その模様は、以下の記事でご覧ください。

<元阪神・藤井宏政コーチも手応え、全員野球でカナフレックス旋風を!>

<阪神OBのコーチ対決!カナフレックス藤井vsパナソニック阪口>

<元楽天・北川倫太郎選手(カナフレックス)が都市対抗出場へ!元阪神・藤井宏政コーチも期待>

今季初戦はJABA東京スポニチ大会

 なおオリンピックが延期になったため今季も昨年と同じく都市対抗が秋に、社会人日本選手権が夏に、全日本クラブ野球選手権が春に変更されました。それぞれの予選日程も例年とは違うのですが、優勝すれば日本選手権の出場権が与えられる日本選手権対象JABA大会は、いつも通り3月の『JABA東京スポニチ大会』からスタート。カナフレックスも初めて出場しています。

東京スポニチ大会でも打撃好調だった田中慧樹選手の、打席でのルーティン。このあと両手をゆっくり下げ、左右に開いた状態でいったん止まります。
東京スポニチ大会でも打撃好調だった田中慧樹選手の、打席でのルーティン。このあと両手をゆっくり下げ、左右に開いた状態でいったん止まります。

 予選リーグの初戦は3月9日、一昨年まで元阪神の玉置隆投手が所属していた日本製鉄鹿島との顔合わせでした。3回に2年目・新宅優悟選手の2点タイムリーなどで3点を先取し、4回は田中慧樹選手の3ラン!2点を返された直後の5回にも江頭駿選手の犠飛で1点追加して、先発の大西健太投手が7回まで粘投。8回からは黒岩龍成投手が0点に抑えて勝利。幸先のいいスタートとなりました。

 しかし翌日のENEOS戦は16点も取られてしまい、こちらは初回の1点のみで7回コールド負け…。11日のJR東海戦も序盤に5失点で、カナフレックスは7回に2点、8回に1点を返したものの8対3で敗れ、決勝トーナメントには進めませんでした。それでも課題は見つかったと思いますし、初戦は神宮球場で行われたんですよね。この経験を生かしましょう!

 次にカナフレックスがエントリーされている日本選手権対象大会は5月のJABAベーブルース杯です。これは毎年出場しているので、といっても2年目や1年目の選手にとっては初めてのこと。夏の日本選手権に向け、いい戦いをしてください。優勝すれば出場権獲得ですが、そうでなくても最終予選で決めればOK。近畿地区の最終予選は5月末、すぐです。

1点差で敗れ、決勝進出ならず

 その前に、わかさスタジアム京都で3月の土日に行われた『第147回JABA京都府春季大会』もカナフレックスは出場しています。第2週の13日が雨天中止で、第3週の20日だった初戦は21日に延びたのですが、その21日も雨で順延。よって22日と23日で1次リーグ、24日に2次トーナメントが行われました。

※ことしは桜の開花が早く、わかさスタジアム京都がある西京極総合運動公園内もご覧の通り咲き誇っています。
※ことしは桜の開花が早く、わかさスタジアム京都がある西京極総合運動公園内もご覧の通り咲き誇っています。

 1次リーグは行けなかったけれど、勝ち進んだので2次トーナメントは行けてよかった!しかも1日で2試合も見られる!と思ったら…準決勝第1試合で負けちゃったんですよ。相手は日本新薬。カナフレックスの4番を打つ元楽天・北川倫太郎選手が昨年、補強選手として都市対抗野球に初出場したチームです。打線が中盤に追いつき、いったん勝ち越しただけに残念でした。

第147回JABA京都府春季大会 準決勝第1試合

 カナフレックス-日本新薬

(3/22 わかさスタジアム京都)

  カナ 000 101 000 = 2

  新薬 010 000 02X = 3

◆バッテリー

 【カナ】黒岩(8回) / 福田

 【新薬】西川(6回)‐小松(3回) / 鎌田

◆三塁打 新薬:船曳

◆二塁打 カナ:新宅

◆盗塁 カナ:北川 新薬:福永

◆打撃    (打-安-点/振-球/盗/失)

 1]右:山崎  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0)

 2]遊:米倉  (4-1-0 / 2-0 / 0 / 0)

 3]中:新宅  (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

 4]一:北川  (2-1-0 / 1-2 / 1 / 0)

 5]指:吉田  (2-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

 〃打指:江頭 (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

 6]左:森田  (4-1-1 / 1-0 / 0 / 0)

 7]三:田中  (4-1-1 / 2-0 / 0 / 0)

 8]捕:福田  (3-2-0 / 1-0 / 0 / 0)

 〃打:喜来  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

 9]二:武田  (2-0-0 / 2-0 / 0 / 0)

◆投手       (安-振-球/失-自)

 黒岩 8回 31人 130球 (5-8-4 / 3-3)

福田選手は2回に左前打、7回はこの中前打とマルチ!
福田選手は2回に左前打、7回はこの中前打とマルチ!

4回に中前打と二盗を決め、田中選手のヒットで同点のホームを踏んだ北川選手。ベンチも大喜びです。
4回に中前打と二盗を決め、田中選手のヒットで同点のホームを踏んだ北川選手。ベンチも大喜びです。

《試合経過》※敬称略

 先攻のカナフレックスは1回、先頭の山崎が相手エラーで出るも2死後に盗塁失敗。その裏の日本新薬も2死からヒットを放ちましたが、福田が二盗を阻止。同じように3人で攻撃終了しています。

 2回は北川が四球を選び、吉田の右前打で一、二塁となり2死後に福田が左前打!しかし北川は本塁タッチアウトで得点なし。その裏の日本新薬もまた同じく四球とヒットで無死一、二塁とします。でもこちらは続く6番・濱田にタイムリー!先制を許したカナフレックス先発の黒岩ですが、後続を連続三振と味方の好守備もあって1点でとどめました。

6回、先頭の新宅選手は左中間へ二塁打を放ち、森田選手の右前打で生還しました。
6回、先頭の新宅選手は左中間へ二塁打を放ち、森田選手の右前打で生還しました。

 すると打線が4回、北川の中前打と盗塁などで2死二塁とし、田中が右中間へ同点タイムリー!6回には先頭の新宅が左中間への二塁打を放つなど2死三塁となって、森田が右前タイムリー!ついに勝ち越します。

 一方、3回から7回までの黒岩はノーヒットピッチング!4回と6回に四球で走者を出しただけで他は三者凡退。ここまでで109球を投げていました。そして8回、1死から代打・吉野に粘られて四球を与え、続く1番・船曳には初球を打たれます。これが右中間越えのタイムリー三塁打!さらに松本の中犠飛でもう1点…。3対2と逆転され、そのまま試合が終わりました。

※ご覧のように1点差で敗れ、決勝進出はなりませんでした。
※ご覧のように1点差で敗れ、決勝進出はなりませんでした。

 5回を除く毎回ランナーを出すなど、1番から8番までの先発がみんな打って日本新薬を上回る9安打だった打線。チャンスがあっただけに残念でしょう。また本来は後ろのポジションで投げる黒岩投手が先発して好投、これまた8回だけが悔やまれますね。

 試合後、藤井コーチは「右バッターの、外の球の見極め。もっと徹底してやれていたら、もっとボールカウントを有利にできたかなと。修正できないままの選手も多かったですね」と反省を口にしました。そんな中で4回に同点打を放った田中選手と、6回の勝ち越し打・森田晧介選手、完投だったけれど1点差で負け投手となってしまった黒岩投手のコメントをご紹介します。

2年目の田中選手は打撃好調!

 まず、先の東京スポニチ大会でも打っていて、藤井宏政コーチが「好調ですよ!」とほめていた田中慧樹選手(23)から。田中選手は昨年の記事でも取り上げた新宅選手と同じ2年目。打席に立つと様々なかけ声が飛んでいて、印象に残ったのは「打点王!」というのと「やきめし食っていけ!」。やきめしは後ほど聞くとして、チームの打点王ということ?「らしいですね(笑)」

 藤井コーチからも今季よく名前を聞きますが、打撃好調みたいですね。「そうですね。メチャクチャいいです!去年もよかったんですけど、それよりも上がってきていると思います」。何か取り組んだ結果ですか?「オフに試行錯誤していました。喜来(友貴)さんとフォームを確認したり修正したりしてきて、この状態ですね。それを今も継続できています」

4回2死二塁で右中間へ同点のタイムリーヒットを放った田中選手!
4回2死二塁で右中間へ同点のタイムリーヒットを放った田中選手!

 継続中というのがまた嬉しいです。もし停滞期があっても、試行錯誤した時を思い出せば大丈夫でしょう。なお4回の同点打は「ずっとスライダーを空振りしていてヤバイなと…。そこにたまたま真っすぐが来たので打つしかない!と思って。よかったです!」と振り返りました。

 最後に「やきめし食っていけ!」についてです。他の選手に聞いたところ、田中選手は新婚さんで、一緒に住み始めたところだとか。奥さんが作ってくれたやきめし(を食べているところ?)をSNSでアップしていて、それを見たチームメイトの声でした。ところで奥さんの手料理で何が一番おいしい?と尋ねたら「何でもおいしいです!」と即答。ですよね。野暮なこと聞いてすみません。

 いつも楽しいカナフレックスベンチのかけ声、この日は他に福田優人選手への「スイングがカブレラ!」、江頭選手に対する「準備の男!」、北川選手への「ブルーベリーのブ!」などが聞こえました。ブルーベリーのブは左中間と右中間のスタンドにある看板を狙えという意味だったと思われますが…「え、どこ?って一瞬探したわ~」と笑うチームメイトです。

「もっと貢献したい」というルーキー

 日本新薬・西川大地投手は、同じ時期に重なってはいませんが立命館大学の先輩だというルーキー・森田晧介選手(22)。そんな先輩から打った貴重な勝ち越しタイムリーは「次の1点が大事なので、とにかく食らいついていこうと思って」臨んだと言います。「当たりはよくなかったけど、何とか気持ちで。いいところに飛んでくれました!」

 ただ「その前が全然ダメで…」と猛省。2回無死一、二塁で送りバントを失敗して一飛になってしまった1打席目と、4回1死一塁で空振り三振に倒れた2打席目のことです。まあ4回は次の田中選手がタイムリーを打ってくれたので、よかったですよね。

6回、左中間二塁打と盗塁を決めた新宅選手を三塁に置いて勝ち越しタイムリー!ベンチに向かって右手を挙げる森田選手です。
6回、左中間二塁打と盗塁を決めた新宅選手を三塁に置いて勝ち越しタイムリー!ベンチに向かって右手を挙げる森田選手です。

 ところで、1打席目にベンチから「真面目な顔していけ!」という声が。なぜでしょう?「え、そうなんですか?どんな顔していたんだろう」と不安そう。まあ特に意味はなく、新人選手をリラックスさせてあげようという先輩の心遣いかもしれません。

 1年目のシーズンが始まって、まだ少しですが「いつも先輩が声をかけてくれるので、新人ですけど思い切っていけます。すごくやりやすい環境です」と笑顔。藤井コーチはどうですか?「優しいです!ワンポイントアドバイスをしてくれます」。そうそう、口数は多い方じゃないからね。ここぞという時にひとことって感じでしょう。

 新人ながら与えられた役割や期待は大きい森田選手。ここまでを振り返って「まだまだ全然です。もっと貢献しないと」と表情を引き締めました。そして「本番はこの先だと思うので、いい結果を出してチームの勝ちに貢献していきたいです」とキッパリ。バントも要特訓でしょうか?藤井コーチ。

反省点は多くとも、次につながる経験

 次に黒岩龍成投手(25)。先発するところをあまり見た記憶がないのですが、いつ以来?「えーと公式戦では…いつ以来かな。去年はなかったし、おととし?いや~覚えていないですねえ」。8イニング投げたのは?「去年のオープン戦で8回まで投げたことはあります。でも本来は後ろで投げる役割なので…」

 そうなんですよね、試合後半や終盤に出てくるイメージでした。ただ今は離脱している先発陣が多いという事情のようです。違いはありますか?「後ろで投げる時は速球ばかりですね。先発だと変化球が多めになります。序盤は真っすぐ、中盤から変化球という感じで」

先発の黒岩投手。8回130球を投げました。この日の最速は147キロです。
先発の黒岩投手。8回130球を投げました。この日の最速は147キロです。

 確かに、この日もそんな配球でした。ただ終盤になっても球速は140キロ半ばが出ていたと思うんですけど、8回はつかまってしまった?「スピードは出ていても球威が。威力が落ちている感覚ですね。投げ慣れていないもんで…」

 3回から7回まで2四球の走者のみ、ヒットは許してません。だから余計に8回が悔しいでしょう。「8回の先頭、ピンチヒッターに与えたフォアボールで、流れが変わってしまいました。2回の失点もフォアボールからだった…。もともと(日本新薬の西川投手から)点は取れないので、1点か2点以内でいければと思っていたんですけど」

 登板全体を振り返って「反省点も多かったですが、いい経験させてもらいました。プラスに、次につながると思います」とのこと。反省点はやはりフォアボールだと言っていました。「そのあとを抑えていたらいいんですけど、点が絡んでいるので」。今後もまだ先発の機会があると思われ、その時は「試合を作れれば」と話す黒岩投手。

 ちなみに、この日の最速は147キロ。自身の最速は149キロだそうです。「もともと大学くらいから社会人の3年目まで147キロがMAXだったんです。それがことし148キロが出て、この前のオープン戦(3月)で先発して149キロが出ました」。えっ!ことし、しかも今月になって?それはすごい。150キロも期待しちゃいますね。

中盤は無安打に抑えていた黒岩投手(右)と福田捕手(左)。しかし8回に逆転を許してベンチへ戻るバッテリーはこの表情です。
中盤は無安打に抑えていた黒岩投手(右)と福田捕手(左)。しかし8回に逆転を許してベンチへ戻るバッテリーはこの表情です。

 大西健太投手兼任コーチ(28)は黒岩投手について「本当は後ろで投げてもらいたいんですけどねえ」という第一声。「でもオ―プン戦とは全然違いますから。企業チーム相手に投げてくれたら自信になる。新人のピッチャーにもこういう経験をしてほしいと思います。緊張感の中で投げるのはいい経験」と続けました。

 「うちは特に打ち合いが多くて、投手戦の経験があまりないチームなので。バッターを楽にできるようにしてもらいたいですね。とにかく今は2人目、3人目のピッチャー作りをしないと」。自身が先発の柱でもある大西投手ですが、コーチとしては後輩投手陣の育成も大切な仕事でしょう。貫録、いえ風格が出てきましたね。頼りにしています!

「どんな試合でも負けたらあかん」

 最後に山田勉監督(62)です。追いついて勝ち越しただけに悔しいですね、と言ったら「向こうも必死になってくるんやからね。油断しているわけじゃないけど」という返事。黒岩投手が四球を反省していました。「そう、そうなんよ。野球ってそういうもんやね」。やっぱり山田監督らしい言葉です。だからこそ逆境にあっても全員がベンチで大きな声を出せるのでしょう。

 「でも負けたらあかん。どんな試合でも勝たなあかんって言っています。それぞれが課題に取り組んでくれたら」と山田監督。実戦の機会すら激減してしまった昨年でしたが、最後に少し手応えをつかんだ選手もいるはずです。2021年、カナフレックスがどんな戦いを見せるのか注目していきたいと思います。

※最後の写真はこれ。背番号入りのチームマスクを装着してもらいました。右が田中選手、左が森田選手です。
※最後の写真はこれ。背番号入りのチームマスクを装着してもらいました。右が田中選手、左が森田選手です。

 次の公式戦は、最初の方で書いた『JABAベーブルース大会』ですが、その前の4月下旬にオリックスや阪神のファームと練習試合が組まれました。持てる力をプロ相手にぶつけ、大会へ弾みをつけてください!

  <掲載写真のうち※印は筆者撮影、それ以外はチーム提供>