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変わらぬ虎と地元への愛 元阪神・森田一成さんがタイガースアカデミー岡山校のコーチに

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
11月30日、無料体験会での森田コーチ。関西高校第2グラウンドにて。

 12月7日、大阪で阪神タイガースの新入団選手発表会が開催され、東京の神宮球場では12球団合同トライアウトが行われました。阪神の新入団発表会は例年通りの時期ながら、トライアウトは1か月遅れ。この2つが同じ日に行われるとは…なんとも複雑ですねえ。ことしは現地へ行けませんでしたが、合同トライアウトといえば元阪神の森田一成さん(31)を思い出します。

 岡山の関西高校から2007年のドラフト3位で阪神に入団した森田選手。4年目の2011年、初めて1軍昇格を果たした7月26日の中日戦(甲子園)に代打出場、プロ初打席で初安打となるホームランをレフトスタンドへ放り込んだのは周知のことですね。その後も和製大砲と期待され、2013年にはウエスタン最多本塁打と最多打点の2冠を獲得したものの、主にファームでの出場が続き、2014年に戦力外通告を受けました。

 その年の11月9日、静岡の草薙球場で行われた12球団合同トライアウトは朝から大雨で、シートバッティングは室内で開催予定でした。しかし雨が上がって急きょグラウンドでやることに。このおかげで森田選手のホームランが見られたんですよね。しかもバックスクリーンへの1発!ホームランで始まってホームランで締めくくった森田選手のプロ野球人生、と思ったら高校時代もそうだというのがわかりました。その話はのちほど。

タイガースがつないでくれる縁

 森田さんは阪神を退団後、そのまま引退して6年が経ちます。2017年から始めた野球教室『Links』は昨年、台風の直撃で施設が使えなくなってしまったとか。もう断念せざるを得ないような事態にも救いの手を差し伸べてくださる方があり、そのおかげで移転して今も継続中だと感謝していました。2017年の記事にも書いていますが、森田さんの周りは“縁”があふれていて、“恩”に報いる日々です。その記事はこちらからご覧ください。→《元阪神タイガースの森田一成さん “縁”と“恩”に感謝のセカンドステージ》

森田コーチ、ニューグラブでキャッチボール開始!やっぱり似合いますね、タテジマが。
森田コーチ、ニューグラブでキャッチボール開始!やっぱり似合いますね、タテジマが。

 そして今回、さらに“縁”がつながりました。阪神タイガースが運営している『タイガースアカデミー』のベースボールスクールは阪神のOBが直接指導するもので、皆さんもよくご存じでしょう。そのタイガースアカデミー初の“姉妹校”として来年1月に岡山校がオープンし、森田さんがコーチを務めます。地元岡山で、愛するタイガースのスクールを開校するわけですから、本人いわく「これもまたご縁」ですね。

 タイガースアカデミー事務局(事業本部振興部)の中村泰広課長に伺ったところ「岡山は兵庫の隣にありながら、本校からではなかなか遠くて行けないんですけど、野球人口の拡大やタイガースファンの獲得という思いはあります。岡山にいる彼が、その意をくんで協力してくれるというのは本当にありがたい」とのことでした。

 岡山は姉妹校?「そうですね。他に提携しているところはありますが、岡山の場合は提携ではなくフランチャイズなので、姉妹校という形になります。OBが運営する姉妹校は今回の岡山が初ですね」。カリキュラムは同じですか?「はい。指導方針は共通で、タイガースアカデミー本校の教え方を彼に伝えて、同じように進めてもらいます。ただし運営に関しては岡山校独自ですので、違う点もあるでしょう」

岡山の虎ファンのために

岡山校の会場となる岡山市北区の関西高校第2グラウンド。左翼方向です。
岡山校の会場となる岡山市北区の関西高校第2グラウンド。左翼方向です。

 2018年12月に倉敷で野球教室をやった時、当時タイガースアカデミーを担当していた球団の方から「岡山でもやれないか」という話があったそうです。それを受けて森田コーチ(ここからはコーチと呼ばせていただきます)は、ことし4月から準備を始め9月開校の予定で進めていたのですが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて延期。来年1月の開校を目指すこととなりました。

 「岡山にはタイガースファンが多いんですよ。タイガースアカデミーに入りたい子もいるけど、一番近くて兵庫県の垂水校なので」と森田コーチ。確かに、隣の県といってもかなり遠いですからね。それと岡山から甲子園に通っておられるタイガースファンの多さは、私も実感しています。

森田コーチが高校初ホームランを放り込んだという右翼。91メートルあります。
森田コーチが高校初ホームランを放り込んだという右翼。91メートルあります。

 開校を決めたあと、クリアすべき課題がたくさんあったのでは?特に会場となるグラウンドもしかり。そんな中で、母校の関西高校に引き受けてもらえてよかったですね。「いろいろ大変だったみたいですけど、岡山県の高野連や関西高校が快諾してくれたんです。絶対に無理やろうなあと思っていたら『野球人口拡大のためだから』って。びっくりしました。野球って人気あるんやなあと、改めて思いました。よかったです」

入学式直後の初アーチ!

 11月30日に、タイガースアカデミー岡山校の会場となる関西高校第2グラウンドで開校前の無料体験会が行われ、私もお邪魔してきました。そこでお会いした森田コーチの恩師、関西高校野球部部長の守安基弘先生にお話を伺っています。最初は、グラウンドを貸すことになった経緯について。

ちなみに中堅は120メートル。ここも越えていったんでしょうね。
ちなみに中堅は120メートル。ここも越えていったんでしょうね。

 「まず場所が必要ということで、一番に『関西高校のグラウンドを貸してもらえませんか?』と相談に来ました。僕らはいいんですけど、学校にもいろいろ条件があるので、二つ返事ってわけにはいかないですよね。うちも部員が練習する場所で、月曜日は基本やらないという前提にならなければ使えないでしょう?そのへんを森田くんも気にしてくれて。時間かかりましたよ、やっぱり。決まるまでは」

 それでも快諾してもらえて、母校でやれるのは嬉しいことでしょう。「本人もその思いが強かったようで。ありがたいですね」。おかげで私も、高校生の森田一成選手が練習したグラウンドを見られました。「森田くんはプロ初打席での初ヒットがホームランだったでしょう?高校生の初打席もホームランなんですよ」と守安先生はライトのフェンスを指差しながら「あそこを軽く越えていった」と言われます。

森田コーチの恩師、関西高校野球部の守安部長です。
森田コーチの恩師、関西高校野球部の守安部長です。

 初打席というと、いつの試合ですか?「入学式の日」。え、入学式の日?「入学式のあと、午後に練習試合をしたんですよ。彼にとっては高校に入って初めての練習試合で、その1打席目がホームランでした」。へえ~!すごい。1年生同士の対戦というわけではなかったんですか?「いえいえ、全学年でレギュラー中心のゲームです」

 そんな選手、それまでにいましたか?「いません、いません。すぐ試合に出る子はいますけど、いきなりホームランっていうのは初めてでしたねえ。私の記憶の中では。練習中からもう打球が全然違いました。まさに打った瞬間です。高校生のホームランはだいだい、ギリギリ入るかどうかっていう感じなんだけど、打った瞬間入った~!って」。これが森田コーチの高校野球スタートで、その3年後には…。

締めは場外ホームラン!

 「高校野球の締めくくりもマスカットスタジアムでのホームランでした。ワンバウンドですけど場外へ出ていった!あれはプロでもなかなか打てないでしょう」。スタンドでバウンドして、ということですか?「そう、ライトスタンドの上段に落ちて、跳ねて外へ出たんですよ。三塁側にいたんですけど、角度的にはもう打った瞬間にわかりますよね。どこまで行くんだろうと思った。おい、跳ねたぞ!消えたぞ!ってね(笑)。それが最後、スカウトの方の決め手になったかも」

受付の準備をする森田コーチ(左)とアシスタントコーチの皆さん。
受付の準備をする森田コーチ(左)とアシスタントコーチの皆さん。

 そのあと守安先生は「そうそう」と、こんな話も思い出してくださいました。「彼が1軍でプロ初打席初ホームランを打ったでしょ?レフトポール際に。あの日に、うちも夏の甲子園を決めたんですよ。決勝で甲子園出場を決めた日の晩に打ってくれた。ダブルですごいことが起きた日でしたねえ」。冒頭でご紹介した、2011年7月26日のこと。後輩たちへの素晴らしい祝砲だったんですね。

 そういえば、森田コーチがファームで放った“プロ初アーチ”も場外ホームランでしたね。プロ2年目の2009年、9月16日の中日戦(鳴尾浜)でバックスクリーンを越えていった特大弾!スタンドで見ていたお客様もあっけに取られ、そのあと「え、どこに行った?越えた?越えたよね?」とざわめいたことを覚えています。ほんと、記憶に残るホームランバッターでした。

アシスタントコーチは同級生?

1、2年生の部で、練習内容を説明しているところ。
1、2年生の部で、練習内容を説明しているところ。

 さて、場所を確保して次はスタッフです。森田コーチは今、岡山駅前にある朝日医療大学校に通って勉強中。柔道整復学科の方は3年間のカリキュラムを終えて現在は聴講生、また鍼灸学科の1年生でもあります。実は、この鍼灸学科の学生さんたちがアシスタントコーチを務めてくれているのです。そんな縁もあって、無料体験会には鍼灸学科の北村圭司学科長が激励に来られたので、お話を聞いてみました。

 「森田くんはメチャクチャ頑張っていますよ。実技もしっかりやっています。今はもう人に鍼を打つところまで来ました。人と言ってもまだ学生同士ですけどね。普通にできています。次は症状に合わせて打つ勉強をしていくところです」

 鍼灸学科はどんな方が学んでいらっしゃるんですか?「下は18歳から上は60代の人もいます。クラスは30人で、20人から25人くらいが18歳、あと5人が社会人という感じですけど、森田くんの学年は社会人が多くて10人ほどいますね」。そんな中で森田コーチは?「みんなの兄貴的存在です」。ほほ~兄貴ですか。

1、2年生の部はテニスボールを使って打ちます。
1、2年生の部はテニスボールを使って打ちます。

 柔道整復師や、はり師・きゅう師(鍼灸)の資格を取るには国家試験で合格しなければならないんですよね?「はい、柔道整復師の試験勉強も頑張ってくれています」。試験勉強…それは何より大変だろうなあ。しかも国家試験は年に一度ずつしか行われないので、余計に厳しい。でも一生懸命勉強したんだから、時間がかかっても頑張って資格を取りましょうね!

出会いから10年、思わぬ再会

 スタッフの話に戻って、森田コーチが運営とコーチを務め、6人のアシスタントコーチと一緒に指導します。女性2人を含む6人のうち、5人が朝日医療大学校の学生さん。森田コーチだけでなく、アシスタントコーチもタイガースアカデミー本校に出向いて練習を視察してきました。その中で、森田コーチの鍼灸科同級生であり、実はもっと前に出会っていたという中村聡コーチ(25)をご紹介します。

 東岡山工業高校の野球部でキャッチャーをやっていた中村コーチは卒業後、朝日医療大学校の柔道整復科に入学しました。3年後に柔道整復師の資格を取り、3年間働いたところで「鍼の資格を取らないかと言われて、朝日医療大学校の今度は鍼灸科に入ったんです。そしたら、そこに森田一成さんが!」

神妙な面持ちの中村コーチ。無料体験会ではアカデミーの概要説明も担当しました。
神妙な面持ちの中村コーチ。無料体験会ではアカデミーの概要説明も担当しました。

 なるほど、森田コーチのことは知っていたわけですね。でもそんなに驚いた?「実は、僕が生まれて初めて直筆サインをもらった人が森田選手だったんです」。え、そうなの?初めてのサインが?「僕が中学3年だった2010年の冬に、たまたま行ったバッティングセンターで会いました。わあ~森田一成や!と思った(笑)」。そうそう、心の中では基本、呼び捨てですからね。

 「小学生の時から知っていました。関西高校の森田選手。夏の大会もマスカットスタジアムへ見に行っていて。まさにその世代なので」。2010年というと、森田さんがプロ3年目のオフですね。ちなみに、そのバッティングセンターは硬球が打てるので帰省中に行っていたらしく「オフもちゃんと練習してたってことで」と森田コーチ。なるほど。で、中村少年は人生初の直筆サインをもらったわけです。

中村コーチにご協力いただきました。アカデミーの帽子についたエンブレムです。
中村コーチにご協力いただきました。アカデミーの帽子についたエンブレムです。

 それから10年の時を経て「まさか自分が入学した同じクラスに、森田さんがいるとは!びっくりしました」と中村コーチは言います。今はクラスメイトとして鍼灸の勉強に励む2人、年は6歳差で中村さんにとっては「優しいおにいちゃんみたいな人」だそうですよ。今回のアカデミー開校にあたり、話を聞いて自ら「やらせてください」と志願したとのこと。

 中村コーチは中学や高校でトレーナーを務め、治療や投げ方などを指導してきた経験もありますが、小学生は初めてだとか。基本を大切にしていきたいと言います。なお森田コーチはさすがに10年前のことを覚えていなくて、初めての直筆サインだったという話に「他にもおるやろ~。サインもらう人」と苦笑いでした。

「楽しかった!」と子どもたち

 女性コーチは2人で、どちらもソフトボールや野球の経験者です。中山知美コーチ(27)は小学校から22歳までソフトボールをやっていて、実業団チームでもプレー。丸山寧々コーチ(20)は現在、朝日医療大学校鍼灸学科2年生で小学校、中学校(軟式)、高校(硬式)と、ずっと野球部に所属してきた本格派のおふたり。動きもかっこいいですよ!

女性コーチは2人。中山コーチ(右)と丸山コーチ(左)です。
女性コーチは2人。中山コーチ(右)と丸山コーチ(左)です。

 無料体験会は開校後と同じ3つのクラスに分かれていて、まず小学1年生2年生の部で、この日は幼稚園の年長さんも含めて15人が参加。黄色いテニスボールを使ってボールの捕り方、投げ方、打ち方など約30分やりました(本番は約50分)。続く小学3年生と4年生のクラスは19人が参加してバッティング、ボールキャッチなど約40分(本番は70分)。ボールは軟球使用です。

 最後は小学5年生と6年生の部で、この日は5人だけでしたが、軟球を使ってバッティングとボールキャッチ、フリー打撃、さらにゲーム形式のシート打撃っぽいことなど約40分やりました(本番は70分)。子どもチームの攻撃、コーチチームの守備で、結果は子どもチームが打ち勝って終了。参加した子に聞くと「楽しかった!」と声を揃えました。「やったことあるものも、初めてやるものもあったけど、全部楽しかった」という子も。

岡山での開校を喜ぶ親御さん

 では、参加した子と親御さんの話も書いておきます。

5、6年生の部ではフリー打撃やゲーム形式の打撃もありました。
5、6年生の部ではフリー打撃やゲーム形式の打撃もありました。

 津山方面から1時間半かけてやってきたという鳥谷選手ファンのお父さんと息子さん。「タイガースアカデミー岡山校のことは妻がネットで見つけて。まず体験してみようと思って来ました。もう本人はやりたくて仕方ないようですけど(笑)」。往復3時間は大変でしょう?「私は仕事の都合がつきますので、息子がやりたいなら」。優しいお父さんです。

 次は、3兄弟が2クラスに分かれて参加した佐藤さんご一家。お母さんの佐藤真弓さんは「家族そろって阪神ファンです。私は鳥谷選手が好きでした」とのこと。ロッテに行っても大人気の鳥谷選手ですねえ。長男の有希大(ゆきと)くんは小学4年生で、糸原選手のファン。次男の光希大(みきと)くんは小学2年生で、梅野選手と近本選手のファン。そして地元テレビのインタビューにも答えた吏希大(りきと)くんは年長さん、大山選手ファンです。

佐藤家の皆さん。左から母の真弓さん、有希大くん、光希大くん、吏希大くん。
佐藤家の皆さん。左から母の真弓さん、有希大くん、光希大くん、吏希大くん。

 タイガースアカデミー岡山校のことは、お父さんが軟式野球のHPで見つけたとのこと。それでまず体験会に行ってみようかという話になったとおっしゃっていました。子どもたちの感想を聞いて入学を検討する予定だそうですが、お母さんは「岡山での開校というのが嬉しいです。できるならやらせてあげたい」と、とても前向きでした。

 最後は玉野市の中村剛くん(小学4年生)。所属している野球チームでのポジションはキャッチャーです。「小2の時に、キャッチャーをやりたいと自分で言いました」。小学2年生で?自ら?「はい。梅野選手がカッコよくてキャッチャーをやりたいと思って」。そうなんですね。もちろん梅野選手のファンで、お父さんいわく「道具は全部SSKで、キャッチャーミットも梅ちゃんモデルにしています」

 夢はタイガースジュニアに入ること、そしてタイガースに入ること。同じ夢を持った子は大勢いるんでしょうね。

梅ちゃんファンの中村剛くん、キャッチャーです。
梅ちゃんファンの中村剛くん、キャッチャーです。

 お父さんも阪神ファンで、新庄選手や矢野選手が好きだった…というより今も「88」のユニホームを着て応援されています。森田コーチのインスタを見ているそうで、そこで今回のタイガースアカデミー岡山校や無料体験会の投稿を見られたそうです。お母さんは「岡山の地元でタイガースアカデミー、嬉しいです!」とおっしゃっていました。

 タイガースアカデミー岡山校は2021年1月18日、岡山市北区の関西高校第2グラウンドで開校します。あさって12月9日の午後1時から受付開始。先着順で、定員は各クラス20人だそうです。

「タイガースファンじゃけぇ」

 最後に森田コーチの話で締めくくりましょう。無料体験会を実施して「タイガースの帽子をかぶっている子が多くて、びっくりした」と言います。確かに、自身の野球チームの帽子はあったけど、他のNPBチームの帽子はなかったですね。やっぱり岡山にはタイガースファンが多くて、アカデミーに入りたい子も多いんでしょう。

 「僕はタイガースファンなので、一応(笑)。嬉しいことです。好きな球団に入れて、クビにはなったけど今も付き合いがあるってのは本当にありがたいこと。平田さん(ファーム監督)や宮脇さん(ファームディレクター)は、今でも挨拶に行ったら温かく迎えてくれるし」。現役時代は怖くて怖くて仕方なかった平田監督だけど、一番忘れられない人なんですね。

後列右から森田コーチ、中山コーチ、丸山コーチ。前列右から中村コーチ、山根コーチ、藤井コーチ、蔵増コーチ。
後列右から森田コーチ、中山コーチ、丸山コーチ。前列右から中村コーチ、山根コーチ、藤井コーチ、蔵増コーチ。

 また「この話も、球団から言ってもらったことが嬉しい。僕以外にもっといろんな人がいる中で、声をかけてもらった。そういうところは本当に感謝している」と森田コーチは振り返ります。退団後も変わらず、どこかでつながっている阪神との縁、地元岡山で野球が結んでくれる縁。それに恩返しすることで、また新たな出会いもあるでしょう。

 入団したばかりの春も、戦力外を告げられた秋も、そして今も「だって僕、阪神ファンじゃけぇ」という言葉を聞いてきた気がします。根底にあるものは、ずっと変わっていないんですよね。そう感じた時、森田コーチはもう一度つけ加えました。「タイガースのおかげよ、ほんと」

   <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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