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ロサリオ2号、福永5勝目、そしてチーム60試合目でなんと98盗塁!《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
ヒーロースピーチはロサリオ選手(左から4人目)ではなく、福永投手(右)でした。

 1軍が札幌、仙台と遠征中の甲子園球場で、15日からウエスタン・中日戦が行われています。阪神のファームは5日にソフトバンク3軍と練習試合を行ったものの、6月に入ってホームでの公式戦はまだありませんでした。よって、これが今月初のホームゲーム。甲子園開催のカードは、4月末の広島戦に続いて今季2度目です。15日は天候が怪しかったこともあり736人と少なかったものの、9回に西田直斗選手が放った逆転サヨナラ2ランで盛り上がったでしょう!

 きのう16日は3092人の方が観戦してくださいました。なんたって阪神の4番は今、ロサリオ選手ですからね。そのロサリオ選手の、甲子園では来日初アーチとなる2ランで試合が動き、以降も相手エラー(計4個)や四死球(四球6、死球4の計10個)などで追加点。8回に満塁ホームランを浴びて1点差とされるも、その裏に押し出し四球で1点加えて逃げ切り連勝!再び貯金を12にしています。

 ちなみに9日のオリックス戦(紀三井寺)で一度、貯金12になっていましたが、12というのは2010年9月11日以来8年ぶりのこと。きょう勝って13となったら…また古い資料を引っ張り出してこないといけませんね。

チーム100盗塁目は誰が決める?

 もう1つ数字の話です。開幕からチーム盗塁数のトップを独走してきた今季の阪神。5月後半は少しペースが落ちていたものの、6月に入ってまた増えています。島田海吏選手が量産中!チームとしては12日に90個となり、きのう16日も計5個を成功させて98個まで来ました。きょうあたり100個の大台に乗るかも。さて、それは誰の足でしょう。

 なお、きのうの先発は福永春吾投手でした。15日に、イースタン・リーグとウエスタン・リーグが制定する『スカパー!ファーム月間MVP』の、5月度のウエスタン受賞が発表されたばかり。阪神の選手が選ばれるのは2016年3、4月度の陽川尚将選手以来のことなんですね。福永投手、おめでとうございます!

 では試合結果をどうぞ。

《ウエスタン公式戦》6月16日

阪神-中日 15回戦 (甲子園)

 中日 000 010 040 = 5

 阪神 220 020 01X = 7

◆バッテリー

【阪神】○福永(5勝1敗)‐モレノ-島本‐竹安-S松田(2敗2S) / 岡崎-坂本(7回~)

【中日】●鈴木翔(4敗)(5回)-岡田(1回)-伊藤準(1回)-小川(1/3回)-福谷(2/3回) / 加藤

◆本塁打 神:ロサリオ2号2ラン(鈴木翔) 中:阿部2号満塁(島本)

◆三塁打 中:友永

◆二塁打 神:北條

◆盗塁 神:島田(17)、板山(6)、江越2(13)、緒方(3) 中:遠藤2(8)

◆打撃  (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

1]一:荒木  (2-0-0 / 0-1 / 0 / 0) .200

〃一:森越  (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .213

2]中:島田  (2-0-0 / 1-3 / 1 / 0) .234

3]二:板山  (2-0-2 / 0-2 / 1 / 0) .266

4]指:ロサリ (4-2-3 / 1-0 / 0 / 0) .304

〃打指:小宮 (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .256

5]遊:北條  (3-1-0 / 0-2 / 0 / 0) .238

6]三:西田  (3-0-1 / 1-1 / 0 / 0) .227

7]右:江越  (3-0-0 / 3-1 / 2 / 0) .219

8]左:緒方  (4-3-0 / 0-0 / 1 / 0) .259

9]捕:岡崎  (3-0-0 / 0-0 / 0 / 1) .281

〃捕:坂本  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .282

 ※ロサリ=ロサリオ ※小宮=小宮山

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率) 最速キロ

福永  6回 99球 (6-4-3 / 1-1 / 4.07) 147

モレノ 1回 10球 (0-1-0 / 0-0 / 7.04) 151

島本 0.1回 22球 (5-1-0 / 4-4 / 7.71) 141

竹安 0.2回 2球 (0-0-0 / 0-0 / 0.00) 138

松田  1回 17球 (0-1-0 / 0-0 / 5.14) 147

《試合経過》※敬称略

豪快なスイングでピンポン球のように飛んでいく打球。ロサリオ選手。
豪快なスイングでピンポン球のように飛んでいく打球。ロサリオ選手。

 まず打線は1回、島田の四球などで2死一塁としてロサリオがセンターバックスクリーン右に、軽々と放り込んだ2号2ランで先制!ついで北條がレフトへ大きな二塁打を放ちますが、ここは2点で終了しました。

これは5回に四球を選んだ北條選手。鈴木翔投手は大荒れでした。
これは5回に四球を選んだ北條選手。鈴木翔投手は大荒れでした。

 2回は先頭の江越が死球、すかさず盗塁を成功させ、緒方の右前打で三塁へ。一、二塁となり1死後、荒木の打席でダブルスチール!緒方が二盗、江越は生還して3点目が入ります。荒木が右足に死球、続く島田も右腰に死球でスタンドは騒然となる中、板山が右犠飛!この回2点を追加です。

 5回はショートの送球エラーで出た島田と、四球の板山がダブルスチールを決め、無死二、三塁としてロサリオの右前タイムリー!北條も四球を選んで再び満塁となり、西田の死球で押し出し。なおも無死満塁、江越の打席で鈴木翔のボールが大きく外れるも、ホームを狙ったロサリオはタッチアウト(記録は走塁死)。走者はそれぞれ進塁(三塁走者がアウトになる間の進塁という記録)しますが、ここは2点止まりでした。

モレノ投手は7回に登板して三者凡退!
モレノ投手は7回に登板して三者凡退!
島本投手は阿部選手に満塁ホームランを打たれました…。
島本投手は阿部選手に満塁ホームランを打たれました…。
後続を断った竹安投手(中)と、併殺で助けた北條選手(左)と板山選手(右)。
後続を断った竹安投手(中)と、併殺で助けた北條選手(左)と板山選手(右)。
9回は松田投手が3人でピシャリ!今季2セーブ目です。
9回は松田投手が3人でピシャリ!今季2セーブ目です。

 先発の福永は1回に2死から遠藤に四球と二盗を許し、刺そうとした岡崎の悪送球により三塁まで進めるも後続を断って無失点。2回は三者凡退、3回は連続三振で2死を取ったあと1番・友永にライトフェンス直撃の三塁打を浴びながらも得点は与えず。4回は遠藤の右前打と二盗、2死後に阿部のショート内野安打で一、三塁のピンチをしのぎ、ここまで0点に抑えます。

 5回は先頭に四球を与えたあと投直で併殺を取った福永。ところが友永に四球、伊藤康は右前打で2死一、三塁として遠藤の右前タイムリーで1点を返されました。6回は先頭にヒットを許しますが併殺など3人で片づけ、1失点のみで交代です。

 7回はモレノと坂本のバッテリーがビシッと三者凡退に抑え、その裏の打線は相手エラー2つと四球があったものの無得点で、6対1のまま迎えた8回。登板した島本がいきなり連打を浴び、松井佑から三振を奪うも代打・石川駿に中前打で1死満塁となり、続く阿部にライトスタンドへ放り込まれます。石垣にも中前打されたところで島本は降板。代わった竹安が併殺で締めました。

 満塁ホームランで1点差に迫られた阪神。しかし直後の8回裏、先頭の緒方が中前打(これで3安打!)、坂本はバント失敗で走者が入れ替わり、森越は遊ゴロエラー、島田はまたしても死球(うまく体を回して左背中あたり)で1死満塁。板山の押し出し四球で1点を加えます。9回は松田が三者凡退で片づけ、連勝です。

福永投手には1軍で投げるための注文

 試合後の話は矢野燿大監督から。まず1打席目で2ランを放ったロサリオ選手についてです。

5回にタイムリーを放って一塁に到達したロサリオ選手。
5回にタイムリーを放って一塁に到達したロサリオ選手。

 「いい方向に飛んでるよね。センターから右方向に打とうという意識の中で、しっかりそっちに打てたってのもそうだし、次のヒット(5回の右前タイムリー)も、詰まってでも押し込んで向こうに打とうというのもあったし、そのあとの引っ張ったゴロもある意味、紙一重。もちろんあれは上げてほしいけど、やろうとしていることは出来つつあるのかな。まあピッチャーのレベルが1軍とは違うし。そういうのはあるけど、いい感じになってきているとは思う。きょうに関しては、いい方向にいい打球が飛んでいる」

粘って5勝目を挙げたものの、2死からの四球が悔やまれる福永投手。
粘って5勝目を挙げたものの、2死からの四球が悔やまれる福永投手。

 次に福永投手には、2死を取ってからの四球が失点につながったことで「きょうも勝ち投手の権利を取って、結局は勝ちがついているけど、ああいうところはやっぱり物足りないよね。ゲッツー取って2死にしてからストレートのフォアボールでしょう?厳しいことを言うと、ああいうことをしていたら1軍では通用しないし、今のアイツに2回、3回チャンスあるのかっていうと、ないと思うのよ。たとえば先発で行った場合に。やっぱりもうちょっと、そういうところのレベルを上げていかないと」と話しています。

 続けて「2軍やから勝てた、1軍じゃ通用しないってピッチングになってしまっているから。いつも言うように、意図してこう投げて、こう抑える、こういう凡打を取りたいっていう回数がもっともっと増えてこないと。結局、投げてみないとわからないって感じになってしまっているから。まだ課題としては残っているかな。“底”は上がってるけどね、もちろん。全体的なレベルは上がってるからこそ、そういうのをもっと意識してやってほしいな」と注文。

「島田の三盗は見事だった」と監督

これが5回に成功させた島田選手の三盗です!
これが5回に成功させた島田選手の三盗です!

 打線に関してはやはり、この日の走塁に話題が集まりました。「きょうはファームでずっと全力疾走している板山がゲッツー崩れで残って、そこからロサリオのホームランでしょ?江越のダブルスチールもそうだし。島田も(今までは)走塁にもっと思いきりが欲しいな~とか、スライディング弱いな~ってのがあったんだけど、きょうのあの三盗は見事やったね。あれは本当に1軍クラスの、1軍レベルの走塁で、最後の突っ込みで潜り込んでセーフっていう。それこそ俺らの時代の赤星が、タイミングどうかな?というところで最後の突っ込みでセーフになれたような」

ロサリオ選手のタイムリーで生還した島田選手を迎えるベンチ。浜中コーチ(右)のうしろが矢野監督です。
ロサリオ選手のタイムリーで生還した島田選手を迎えるベンチ。浜中コーチ(右)のうしろが矢野監督です。

 矢野監督は以前から「今まで(島田は)どっちかっていうとスライディング自体が弱かった」という話はしていたのですが、その点もクリアできたのでしょうか。「きょうはファウルでもスタートを切っていて、どれも思いきりよく、いいスタートだったから。こういうことを続けていけばアイツの持ち味を生かせるし、相手からするとすごく嫌なものになる。島田が出るだけで無視できない、バッターに集中できない状況を作れるわけだから。これからも、どんどん失敗を恐れず行ってもらったらいいと思う」と期待を込めています。

3打点のロサリオ&17盗塁の島田

 選手のコメントはロサリオ選手から。甲子園での初ホームランに「よかったですね。チームの勝ちに貢献できたことは、いつもいい気分です」と笑顔。一塁上でスタンドから「盗塁して~!」という声援が飛ぶと手を振って応えたり、三塁上ではファウルボールを必死で避けた藤本コーチに大きなジェスチャーで笑ったり。ファンの皆さんは大喜びでしたね。

投球が逸れたのを見てホームを狙ったロサリオ選手ですが、アウトになりました。
投球が逸れたのを見てホームを狙ったロサリオ選手ですが、アウトになりました。

 ただ、きょう入団会見を行う新外国人のナバーロ選手について聞かれると「私とは関係のないこと。自分自身がやるだけ」と答えたロサリオ選手です。

 次に、この5試合で4盗塁を成功させている島田選手。1回から四球で出て板山選手のファウルでも、しっかり走っていたことを矢野監督が評価していました。「いいスタートが切れたと思います」。そして5回には板山選手とともにダブルスチールを決めた三盗。「ピッチャーの投げるタイミングが、ずっと一緒だったので思い切ってスタートを切れました。試合全体を通して、思いきりの良さが出たのかなと思います」

次は自身もスタンドも酔わせてください

この日は珍しく1回から変化球をいくつか投げていました。
この日は珍しく1回から変化球をいくつか投げていました。

 最後は福永投手の話で締めましょう。試合を振り返って「ツーアウトからのフォアボールが反省です。自分でゲッツーを取ったあとで」と、まず5回の失点を悔やみました。「全体的には粘れたと思います。いつもは真っすぐ、真っすぐで変化球だったけど、きょうはスライダー、カーブでしっかりカウントを整えて勝負できた。スライダー、カーブで今までにない新しい投球ができたかなと思う」。それは岡崎太一選手と話し合って?「はい」。組むのは?「シーズンに入ってから2回目です」

 次の登板に向けては「また真っすぐをしっかり強く投げられるようにやっていきたい。きょう変化球がよかっただけに。変化球でもしっかりゲームを作れたのがよかったです」と福永投手。これでリーグトップタイの5勝目。その5勝の中では前回のオリックス戦(9日、紀三井寺)が「最後はバタバタしましたが、真っすぐと変化球ともに一番よかったかな」と振り返り、その点では「きょうは苦しかった」と言っています。

どんなに急な指名でも堂々とこなす、福永投手の投球術ならぬトーク術。
どんなに急な指名でも堂々とこなす、福永投手の投球術ならぬトーク術。

 なお、この日は人選が難しかったであろうヒーロースピーチは福永投手でした。最初に「きょうのヒーロー、福永投手です」と言ったような…。自分で自分を紹介したんですかね。そのあと「皆さん、少しほろ酔いと思いますが、きょうは自分のピッチングには酔えませんでした。次は必ず、自分のピッチングに酔いしれるよう頑張りますので、これからも応援よろしくお願いします!」と続けて、拍手喝さいを浴びました。指名されるとは思っていなかったとか。それでも自身の反省を織り込みながら笑いも取って、さすがですね。

     <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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