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教育リーグ最後の中日戦・その1 又吉投手を打って勝ちました!《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
今季初めてファームの試合に出た陽川選手。矢野監督が「一番よかった」とハナマル!

 阪神ファームは13日と14日にナゴヤ球場で、ことし最後の春季教育リーグとして中日との2連戦を行いました。いったん帰ってきて、きょう福岡へ移動。いよいよ、あす16日はウェスタン・リーグ開幕のソフトバンク戦(タマスタ筑後)を迎えます。名古屋での2日間は初夏並みの陽気となり、ビジター用の黒いユニホームが暑いと矢野燿大監督も訴えていたのですが、あすは少しひんやりするとか。観戦予定の方は調整可能な服装でお出かけください。

 さて開幕前の教育リーグ・中日戦で、阪神はちょっと顔ぶれが変わっていました。荒木郁也選手と伊藤隼太選手がオープン戦へ行き、緒方凌介選手と江越大賀選手が戻って来ました。原口文仁選手、陽川尚将選手、北條史也選手は、この2連戦に出場して再びオープン戦へ。また中日の方も14日は何人かが入れ替わっています。(隼太選手のヘッスラ、気合が伝わりましたね!)

 この2連戦の先発が13日は才木投手と又吉克樹投手、14日は小野投手と大野雄大投手。なかなかの投手戦になりそう、と思ったら2試合とも阪神打線が打ち勝ちました。まずは計18安打を放ち、後半だけで11点も取った13日の結果をご紹介しましょう。

《ファーム教育リーグ》

 中日- 阪神 (ナゴヤ) 

  阪神 000 004 043 =11

  中日 000 100 020 = 3

  

◆バッテリー

【阪神】才木-山本‐守屋 / 原口-岡崎(8回~)

【中日】又吉(6回)-大蔵(1回)-木下雄(1回)-石田(1回) / 加藤‐武山(7回~)

◆本塁打 神:北條(又吉)

◆三塁打 神:板山、小宮山

◆二塁打 神:原口、板山 中:平田、藤井

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)

1]二:植田   (5-3-1 / 1-0 / 0 / 0)

2]中:島田   (5-2-0 / 1-0 / 0 / 0)

3]指:緒方   (3-1-0 / 1-0 / 0 / 0)

〃打指:森越  (1-1-0 / 0-1 / 0 / 0)

4]一左:陽川  (4-3-0 / 0-1 / 0 / 0)

5]捕:原口   (2-2-1 / 0-1 / 0 / 0)

〃捕:岡崎   (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

6]右:板山   (5-3-4 / 1-0 / 0 / 0)

7]三:北條   (3-1-2 / 0-2 / 0 / 0)

8]左:江越   (2-0-0 / 2-0 / 0 / 0)

〃打一:今成  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

〃打一:小宮山 (2-1-2 / 1-0 / 0 / 0)

9]遊:熊谷   (4-1-1 / 0-1 / 0 / 0)

キャンプからずっと1軍なので、ことしファームで見るのは初めてだった才木投手。
キャンプからずっと1軍なので、ことしファームで見るのは初めてだった才木投手。

◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ

才木 7回 90球 (6-1-1 / 0-0) 146

山本 1回 26球 (3-1-1 / 2-2) 136

守屋 1回 7球 (1-0-0 / 0-0) 145

<試合経過>※敬称略

6回1死一、三塁で原口選手が同点犠飛。
6回1死一、三塁で原口選手が同点犠飛。
続く板山選手の三塁打で、一塁から激走中の陽川選手。
続く板山選手の三塁打で、一塁から激走中の陽川選手。
こちらはホームランで、静かに走る北條選手です。
こちらはホームランで、静かに走る北條選手です。

 三者凡退で立ち上がった才木は2回、先頭の4番・平田に左翼線二塁打を許しますが、後続をすべて内野フライに打ち取り、3回も2死から内野安打のみでした。しかし4回、井領の右前打と盗塁、内野ゴロで1死三塁として5番・石垣にタイムリー内野安打。熊谷がよく打球を止めたけれど投げられず…というものです。先に1点を失った才木ですが後続を断ち、5回は2死から藤井の二塁打があったものの問題なし。

 この粘りに打線が応えた6回の攻撃は、1死から緒方と陽川の連打で一、三塁とし、原口の中犠飛で追いつくと、続く板山が一塁線を鋭く破るタイムリー三塁打で勝ち越し。さらに北條がレフトへ2ラン!この回4点を取って逆転成功。又吉から計11安打でした。7回はこれが教育リーグ初登板だったという育成ルーキー・大蔵に三者凡退を喫するも、8回にまた大きな追加点が入ります。

 その前に才木。6回は1四球のみで、7回は1死から8番・三俣の左前打に続き、途中出場の武山はピッチャー返し。才木がグラブではじき、植田が捕って二塁ベースを踏み一塁へ送ってアウト!併殺で終了しました。7回90球、6安打1三振1四球で1失点という内容です。

 打線は8回、中日2人目・木下雄から代打の森越、陽川、原口の連打で無死満塁として板山が中前タイムリー!4連打で2人を還して、なおも無死一、二塁。北條が四球を選び、また満塁となって代打・小宮山は3球で見逃し三振に倒れたものの、熊谷の二ゴロ併殺崩れの間に原口が生還。2死一、三塁で植田が中前タイムリー!これで8対1となりました。

8回に登板した山本投手。不運なプレーもありましたが…
8回に登板した山本投手。不運なプレーもありましたが…
9回、板山はタイムリー二塁打で3打席連続タイムリー!
9回、板山はタイムリー二塁打で3打席連続タイムリー!
最後は守屋投手が0点に抑えています。
最後は守屋投手が0点に抑えています。

 8回裏に登板した山本(キャッチャーも岡崎に交代)が四球と中前へポトリと落ちるヒットなどで1死二、三塁として、途中出場の渡辺は二ゴロ。と思ったら植田が捕れず、1人還します。石垣は三振で2死一、三塁となって代打・近藤に中前タイムリーを浴び、この回2点を失った山本。なお1点目の渡辺にはヒットランプがついたので、タイムリー内野安打にしましたが…かなり微妙です。

 そして9回の攻撃。石田から緒方と陽川が連続で四球を選び、岡崎は併殺打で2死三塁と変わりますが、またしても板山が右翼線にタイムリー二塁打!北條も四球で、続く小宮山が今度は右翼線へ2点タイムリー三塁打!この回3点追加、計18安打で11得点を挙げています。

 9回裏は守屋が登板。先頭の三ツ俣をカウント1-2と追い込んでの4球目、145キロの真っすぐがボールになり、周囲も「ええーっ」の声。次の変化球を中前へ運ばれました。武山は遊ゴロ、ベースを踏んで一塁へ送った熊谷の送球が高かったようで小宮山は捕れず1死のみ。でも最後は伊藤康を遊ゴロ併殺打に打ち取って終了。こちらも計10安打を許した試合でした。

調子がよくない中で見られた成長

 矢野監督は才木投手に「レベルに関しては上がっている。2年目の“ひ弱さ”は感じないし、そんなによくなかったとは思うけど結果はそれなりのイニングを投げて1失点だからね。それは成長の部分。ただ、いつも言っているように、1軍のバッターでは?ということ。ランナー出てカウントを作れなかったり、決めにいってボールが浮いたり。1軍ではそれで許してくれない。1点じゃ終わっていない。精度を上げていかないと」と、さらなる注文をしました。

求められるものが1年前とは大きく変わってきた才木投手。
求められるものが1年前とは大きく変わってきた才木投手。

 「成長できている部分はあるとして、ローテに入って勝っていくピッチャーになるためには、そういう部分も必要。スケールの大きいピッチャーを期待しているので、何かこだわりがほしいな。真っすぐに対するこだわりとか。追い込んでから一発で終わらせるのが1軍のピッチャー。ウイニングショットがまだできていない。これから作っていく。まあ、言ってもまだ2年目だからね。期待値はどんどん上がってくるけど、焦らなくていい」と矢野監督は言います。

 高橋建投手コーチも「こんな状態の中で7回1失点は評価できますね」という言葉だったので、そんなに悪かったんですか?と尋ねると「よくないですねぇ。空振りを取れないし、どんどん投げ込めていない」という答え。それでも「去年の実戦に入り始めた頃と比べたら数段違いますね。あの頃は一生懸命、力一杯投げていた。でも今は、その場で自分が見られるようになった。それは成長の証でしょう」と、伸び盛りの右腕に期待を込めました。

調子がよくない中で得られた収穫

中日担当記者から「足が長いなあ!」と感嘆の声も。このユニホームは、より一層長く見えますね。
中日担当記者から「足が長いなあ!」と感嘆の声も。このユニホームは、より一層長く見えますね。

 では才木投手本人のコメントです。「きょうは全然よくないです。調子悪かった。悪い中で7回を投げて1失点ということで、ゲームを作れたのは先発の役割としていいんですけど、取られた1点が先制点だったのはよくないですね。なかなか点が入らない中、先に取られたので。いつもの大胆さが少し欠けていたかも。ブルペンから、あまりよくなくて。指のかかりも悪いなというのはありました」と振り返ります。ただ「空振りが取れなかったけど、内野フライとか多かったのはボールの下を打ってくれているのかなと思います」とも。

 矢野監督が「追い込んでから一発で決めるのが1軍のピッチャー」と話していたことについて「フォアボールは1個だけど、追い込んでからの決め球がやっぱり…。フォークは三振を取ったとこ1つしか決まっていない。あとは浮いたり、引っかけたりして。真っすぐも真ん中に入ったり。1軍では打たれていますね。そういうとこ、しっかり修正しないといけない」と才木投手。

 ことし、ここまで投げた中で「きょうが一番ダメだった」と悔しがっていたのですが、最後に「100球をメドにしていて、イニング数をしっかり投げられたのは、段階的にはよかったと思う」という言葉もありました。。

 なお原口選手に、どうリードしたかを聞いてみると「声をかけて、ベンチに戻ったら話をして。何とか低めに集めさせる、そういう意識をさせてと思っていました。自分の中で相当悪かったんだと思います。それでも粘って、粘ってよく投げましたよ」とのことです。

リリーフ陣は明暗…

 続いて、高橋コーチに山本翔也投手守屋功輝投手の話も聞きました。「山本は、いい時と悪い時の差が激しいですね。それに結果が出ても本人はあまり、よく感じていないようで。少しスッキリしないのが続いていると思います。守屋はいい状態を保っているので、継続してほしい。特にリラックスして放れるのはいいことですね」

試合終了でマウンドに集まる選手たち。
試合終了でマウンドに集まる選手たち。

 山本投手は、エラーだったと思われる失点についても、それは関係ないというふうに首を振っただけでした。早く抜け出せますように。守屋投手には「あの4球目、ストライクだと思った」と言ったら「ですよね」と苦笑い。でも顔には出さなかったでしょう?「我慢しました(笑)」。なるほど。結果的にヒットとなったわけで、これが1軍の公式戦ならガックリですもんねえ。

「1打席目が大事なんよ」

 変わって野手陣。まず矢野監督に1軍から参戦した選手の話を聞いています。「今の北條には、打つことが必須やからね。レギュラーを獲るためにも。もっと上げていかないと。陽川は久しぶりに見たけど、追い込まれてからファウル、ファウルで粘れるとか(今までとの)違いが見えた。又吉に対して右バッターは不利な中で打って、またピッチャーが代わってもできている。期待はふくらむ。原口ももちろんよかった。よかったけど、陽川が目立ったかな」

 2打席三振で交代した江越選手については「へんに当てにいっていたからね。次も当てにいったら…と思って代えた。熊谷も含め、スイッチをやり始めての気持ちはわかる。我慢して、というのはあるけど」。そのあとで出た小宮山慎二選手が三塁打を打ちましたね。

ナゴヤで2試合連続スタメンマスクをかぶった原口選手。彼らしい当たりも!
ナゴヤで2試合連続スタメンマスクをかぶった原口選手。彼らしい当たりも!

 「うーん。1打席目が大事なんよ。小宮山の三塁打はあったけど、1打席目は?」。8回1死満塁で見逃し三振です。「そこやねん。北條も(1、2打席は凡退)。すべて最初が大事。初球でバントするとか、早い段階で走るとかも含めてね。板山もそう。引っ張って強い打球を打つことを課題にして、それはよかったけど1打席目が。又吉の変化球に(ハーフスイングで)三振した」

 そして「俺らは常に、1軍だったらどうかと思って見ているから。プレッシャーに感じることはないけど、1打席目、最初を大事にしてほしい。その点、(1打席目で又吉を打った)陽川と原口はよかった」と締めくくっています。

3安打の陽川、2人でサイクルの北條&板山

 目立つ仕事ぶりだったと言われた陽川選手は「今、上でやっていることがしっかりやれました。練習から意識して、試合は積極的にと思って。いい結果につながったと思います」と回顧。1打席目で打ったことがよかったという矢野監督の言葉に「追い込まれていたので、簡単にアウトにならないように。上でも、粘れと言われています、しっかり粘れてよかった」と少しだけ笑顔でした。いい状態を継続できてますが「正直あんまりわからないんですけど…」と少し苦笑。「やるべきことにしっかり取り組んでいる、ってことですかねえ」

北條選手は6回、初球を打っての2ラン!そのあとは2四球でした。
北條選手は6回、初球を打っての2ラン!そのあとは2四球でした。

 次に、2ランを放った北條選手。「ホームランはスライダーです。芯に当たりました」。久しぶりに出たファームの試合ですね。「試合になかなか出られないからと言われて来たんですけど、上で結果も出ていなかったので打席に立てるのは意味のある、中身のある時間にしたいです。自分のために。調子を上げていきます」

かなり状態は上がってきた板山選手。14日はしっかり1打席目に打っています。
かなり状態は上がってきた板山選手。14日はしっかり1打席目に打っています。

 板山祐太郎選手は6回がタイムリー三塁打、8回は2点タイムリーで9回もタイムリー二塁打。後半だけでなんと3打席連続タイムリーと大当たりです。しかし監督から2回無死二、三塁で三振に倒れた点で話があったらしく「1、2打席目で打てなかったのが悔しかったから、頑張りました!」のひとことです。

あっぱれ!中日・加藤捕手

 ちなみに、この日は中日・加藤匠馬捕手に足を封じられた阪神打線。1回は島田選手が、4回は北條選手が、5回はなんと熊谷選手と植田選手が二盗を阻止されました。5回までに4つって、すごいですね。もともと加藤捕手は肩の強さが売りで、阪神の藤井彰人バッテリーコーチも「すごい球を投げるねえ!送球がすごい。モリーナみたい」とメジャーリーグ屈指の名捕手と比べたほどです。

これは試合前の走塁練習の写真。植田選手の足は1軍でも武器です。
これは試合前の走塁練習の写真。植田選手の足は1軍でも武器です。

 ただし植田海選手は、加藤選手のうまさを認めながらも「1回目のスタートだったらいけたと思います」と言いました。14日はチャンスがなかったけど、次は絶対決めてやる!と闘志を掻き立てられたでしょう。できれば1軍の舞台で見てみたい“戦い”ではありますね。

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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