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2017新潟シリーズは7年ぶりの連敗で終了《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
1軍初先発から1週間、松田遼馬投手は新潟での日本ハム戦に先発しました。

 新潟県三条市の三条パール金属スタジアムで行われた、イースタン・日本ハムとのファーム交流試合。20日の2戦目は雲の多い天候ながら雨の心配はなく、2時間26分と非常にテンポよく試合が進みました。先発は阪神が松田遼馬投手、日本ハムが吉田侑樹投手。2人とも1994年2月生まれで、年齢も学年も同じですね。

 試合は松田投手が2本のソロホームランで2点を失いましたが、そのあとはリリーフ陣が0点に抑えています。でも吉田投手からヒットは打つものの得点できなかった打線。ようやく8回に高山選手のソロが出て、何とか完封は免れた次第です。つまり得点がホームランだけという試合で2対1、日本ハムが連勝しました。

 2009年から始まった新潟・三条シリーズは全8回(2011年のみ阪神はなし)で、2連敗したのは2010年のソフトバンク戦以来のことでした。日本ハムとは2度目で2015年は阪神が連勝。今回はそのお返しをされたわけですね。この日は試合前に、2日間通して行われたファン人気投票の結果が発表されました。ことしの『三条野球まつり総選挙』は…

球場の正面入口横に設置された『投票所』。
球場の正面入口横に設置された『投票所』。
両チームを通じての最高得票は、掛布監督を抑えて高山選手でした。
両チームを通じての最高得票は、掛布監督を抑えて高山選手でした。

【阪神】

1位・高山選手 98票

2位・掛布監督 58票

3位・新井選手 27票

4位・江越選手 14票

5位・今成選手 12票

以降は10票以下で、陽川選手、今岡コーチ、松田投手、狩野選手、メンデス投手、植田選手、西田選手と続いています。

【日本ハム】

1位・石川一選手 16票

2位・新垣投手  12票 

3位・田中監督  8票

4位・森山選手  6票

5位・清水選手、大嶋選手 5票

という結果になり、それぞれ1位となった2人に投票した方の中から、代表の方が高山選手と石川一選手から記念品を贈られました。

 では試合の詳細です。

《ファーム交流試合》  8月20日

阪神-日本ハム 2回戦 (新潟三条)

 ハム 010 100 000 = 2

 阪神 000 000 010 = 1

 

◆バッテリー

【阪神】●松田(2敗)-守屋-高宮-メンデス‐柳瀬 / 小宮山-長坂(8回~)

【ハム】○吉田(5勝6敗)(9回) / 郡

◆本塁打 森本6号ソロ、高浜8号ソロ(松田)、高山1号ソロ(吉田)

◆三塁打 平沼

◆二塁打 郡

◆打撃  (打-安-点/振-球/盗/失) 打率

1]右:江越  (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .137

2]中:高山  (4-3-1 / 0-0 / 0 / 0) .500

3]一:キャン (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .291

4]三:陽川  (4-1-0 / 1-0 / 0 / 0) .266

5]指:新井  (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0) .289

6]左:板山  (4-1-0 / 0-0 / 0 / 0) .186

7]二:荒木  (3-1-0 / 0-0 / 1 / 0) .269

8]捕:小宮山 (2-0-0 / 2-0 / 0 / 0) .167

〃打:今成  (1-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .219

〃捕:長坂  (0-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .168

9]遊:植田  (3-0-0 / 0-0 / 0 / 0) .215

◆投手 (安-振-球/失-自/防御率)

松田  5回 83球 (4-5-3 / 2-2 / 2.00)

守屋 1.2回 18球 (1-2-0 / 0-0 / 5.60)

高宮 0.1回 2球 (0-0-0 / 0-0 / 5.02)

メンデ 1回 17球 (2-2-0 / 0-0 / 3.16)

柳瀬  1回 7球 (1-0-0 / 0-0 / 1.63)

《試合経過》

松田投手の躍動感あるフィニッシュポーズ。
松田投手の躍動感あるフィニッシュポーズ。
4回、ソロを打った高浜選手(手前)と、打球を見つめる松田投手。
4回、ソロを打った高浜選手(手前)と、打球を見つめる松田投手。

 まず投手陣です。先発の松田は1回、2死を取ってから四球、死球と連発しながらも無失点。しかし2回、先頭の6番・森本にレフトへホームランを打たれて先制を許しました。そのあとは連続三振も含めて3人で片付け、3回は1死から2番の平沼に右越え三塁打を浴びるも後続を断ちます。ところが4回にこれまた先頭の5番・高浜に左中間へホームラン。2死後に8番・郡の右越え二塁打(江越の捕球エラーで三塁へ)、ついで四球を与えて一、三塁としましたが、追加点は与えず。5回は三者凡退で終了です。

 ついで守屋が登板。6回は1死から森本に中前打されたものの自身の牽制で刺し、7番・岸里は見逃し三振!3人で片付け、7回は簡単に2死を取って交代。あとは高宮が2球で打ち取っています。8回はメンデスと長坂のバッテリーに代わり、2安打されるも無失点。9回は柳瀬が郡に内野安打(サード陽川は届かず、植田がバックアップして遠投!惜しくもセーフ)を許しましたが、最後は遊ゴロ併殺打で無失点。

2人目は守屋投手。6回から登板です。
2人目は守屋投手。6回から登板です。
8回、高山選手がレフトへ1号ソロ!
8回、高山選手がレフトへ1号ソロ!

 次に打線。1回は高山が中前打、陽川が左前打するも得点なし。2回は荒木の左前打と二盗のみ。3回は2死からキャンベルがライトへいい当たり!でも二塁でタッチアウト…と3回まで毎回ランナーを出しながら無得点。4回と5回はあっさりと三者凡退です。6回は高山の中前打、7回は板山の右前打がともに1死から出ただけ。相手は前半の4安打がホームラン2本に三塁打と二塁打1本ずつと、すべて長打だったのに比べ、阪神は散発の単打のみでした。

 ようやく8回2死で、高山が1ボールからの2球目をレフトへ!ウエスタン1号のホームランで1点を返し、完封は免れます。2対1で迎えた9回裏、先頭の陽川が放った打球に大きな歓声が上がったものの、ちょうど風もやんでいてセンターがキャッチ。新井、板山もフライに倒れて試合終了です。

次のソフトバンク戦で問われる真価

 試合後に地元紙の取材を受けた掛布雅之監督は「今回、勝てなくて申し訳ないですね。来年は勝ちを意識してやらないと」とリベンジを誓いました。そして前日の取材で、高山選手が1軍へ戻るために「短期間で固め打ちするなど強烈なインパクトを残すこと」を提案した掛布監督。その高山選手は、この日ソロホームランを含む3安打、2試合で計5安打となっています。

三塁を回ってホームへ向かう高山選手。淡々とした表情ですね。
三塁を回ってホームへ向かう高山選手。淡々とした表情ですね。
ベンチ前で出迎える掛布監督らとタッチ。
ベンチ前で出迎える掛布監督らとタッチ。

 「まあ高山が普通の状態なら、当たり前のことなんじゃないですかね。10日間は上がれないわけで、その中でどれだけやれるか。継続しないと。でも(鳴尾浜に)戻ってからかなと思ったけど、意外に早くバランスがよくなった。最後のホームランも打てそうな感じはしたよね。曲芸のような打ち方をしていないでしょう?」

 また「1軍では結果、結果になるけど、今は内容を考えて集中しているだろう。いい形だと思う。今度はそれを意識して2本、3本打てるかどうか。帰ってからはソフトバンク3連戦で、向こうのピッチャーも右、左、左らしいので楽しみだよね」と掛布監督。その形が固まって、ヒットを打とうとして打てるように、ということですね。きょうからの結果と内容も、かなり大切になってくると思われます。

「変化球の精度とゾーンを考えて」

 続いては松田遼馬投手。5回4安打2失点ですが、打たれたのはソロホームラン2本と、三塁打1本、二塁打1本。1週間前の13日、1軍のDeNA戦でプロ初先発した際に1イニングで3本の二塁打を浴びて3点を失いました。それを踏まえてか「点を取られた形が長打だったので…防げたと思います」と不満な表情。原因は「ゾーンが高かったり」したこと。「次の登板で反省を生かしていきたい」

これは先発前日の野球教室で、子どもの投球を見る松田投手。
これは先発前日の野球教室で、子どもの投球を見る松田投手。

 今度昇格した時は1軍で先発をするか、中継ぎになるのか、という点は気になりますが「それは自分で決めることじゃないんで。チャンスをもらえたら、どちらでもいけるようにしっかり準備しておきます」と答えた松田投手。この日は、三振も多く奪っていた真っすぐがよかったものの、ホームランはスライダーとチェンジアップだったので「先発するなら変化球の精度やゾーンを考えていかないと」と前を向きました。

 久保康生投手コーチは前日、松田投手について「1軍の先発が今足りないので、先発として一本立ちできるようにさせたい」と話していて、登板後は「ちょっとゾーンが高かったかなあ」というコメント。1軍での起用が先発になるか中継ぎになるかはわからないけど、変わらず先発もできるように投げていく方針と思われます。

リリースを点から線にするための改造

 守屋功輝投手は、久保コーチいわく「榎田と同じく、少し間隔を空けて練習に取り組んでいる」とのことで、8月6日以来の登板でした。守屋投手に取り組みの内容を聞くと「上半身の動き、ですね。下半身もですけど、まず上半身の使い方を」という返事。20日の試合前練習が終わった時も、久保コーチと2人でベンチへ戻る途中に立ち止まって、腕を振り下ろす動作を繰り返していました。あれは、上からたたくということ?

20日の試合前、ベンチへ戻りながら久保コーチ(左)と“確認作業”をする守屋投手。
20日の試合前、ベンチへ戻りながら久保コーチ(左)と“確認作業”をする守屋投手。

 「そうです。球は強いけど、低めに強い球がいく確率は低かったので。そのためには(上から)たたいて、と久保コーチに言われました。体が横振りだとリリースは“点”になってしまう。縦振りなら“線”になると」

 その成果は出たかと尋ねたら「まあ少しは。でももうちょっと練習して、つかんでいきたいです」と。この日はもともと先発の予定だったのですが、松田投手に譲ったため中継ぎで1回2/3だけ。もっと長く投げれば、わかることもあった?「いえ、それは関係ないですね。今はまだ途中なので」。なるほど。同じ質問を久保コーチにしたところ、やはり「まだ途中」との答えでした。今後も続けていくそうです。

高浜選手は完ぺきなホームラン

 日本ハムの選手にも、少しだけ聞いてみました。もと阪神で今はロッテの高浜卓也選手の弟・高浜祐仁(ゆうと)選手が、松田投手から8号ソロを打っています。横浜高校から日本ハムに入団して3年目ながら、2015年は新潟三条、昨年は鎌ヶ谷、ことしはまた新潟三条と3度の対戦。2015年の1戦目で勝ち越しタイムリーを放ったのですが、ホームランを見たのはフェニックス・リーグを含めても初めてでした!

三塁を回ったところ。紺田コーチが迎えます。
三塁を回ったところ。紺田コーチが迎えます。
久々にサードで出場した高浜祐仁選手。守備練習でもニコニコです。
久々にサードで出場した高浜祐仁選手。守備練習でもニコニコです。

 「そうですね。初めてかも」。年に2度は会っている祐仁選手なのに、今回は急に大人びたような気がします。この2連戦はご両親も観に来られていて久しぶりにお話しできたんですけど、その時にお母さんが「だんだん長男(卓也選手)に似てきた」とおっしゃった意味がわかりました。確かに。

 と、また脱線…。すみません。ホームランは「スライダーです」とのこと。これが昨年に並ぶ第8号、ことしは更新しそうですね。なお2試合とも途中交代していたのは「ちょっと故障もあって、復帰してそんなに経っていないので」という理由でした。少し前に体調を崩し、練習を再開したあと右肩に痛みが出たとか。DHでの出場はあったものの、サードの守備についたのは復帰後初めてだったそうです。これから徐々に戻ってくるでしょう。

ルーキー・郡捕手が爽やかでした

 2戦目の『ヒーロー賞』は日本ハムの吉田侑樹投手で、7安打ながら連打も四死球もなく、結果は1失点完投勝利でした。7回まで完封ペースだったのを何とか阻止したのが高山選手のホームランです。高山選手本人は無言で、吉田投手も既にバスの中だったため諦めかけていたところ、郡(こおり)拓也選手に遭遇。

HRの高浜選手を迎えるベンチ。左端に、コメントをくれた郡選手の姿がありました。
HRの高浜選手を迎えるベンチ。左端に、コメントをくれた郡選手の姿がありました。

 ルーキーの郡選手自身も二塁打などマルチヒットを放っているし、何より吉田投手の完投をリードしたわけですよね。なのに時間がなさそうだったので、いきなり唯一の失点について聞いてしまって…。でも丁寧に、笑顔で対応してくれました。さすが帝京高校から入ったキャッチャーですね。(←深い意味はありません)

 「ホームランを打たれたのは外の真っすぐです。しっかり踏み込まれていたと思います」。高くはなかった?「いえ、ちょっと高めでしたね」。なるほど。高山選手には3安打され「打たれましたねえ」と苦笑いの郡選手。この借りは1軍で返しましょう。「はい!頑張ります」。さわやかに去っていきました。ありがとうございます。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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