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1年半ぶりに支配下選手へ復帰 背番号『97』田面巧二郎投手《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
15日に支配下選手へ再登録された田面投手。次は1軍のマウンドです!

きのう15日、岡山県の倉敷市営球場で社会人野球の『第59回 JABA岡山大会』を観戦していた時に知らせが届きました。阪神タイガース4年目・田面巧二郎投手(25)の支配下選手登録です!JFE東日本から2012年のドラフト3位で入団して、当時の背番号は41。でも2年目のシーズンが終わった2014年秋に育成契約となり、1年5か月を116で過ごした田面投手。ケガや故障はなかったので、文字通り育成のための措置だったと思われます。

BCリーグ・福井では背番号30をつけていた田面投手。
BCリーグ・福井では背番号30をつけていた田面投手。

そして昨年は球団初の試みで、ルートインBCリーグの福井ミラクルエレファンツに3月末から約3ヶ月間の派遣。ウエスタン公式戦ではどうしても少なくなりがちだった登板機会を補うべく、BCリーグでは19試合に投げました。また11月下旬から約1ヶ月、今度は岩貞投手や陽川選手、横田選手とともに台湾のウインターリーグへ。視察に訪れた掛布新監督が「来年2月11日、安芸キャンプでの初戦に先発させる」と宣言したのは周知ですね。年が明けても『2.11』は合言葉でした。

その約束を違えることなく、ことし2月11日に掛布監督初采配の練習試合で先発。以降も、昨年までの不安定さはどこへというピッチングを続けています。もちろん失点する試合もありますが、何よりヒットや四球で走者を出しても崩れることなく投げ終える場面が増えましたね。守屋投手とともに、キャンプから今も監督やコーチの評価は変わりません。そこに訪れた支配下復帰の吉報です。

T-岡田選手に育成最後の1発を…

15日の試合後に行われた囲み取材で「これまでのことを評価してもらったと思うので、率直に嬉しいです。去年までは自分との勝負で、打者と勝負できていなかったけど、ことしは打者と勝負できている。次につながる投球ができている。支配下登録の話は、けさ聞きました。気を引き締めて頑張りたい」と語った田面投手。そして掛布監督は「116番とサヨナラだな」という言葉で祝福したそうです。

京セラドームの駐車場にて、記者陣に囲まれる田面投手。
京セラドームの駐車場にて、記者陣に囲まれる田面投手。

ちなみに、この日は10時30分開始のウエスタン・オリックス戦(京セラドーム)で、田面投手は2対2で迎えた8回に登板。T-岡田選手に3ランを浴びてチームは負けてしまい…自身も2敗目を喫しました。その直後の取材ってのも何だか複雑だったでしょう。それで取り消させるわけじゃありませんが。まあ掛布監督が言うように、116番と決別する区切りの1発だったってことですかね。

では田面投手にきのうの夜、直接聞いた話をご紹介しましょう。まず知らせはいつ?「きょうの朝、言われました」。あ、そうなんですね。前もって、それらしきことは?「いえ。まったく(笑)」。なるほど。試合中に何か気持ちの変化とか、いつもと景色が違って見えるなんてことはなかったですか?まあ普段より2時間以上も早いし京セラドームだし、違いはあるでしょうけど。「特に変わりはない…つもりでした」

T-岡田選手に3ランを浴びてしまいましたが、それに精神的な要因はなかったと言います。「調子は思ったより悪くなかったんですけど、ボールが高かったり配球が悪かったりしたかもしれません」 。しかしまあ、よりによって。「はい、よりによって」と繰り返して苦笑いです。他の試合は抑えているのに。「でも最近ちょっと点を取られていたんで」。とはいえ“昨年までの田面投手とは田面投手が違いますからね。ちょっと成績を書いておきます。

現在、8試合連続で無四球です

ゼロの積み重ねが自信となって、また力強さが増します。
ゼロの積み重ねが自信となって、また力強さが増します。

ルーキーイヤーの2013年は途中から沖縄の1軍キャンプに呼ばれましたが、宜野座での練習試合に登板して大荒れ…。その後はファームとなっています。

公式戦 8試合 9回2/3 1勝0敗

安打8 三振7 四球7 死球0

防御率 2.79

2014年

公式戦 6試合 5回1/3 0勝0敗

安打5 三振0 四球5 死球1

防御率 8.44

2015年

公式戦 9試合 12回 0勝0敗

安打15 三振10 四球10 死球0

防御率 4.50

ことし2016年は15日に続いて、きょう16日も登板。昨年までのシーズン最多試合数(公式戦)に並びました。15日の試合で2敗目を喫し、防御率も大きくなってしまったけれど、きょうは1イニングを無失点。通算成績は公式戦9試合で14回1/3を投げ、22安打 9三振 4四球で失点10。防御率は 6.28。なんといっても昨年は9試合で10個あった四球が、ことしは初登板初先発だった3月17日の中日戦(鳴尾浜)で5回を投げ4四球を与えてしまったものの、以降のリリーフ登板8試合は無四球です。

試行錯誤のときを経て、今がある

ここまでを振り返って手応えは感じている?「例年に比べて、しっかり投げられているのは実感しています。でも手応えは…。まあ実感、ですね」。球速もぐんぐん上がってきましたよ。1年目の2013年は145キロや146キロがあったけど、そのストレートで制球に苦しみ、2年目以降はまず変化球でストライクを取るところからスタートしたのです。だから140キロに満たない数字がほとんど。社会人時代、150キロを超える直球を投げていただけに心境はいかばかりかと推察しました。

ことしの安芸キャンプ、“新しい”田面投手をアピールしました。
ことしの安芸キャンプ、“新しい”田面投手をアピールしました。

でも昨年9月あたりからは真っすぐが増えてきて、球速も140キロ半ばが出ています。10月のフェニックスリーグでは最速146キロ。そして今季、4月6日の広島戦(鳴尾浜)で149キロを計測しました。ことしはもう真っすぐ中心のピッチングに戻ってきた田面投手。先ほども書いたように、走者が出ても自ら崩れることはほとんどありませんね。それが本人のいう「打者と勝負できている」という実感につながるのでしょう。

四球を連発したり打ち込まれたり、スタンドからのため息も聞こえていたであろう時期。試合でも真っすぐを投げず、課題のコントロールと向き合った時間。「あの頃に比べたら…それはもう。思い出すのはちょっと」と言葉を選びつつ、続けました。「そういうのを経て、今があるので。いい経験とは言わないけど、今こうやって支配下登録された。これからです」。もしかしたら、前へ進むためには必要な時間だったのかもしれませんね。

「いろんなことを経験しました。福井に行ったこと、そこで投げさせてもらったこと、そういうのも有難かった。いろいろ迷惑をかけたとは思いますけど」

『97』のお披露目は無失点!

なお、朝告げられた支配下登録ですが、周囲の方々には球団から発表されるのを待って、15日の試合後に連絡したそうで、お父さんとお母さんからはメールをもらったと言います。なんて書いてあった?よかったねと?「まあ、そんな感じです」。電話の向こうで照れ笑いしているであろう姿が想像できました。

16日のオリックス戦は新しい背番号で登板しました。
16日のオリックス戦は新しい背番号で登板しました。

発表の日は3ランを浴びてしまったけど「次、抑えないと!頑張ります」と締めくくった田面投手。その通り16日は神戸サブ球場でのオリックス戦の9回に登板し、1イニングを無失点で「きょうは抑えました」とのこと。背番号97の、いいお披露目ですね。それより先、試合前には熊本の地震で被災された方々を支援するための募金活動も行ったそうで、ファンの皆さまはご覧になったと思います。やはり支配下→育成→支配下の道をたどった玉置隆投手のように、チームの頼もしい存在になってください。

最後に、ルートインBCリーグ・福井ミラクルエレファンツで田面投手を(入れ替わって行ったトラヴィス投手も)すごく可愛がってくれた藤野剛志投手から、お祝いのメッセージをいただいています。「コウジロウの件、本当に自分のことのように嬉しく思います!スタートラインにまた戻ってこられたのは、彼の頑張りがあったからだと思います。支配下になったことで満足せず、もっともっと頑張ってもらいたいです!」。素敵な言葉をありがとうございました。

そして田面投手と同じく、支配下から育成契約となった原口選手、一二三選手、そしてトラヴィス投手にも、待ち望む知らせが届きますように―。それを心から願っています。

※田面投手に関する記事を、いくつか貼っておきます。公開した年月日の古い順です。

<『田面巧二郎投手に聞いてみました』 2014.1.6>

<北陸遠征こぼれ話 福井で奮闘中の田面巧二郎投手 2015.4.15>

<9日ぶりの実戦は、ルートインBCリーグ合同チームとの練習試合 2015.7.22>

<次回の先発も決めた田面、2日前の屈辱を晴らした伊藤和 2015.10.14 >

<6年ぶりの四日市、田面の気迫と山本の好投が報われず逆転負け 2016.4.11>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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