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安芸キャンプ2戦目は完封負け 青柳投手が無失点デビュー《2/14 阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
14日の練習試合・JR四国戦で初登板したドラフト6位の青柳投手。

阪神タイガース・安芸キャンプで予定されていた四国銀行との練習試合が早々に中止となった13日、雨は強弱をつけて一日中降り続きました。そのうえ日付が14日に変わった深夜3時頃、トドメを刺すかのような激しい雷雨。さすがに無理なのでは…と思ったのですが、夜明けから一気に広がった青空と強い風のおかげで、14日のJR四国戦は無事に行われました。

ウォーミングアップや練習は両チームとも安芸ドームで、試合前のシートノックからメイングラウンドへ移っています。土の状態によってはシートノックなしで試合という可能性が十分考えられるほどの雨だったわけで、これは太陽のおかげだけじゃありません。さすが阪神園芸さん!見事なグラウンドでした。お客様も試合をやるのかどうか半信半疑だったのでしょうね。お昼前から徐々に増え始め、最終的には約2000人と満員状態。最高気温が21度もあって、皆さんパタパタと顔を仰ぎながらの観戦です。

6回までセカンドを守った板山選手。ベースカバーに走るところ。
6回までセカンドを守った板山選手。ベースカバーに走るところ。

さて試合は、小嶋投手が3回パーフェクトの立ち上がりを見せましたが、筒井投手が4番に2ランを浴びてしまい、9回にはトラヴィス投手の暴投で計3失点。打線は散発3安打の完封分けです。ルーキーは板山選手が3番セカンドで先発出場し、ヒットはなかったものの痛烈なライトライナーなどで観客を沸かせ、また青柳投手が実戦デビュー。1四球のみで無失点でした。

《練習試合》2月14日

阪神- JR四国 (安芸)

JR四国 000 200 001 = 3

阪 神 000 000 000 = 0

◆バッテリー

【阪神】小嶋-筒井-桑原-青柳-トラヴィス / 原口-小豆畑(6回~)

【JR四】 藤川(6回)-上野哲(1回)-田内(2回) / 小林

◆本塁打 JR:佐藤2ラン(筒井)

◆二塁打 JR:小林

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)

1]中:柴田   (4-1-0 / 0-0 / 1 / 0)

2]右:俊介   (4-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

3]二左:板山  (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

4]捕一指:原口 (3-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

5]左一:一二三 (3-1-0 / 0-0 / 0 / 1)

6]三:西田   (3-0-0 / 1-0 / 0 / 1)

7]遊二:森越  (3-0-0 / 2-0 / 0 / 0)

8]指:清水   (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

〃遊:植田   (1-1-0 / 0-0 / 1 / 0)

9]一捕:小豆畑 (2-0-0 / 0-1 / 0 / 0)

◆投手(打-振-球/失点-自責) 最速キロ

小嶋 3回 30球 (0-3-0 / 0-0) 140

筒井 2回 26球 (3-0-0 / 2-2) 138

桑原 2回 28球 (1-2-0 / 0-0) 145

青柳 1回 26球 (0-1-1 / 0-0) 141

トラ 1回 26球 (0-1-3 / 1-1) 139

試合経過

先発の小島投手。3回をわずか30球でパーフェクトピッチング!
先発の小島投手。3回をわずか30球でパーフェクトピッチング!
4回から登板した筒井投手。2死を取ってから二塁打、そして2ランを浴びました…
4回から登板した筒井投手。2死を取ってから二塁打、そして2ランを浴びました…
桑原投手は2イニングで1安打2三振の無失点です。
桑原投手は2イニングで1安打2三振の無失点です。
トラヴィス投手はちょっとコントロールが定まりませんでしたね。
トラヴィス投手はちょっとコントロールが定まりませんでしたね。

先発の小嶋は1回、三ゴロと連続三振で三者凡退。2回は内野ゴロ2つに外野フライと、わずか7球で三者凡退。そして3回は先頭を空振り三振、あとは遊ゴロ、遊ゴロでやはり三者凡退。3回パーフェクト、球数30と見事な立ち上がりでした。

ついで登板した筒井が4回、1番と2番を中直と中飛に打ち取り、柴田の好守備もあって簡単に2死とします。ところが3番・小林に右越え二塁打(俊介がダイビングキャッチを試みるも捕れず)を許し、続く4番・佐藤に初球を左中間へ…。先制の2ランを浴び、がっくりするバッテリーと対照的に三塁側ベンチは大賑わいでした。5番を中飛に仕留め、5回は先頭に中前打されますが、原口の二塁送球から2-6-3-6と挟んでタッチアウト、あとは抑えた筒井です。

3人目は桑原、キャッチャーも小豆畑に交代。先頭の9番・野尻をサード内野安打と西田の送球エラーで二塁へ進め、犠打で1死三塁となりますが、後続を断ち無失点。7回も三者凡退でした。

8回はいよいよルーキー・青柳が登板。お客様も新聞やニュースでよく名前を聞いていらっしゃるのでしょう。大きな拍手が起こります。そんな中でゆっくりと投球練習を始めたと思ったらバランスを崩し、とんでもないボールが。本人は苦笑いし、スコアをつけていた先輩ピッチャーも笑いをこらえて…いや笑っていましたね、思いきり。気を取り直して投球練習を終え、まず先頭の7番・岩部(右)に対して140キロの真っすぐで空振りを取ります。

そのあとボール、空振り、最後は140キロの真っすぐで空振り三振!続く代打・佐々木(左打ち)に対してはカウント2-2から5球目で遊ゴロ。2死となってから9番・野尻(左打ち)に四球を与えました。続く山下(両打ちで左打席)に1球投げたところで、一塁走者の野尻が体調不良で交代。打者・山下は遊ゴロ、と思ったら6回からファーストに回っていた一二三が捕れずエラー。しかし次の西岡(右打ち)を二ゴロに仕留めて2者残塁、無失点でした。

1回、先頭で中前打を放ち二盗成功!さすが柴田選手です。
1回、先頭で中前打を放ち二盗成功!さすが柴田選手です。
5回、ここも先頭で左前へチーム2本目のヒット、一二三選手。
5回、ここも先頭で左前へチーム2本目のヒット、一二三選手。
チーム3安打目は植田選手。打球が抜けていくところ。
チーム3安打目は植田選手。打球が抜けていくところ。
そのあと盗塁も成功させています!
そのあと盗塁も成功させています!

9回はトラヴィス。先頭に四球を与え、4番・佐藤はバント失敗(小豆畑がファウルフライをナイスキャッチ!)、森山の遊ゴロで2死二塁となりますが、そこから連続四球で満塁とし、8番・佐々木への6球目が打者の背中を通る暴投…。これで1点追加されました。次の真っすぐで空振り三振を奪い、2者残塁。ノーヒットながら3四球で1失点です。

一方、こちらの打線は1回に先頭の柴田が中前打し、1死後に盗塁を決めるも後が続かず無得点。そこから2回、3回、4回と三者凡退が続きます。3回の清水をはじめ、いい打球はあったのですが、間を抜けません。ようやく5回、先頭の一二三が詰まった当たりながら三遊間を抜きました。と思ったら次の西田が二ゴロで併殺、森越は見逃し三振と3人で終了。6回は小豆畑の四球のみ。相手の先発・藤川に対して2安打で得点なし。

7回は左の上野から板山がライトへ素晴らしいライナーを放ちましたが、外野フライ3つで三者凡退。8回は右の田内に代わって、西田が見逃し三振。森越のファウルフライをライトがランニングキャッチで2死。途中出場の植田が右前打を放ち、盗塁成功!1回以来、久々に得点圏へ走者を置いたものの小豆畑は中飛で得点なし。9回は三者凡退で試合が終わりました。

山山コンビが外野争いを激しくする

掛布監督は試合を振り返り「真っすぐ打つのを基本にやってるんだけど、変化球が多かったかな。まだその対応がね。でも若い子だから。対応できるようなら、もう…」と言って少し苦笑い。“対応できたら”ここにはいない、という意味でしょう。「それに対応できる子はきょう休ませたしね」。これは狩野選手や坂選手のことと思われます。でも「真っすぐに対するスイングは強くなっている。強く振れるような感じになってきているんですよ」と続けました。

試合中もベンチから掛布監督(右端)の声がよく聞こえます。
試合中もベンチから掛布監督(右端)の声がよく聞こえます。

板山選手については「真っすぐを待って高めに浮いたカーブを打ちにいったのがよかった」と8回にJR四国の2人目・上野哲投手から打った右直を褒めています。ツーボールからの3球目を打った目の覚めるような当たりで、監督が言う通り「左ピッチャーから、1球で仕留めるくらいのいいライナー」でした。そして「16日は高山もシートバッティングに入ってきますんで、板山にも刺激があるでしょう。外野の中堅クラスにもね。高山がフルメニューをこなすようになると、彼が入ることによっていい刺激になるよ」と、終盤での熱い戦いを予言。

3番セカンドで先発出場した板山選手。これは1打席目の写真です。
3番セカンドで先発出場した板山選手。これは1打席目の写真です。

高山選手はきのうの試合中、投球練習場で打席に立ってピッチャーの球を見ていました。その高山選手の初実戦となる20日の練習試合・西武戦は「きょう休んでいた選手を使うので、2人とも下位になるだろう。高山もある程度守らせたい」ということで6番か7番あたりでしょうか。ポジションは、この日の試合前シートノックでも守っていたセンターだと思われます。「きょうも強いボール投げられていたよ。いずれにしても16日のシートバッティングの感じを見て、そのあとですね。終わってから打順を考える」と掛布監督は話しました。

最後に「青柳はブルペンの方が迫力あったね。緊張したんじゃないかな。きょうブルペンで見た田面もいいし、ピッチャーはみんなバランスがいいね」とのことです。ただし入れ替えとなると、宜野座で落とす選手がいるかどうか。これは金本監督の判断に任せるしかないのでしょうね。

緊張、収穫、課題の初登板

次に“プロ初登板”だった青柳投手。初めての試合で緊張したかと聞かれ「しましたねえ!」と即答です。投球練習中にコケかけたのは…「(踏み込む場所が)自分の投げるとこじゃなく、違うとこが掘れていたので。恥ずかしかったです」。ベンチでみんなに、かなり突っ込まれたみたいですよ。思い出して再び赤面していました。

実戦デビューを果たした青柳投手。ワクワクさせるフォームですね。
実戦デビューを果たした青柳投手。ワクワクさせるフォームですね。

試合を振り返って「自分の中で全然よくなかったです。ボールが抜けていたり。変化球でストライクが入らなかったですね。一番悪かったのは2死からのフォアボール。一番やっちゃいけないことなので、次から気をつけます」とのこと。三振は?「真っすぐです。基本、8割か9割が真っすぐでした」。小豆畑選手も「真っすぐ、よかったですよ~」と言っています。

一塁ランナーが突然、嘔吐して交代するというアクシデントもあったけど。「ビックリしました!」。微妙な間が空いたのは大丈夫だった?「どうしていいかわからなかったんですけど、小豆畑さんが『投げていいよ』と言ってくれて投げられたのでよかったです。フォアボールのあと修正する時間ができて。アクシデントですけど、自分にとってはよかったですね」

3アウト目の二ゴロをさばいた森越選手(左)とともにベンチへ向かう青柳投手。
3アウト目の二ゴロをさばいた森越選手(左)とともにベンチへ向かう青柳投手。

1イニングを無失点で投げ終えたことはよかったと安堵の表情を見せます。次は変化球も多く入れるかと聞かれ「基本は真っすぐで押したいですが、それはキャッチャーの指示で。左バッターの外、右バッターの内にしっかり(指の)かかったボールを投げられるようにしていきたい」と答えました。

球速も140キロ前後が出ていて「大学時代のMAXは144キロなんですけど、この時期は135とか136しか出ていなかったと。暖かくなってからですね。まだまだいけるなと思う」と笑顔です。なお13日の予定が雨で、スライド登板となった点は「きのう投げない予定がピッチングをして、ここに来て初めて3連投でした。そういうことになってしまったけど、体的には問題なかったのでよかったというか、(それがわかって)収穫というか」と前向きにとらえているようです。

ちなみに、滞在予定を一日延ばして息子の“プロ初登板”を生でご覧になったお母さんは、試合後「私が緊張しました!」と笑って「0点に抑えてくれてホッとしています。これで落ち着いて帰れます」と球場をあとにされました。

新球・シュートにも手応え

最後に3回をパーフェクトと、貫録を見せた先発・小嶋投手です。「結果として3回をしっかり投げられたので、それはよしとして、高めに浮いたボールもあったからプロ相手ではどうなるか、ですね」と言います。それは高めでも力で抑えていきたいということ?それとも低めに集めたい?「両方です。低めにも集めたいし、高めでファウルも取りたい。NPB相手には」

投げ終えてベンチに戻る小嶋投手と原口選手の先発バッテリー。
投げ終えてベンチに戻る小嶋投手と原口選手の先発バッテリー。

シュートも投げていたようですね?「このキャンプからシュートに取り組んでいて、それがうまくいきました。左バッターにシュート、右にはツーシーム気味」。シュートはこれまで投げていなかったそうで「新しい球を実戦で試せてよかった」と話しています。

他の投手陣とはタイミングが合わなかったので、キャッチャー2人の話を聞きました。そのあたりは次の記事でご紹介します。今しばらくお待ちください。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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