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次回の先発も決めた田面、2日前の屈辱を晴らした伊藤和《10/13 阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
1イニングで5四球3暴投と荒れた2日前とは別人!2回を完璧に抑えた伊藤和投手。

秋季教育リーグの『みやざきフェニックス・リーグ2015』は、きのうで第2クールが終わりました。きょう14日は休養日で、阪神は楽天と練習試合の予定だったのですが都合により中止、というか事前に取り止めとなっています。そのためチームは、生目の杜第2球場で10時から2時間弱の練習を行いました。午後は初めての休日というわけで、出かけた人、ひたすら寝た人など思い思いに過ごしたようですね。

14日、練習のみ行われた快晴の生目の杜第2球場。練習でも球団旗が揚がっています。
14日、練習のみ行われた快晴の生目の杜第2球場。練習でも球団旗が揚がっています。

なお、きょう6人ずつメンバーが変更されます。帰るのは横山投手、守屋投手、トラヴィス投手、岡崎選手、清水選手、田上選手で、入れ替わって宮崎に来るのが鶴投手、島本投手、歳内投手、梅野選手、伊藤隼選手、江越選手です。ルーキー2人については「ちょっと疲れも」とのことでしたが、少し気になりますね。トラヴィス投手は「(12日のDeNA戦が)ああいう結果になってしまったんで…」と無念の表情。きっと悔しくて寝られなかったと思いますよ。絶対に秋季キャンプでリベンジしましょう!

きっちりリベンジしたのは伊藤和投手です。13日の試合で完璧なリリーフを披露しました。その前に投げた藤原投手から引き継いでの8者連続三振は圧巻!先発した田面投手は、4点は失ったものの久保コーチから「次回も先発」との評価をもらっています。打線は中谷選手、北條選手、植田選手がマルチヒットでした。1点差で負けたけど収穫大の阪神‐日本ハム戦(西都原運動公園野球場)の詳細をご紹介します。

《フェニックス・リーグ》10月13日

阪神- 日本ハム (西都)

日ハム 000 040 000 = 4

阪 神 000 020 100 = 3

◆バッテリー

【阪神】田面-藤原-伊藤和 / 清水-岡崎(6回~)

【日本ハム】森内(2回)-乾(3回)-浦野(2回)-榎下(2回) / 清水

◆二塁打 松本、高濱

◆打撃 (打-安-点/振-球/盗塁/失策)

1]中:横田 (5-1-0 / 2-0 / 1 / 0)

2]左:緒方 (3-0-0 / 1-2 / 0 / 0)

3]指:北條 (5-2-2 / 0-0 / 0 / 0)

4]右:中谷 (2-2-1 / 0-2 / 0 / 0)

5]三:陽川 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

6]一:西田 (4-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

7]二:荒木 (4-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

8]捕:清水 (2-0-0 / 0-0 / 0 / 0)

〃捕:岡崎 (2-0-0 / 1-0 / 0 / 0)

9]遊:植田 (4-2-0 / 0-0 / 1 / 0)

◆投手(打-振-球/失点-自責)

田面 6回 102球 (7-4-1 / 4-4)

藤原  1回 25球 (1-4-1 / 0-0)

伊藤和 1回 33球 (0-4-0 / 0-0)

試合経過

田面は1回、二ゴロ2つで2死を取ったあと松本に真っすぐを左前打され、4番・佐藤賢はストレートの四球。ヒヤリとしたのですが、この日の田面は違います。続く大島を二ゴロに打ち取って切り抜けると、2回は高濱を3球で空振り三振!外のスライダーでした。渡邉には左前打されたものの後続を断ち、3回は内野ゴロのみで三者凡退!4回は佐藤賢をやはりスライダーで空振り三振、大島と高濱はまたまた内野ゴロで三者凡退。荒木と陽川の守備も光ります。

プロでは初めて5回を投げ切ったという田面投手。
プロでは初めて5回を投げ切ったという田面投手。

4回まで64球で2安打無失点の田面。しかし5回は1死後に3連打されて満塁とし、2番・太田の左犠飛で1点。続く松本には三塁線を破るタイムリー二塁打。佐藤賢の左前2点タイムリー。大島は三振させますが、この回7安打を浴びて4点を失いました。

打線は1回が2四球のみ、3回は2人目の乾から先頭の植田がショート内野安打と盗塁成功!そのボールが暴投で三塁まで進みます。西田は振り逃げ(三振と暴投)、2死後に中谷が2打席連続四球を選び満塁としながら得点なし…。2回と4回は三者凡退です。

そして4点を先取された直後の5回、植田と横田の連打に加えて暴投、さらに緒方の四球で無死満塁として北條が左前へ2点タイムリー!次の中谷はサード内野安打で再び満塁となりますが、陽川の三ゴロ併殺打、西田の三ゴロで2点止まり。6回は三者凡退で、7回は横田がショートのエラーで出て1死後に盗塁成功!北條は右前打、中谷の時に暴投があって1死二、三塁となり、中谷が左前タイムリー!1点差に詰め寄って、なおも1死一、三塁と同点のチャンスは続いたものの、陽川は左飛、西田は捕邪飛で同点ならず。

その前に投手陣は、2人目の藤原が6回、先頭の高濱に中越え二塁打を許し、2死後に四球でを与えて一、三塁としますが岸里を空振り三振に斬って取りました。7回は太田、松本、代打・荒張をすべて三振で退けて計4者連続三振!2イニングを0点に抑えます。

ついで登板した伊藤和が5番からの大島、高濱、渡邉を、これまた3者連続三振!おまけに9回の先頭・宇佐美も空振り三振!6回から9回にかけて、藤原と伊藤和で8者連続三振を奪ったわけですよ。これはなかなか見られない光景で、1番から8番までの8人が連続したとあって、我々は9番・清水の打席に注目。しかし結果は投ゴロでした。とはいえ、2日前にストライクが入らず苦労していた伊藤が、最後は岸里を三直に打ち取って、2イニングを完ぺきに抑えたことが嬉しかったですねえ。

喜んでいられないのが打線で、8回と9回をキッチリ三者凡退で抑え込まれ、1点及ばず敗戦。第2クールの4試合は0勝3敗1分けで、通算すると2勝5敗1分け。この2勝は1軍選手のいた6日と7日ですけど…何か?

それぞれの収穫に久保コーチは…

まず久保投手コーチの話からご紹介しましょう。「田面、よくなってきた。彼しかない独特なボールを持っているからね。腕が緩まなくなったよ。最後は狙われたけど、右打者から外のスライダーで三振を取っていたし。それを見せ球にして、いかにボール球にして三振を取るとか凡打にするとか、そういう芸当ができるようになった。そこまできたことが進歩」と目を細め「次も先発をやらせるよ。もう少しイニングを投げさせたい」と明言しました。

続けて「藤原も練習の賜物!伊藤和も、この間の屈辱を振り払ってくれて。2イニング、されど2イニング。きょうダメなら帰そうと思ってたくらいだった。2日で変わったのは精神的なことだけじゃない。夜間練習で変えたんですよ。しっかり居残り特訓をしましたから!よかったですね」と話す久保コーチも、なんだか嬉しそうです。

この秋に賭ける田面&藤原

この日の田面投手は最速が146キロ。しっかり打者と勝負しました。
この日の田面投手は最速が146キロ。しっかり打者と勝負しました。

先発の田面投手は4回まで2安打2三振1四球で無失点、12アウトのうち9つがゴロアウト(そのうち6つが二ゴロ)と上々の出来でした。「そうですね。今までのことを考えたら。しっかりバッターと対戦できたかなと思います。考えすぎずに。これまではフォームのことやフォアボールのこと考えすぎていましたね。それが、打者に対してとか、今までと違うことを考えられる」

フェニックス・リーグでは順調に結果を残しているのでは?「全体的にまとまってきていました」。5安打を集中されて4点を失った5回は残念。「3巡目、2巡目と向こうも反応してくるので、そのへんを工夫して投げられればと思う。でも5イニング投げられたのはよかった。自信になります」

5回はプロ最長?「おそらく初めてだと思います。フォアボールも1つだけだったし、右打者に対して外へ投げられたこともよかった。左打者には抜ける球もあって、そこは反省点というか修正すべきですね。左に対して入り込めていないところは」。次も先発と久保コーチが話していました。「そうなんですね。まだ直接は聞いていなくて。でも頑張ります!」。次が、いえ次の方が大事かもしれません。期待していますよ。

藤原投手は2イニングを投げ1安打無失点!締めは4連続奪三振です。
藤原投手は2イニングを投げ1安打無失点!締めは4連続奪三振です。

2イニングを無失点の藤原投手は「いや~もう毎年そうなんですけど、とにかく結果を出さないと。でなきゃ秋季キャンプにもつながらないし、この時期は…。いつもそう言いながら、これまで6年ダメだった。変えるところがあれば変える、いいところは忘れないよう徹底的にやる!」と力を込めました。フェニックスで結果が出ていますね。「練習でやっていることができれば、内容もいいはずなので」

課題、修正点、新たな取り組みではなく、結果を出し続けて勝ち取るしかない立場だということでしょう。自分より若い選手たちにも負けない練習量と、こういうコメントに必死さが伝わってきます。

土俵際で残った伊藤和

伊藤和投手が「知っていたら狙った」と悔しがる、藤原投手からの連続三振は8で終了。
伊藤和投手が「知っていたら狙った」と悔しがる、藤原投手からの連続三振は8で終了。

「おとといとは別の人?」と言ったら、伊藤和投手は「あはは」と明るい顔で笑いました。「前回は投げ急いで突っ込んでしまったので、きょうはマウンドに上がる前から、自分のリズム、間合いでゆっくり投げようと意識した」そうです。「ピッチング練習から、いい感じで投げられていました。前とは違って」とのこと。

ここでスコアブックを見せ「ほら、ここからここまで8つ続けて三振」と言ったら「うわ!マジですか」と伊藤和投手。気づいてなかった?「知りませんでしたよ~。わかっていたら、ここ(9番の清水選手のところ)も狙ったのに」と少し悔しがっています。実は清水選手への3球目がファウルになったんですが、捕りに行く素振りをみせなかった岡崎捕手はわかっているのかと思いきや「ええーっ!そうやったんですか?知らんかった。すごいっすね」と。誰も気づいていなかったのかな。

試合は負けたんですけど、伊藤和投手(右)の好投にみんなが笑顔です!
試合は負けたんですけど、伊藤和投手(右)の好投にみんなが笑顔です!

伊藤和投手が奪った4三振、3つがチェンジアップで1つがスライダーだったとか。日本ハムの高濱選手は「フォーク」と言っていましたけど。「あれ、チェンジアップなんですよ。でもフォークみたいに落ちてくれるんで。変化球は思い通りに結構投げられたかなと。でも真っすぐはまだまだです。最後(岸里選手)も、真っすぐで三振を狙ったけどサードライナーでしたね。次は真っすぐで三振を取れるようにしたい。真っすぐあっての変化球なので」

三振締めではなかったけど、2イニングを完ぺきに抑えたのは収穫。「そうですね。きょうも前回みたいなピッチングやったら、何しに来た!って言われるとこでした」。そして「ほんと、よかった」と心底ホッとした様子です。

マルチヒットの3人+横田

北條選手は5回、無死満塁で2点タイムリー!
北條選手は5回、無死満塁で2点タイムリー!

2安打2打点の北條選手。5回の2点タイムリーは「満塁やったんで狙い球を絞らずに、どんどんいこうと思っていました」と言ったあと、続けて「前の打席はチャンスで打てなかった。あそこでフライを上げてしまった。あの場面は点が取れたのに」と、3回1死一、三塁で捕邪飛だったことを猛省。

でも5回は2人を還すタイムリーだったし、さらに7回も1死二塁から右前打して、中谷選手のタイムリーにつなげています。「7回の打席は、追い込まれていたので逆方向を意識して。内よりの球を詰まりながらライトに打てたのがよかった」と話していました。

中谷選手は7回にタイムリーを放って1点差としています。
中谷選手は7回にタイムリーを放って1点差としています。

中谷選手も2安打で、7回は1死二、三塁で1点差に詰め寄る左前タイムリー。「よかったです!真っすぐを張った中で、一発で仕留められた」 。ちょっとヒットが出ていなかったですね。「でも、やりたいことをやれているし、結果は出ていなかったけど、これを続けていこうと思っていました。タイミングを早く取ったり、当てにいかず振り切ることを、このあとも続けてやっていきたい」

5回に先頭で左前打。植田選手はこの日、マルチヒットでした。
5回に先頭で左前打。植田選手はこの日、マルチヒットでした。
横田選手も5回に左前打を放っています。7回には盗塁も成功。
横田選手も5回に左前打を放っています。7回には盗塁も成功。

植田選手も2安打を放っていて「内野安打でもヒットを打ったんで、気持ち的に楽になりました」と笑顔。それも、次の左前打もファーストストライクを仕留めたもの。「きょうの試合は、『初球から振りにいく』とミーティングで言われていたので」。なるほど。とはいえ実際に最初のストライクを振れたのはいいことです。またフェニックスでは「真っすぐをしっかり打てるようにという課題を持っています」と植田選手。15日からの第3クールも引き続き頑張ってくださいね!

最後に横田選手は、ひとことずつでした。5回の痛烈な左前打は「よかったです!」。7回はエラーで出塁して盗塁。フェニックス初盗塁かな?「はい、初めてです!頑張ります」。2年目で初体験のフェニックス・リーグ。試合も、夜間練習も、先輩との食事も、すべてが楽しそうで生き生きしていますねえ。そろそろ大きいのも見たいので、よろしくお願いします。

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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