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『三菱重工長崎 4番サード 野原将志』 もと小虎の活躍は何よりの朗報 

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター

阪神ファームは福岡の雁の巣に遠征中ですが、あいにくのお天気で4日に続き5日も中止になってしまいました。そこで、このところ頻繁に登場する「もと小虎」の話をまたご紹介しましょう。ちょうど5日に田中将大投手がメジャー初先発初勝利。昨年まで阪神に在籍した野原将志選手は同じ1988年生まれで、同じ「まーくん」です。

「勝つしかない」という覚悟

1月から地元の三菱重工長崎硬式野球部に入った野原選手は4月、関連会社の嘱託社員となりました。「朝は会社で午後が練習、自分のためにお金を使う時間はありませんねえ」という毎日です。3月中には13試合のオープン戦を行い「社会人とは3試合だけで他は大学。3割は打っていると思いますよ」と言いますが、自分の成績は気にしていないそうです。「社会人はチームの勝利が一番だから」

背番号3で守備はサード、打順は「一応、4番です」。オープン戦の最後、3月27日には長崎で三菱重工神戸と対戦しています。「若さん(もと阪神、日本ハムの若竹竜士投手)も来ていたんですけど、雨で登板がずれたみたいで投げなかったですね。元気でしたよ」。また三菱重工には、広島と阪神で活躍した町田公二郎さんが広島のコーチでいますし、もと西武の貝塚政秀さんがことしから古巣・長崎にコーチとして就任しました。

でもNPB経験者が選手として三菱重工の野球部に入るのは、神戸の若竹投手や長崎の野原選手が初めて。中でも2017年に創部100周年を迎える長崎は伝統のあるチームなんですけど、ここ数年は成績が振るわず、クラブチームへ移行という可能性も懸念されてきました。そこで補強に力を入れプロ経験者を獲得したようです。

「責任もプレッシャーも感じています。勝つしかない。負ければ風当りが強くなる。当然のこと。それくらいの覚悟で来ましたから」

早くも秋の選手権に向けた戦い

社会人には都市対抗野球大会(7月)と日本選手権(11月)があり、既に日本選手権の対象大会は始まっています。この対象大会に優勝すれば自動的に日本選手権本大会の出場権を獲得できる、と野原選手に教えてもらいました。3月の『JABA東京スポニチ大会』を制したJFE東日本が一番乗り。そして三菱重工長崎は『JABA静岡大会』に出場すると聞き「え、なんで静岡の大会に?」と…。何も知らない私は再び野原選手に教えてもらったところ、地区は関係なく出場できるんですね。

静岡大会も東海地区以外に東北のJR東日本東北や近畿の日本新薬などが出ています。野原選手によると、三菱重工長崎はポイントが足りないので5月のJABA九州大会に出られないとか(ポイントについてはまた勉強)。せっかく長崎であるのに残念ですね。「九州大会にパナソニックが出ますよ。橋本に一度、電話しました」。野原選手と同期の橋本良平選手がことし入社したパナソニックは、その前に今月11日からのJABA長野大会も出場予定。この大会には林啓介投手が入った西濃運輸の名前もありました。

また若竹投手がいる三菱重工神戸は今月10日からのJABA日立市長杯選抜野球大会に、4月28日からのJABA京都大会には三菱重工神戸とパナソニックが、5月2日からのJABAベーブルース杯大会(岐阜)は西濃運輸と穴田真規選手が所属する和歌山箕島球友会もエントリー。すべて11月の社会人野球日本選手権対象大会です。優勝すれば出場権獲得ですから、早く決められれば言うことないでしょう。ちなみに優勝チームは選手権の予選を免除されるため、そのチームの地区では枠が1つ空く…ということも“野原先生”に教えていただきました。「JR九州やHonda熊本が、どこかで優勝してくれたらラッキー」と言いながら「要するに勝てばいいんですよ!」と野原選手。その通り、自力で決めればいいんです。

打って“走って”勝利に貢献

というわけで今、三菱重工長崎は静岡県の浜松球場で、ことし初の公式戦となる『第61回JABA静岡大会』に臨んでいます。3日は、鳴尾浜の育成試合でも顔を合わせたジェイプロジェクトと対戦して7対3で勝ち。野原選手はもちろん4番サードで出場して3打数2安打1打点。「おまけにレフトのエラーでホームまで走りました」。うわ~大変、一塁から?「いえ打ってホームまでですよ!久しぶりにあんな走った。肺がちぎれるかと思いましたよ」

それはすごいなあ。見たことがないかも。「と思うでしょ?実はプロでランニングホームラン打ってますから」。ええっ!ランニングホームランがありましたっけ?大和選手や清水選手、森田選手は覚えているのに。「1年目か2年目の練習試合、しかも鳴尾浜です」と言うので調べてみました。いや、決して疑ったわけではありません。

すぐに発見しましたよ。1年目の2007年7月17日、鳴尾浜で行われたサーパス(オリックスのファームです。懐かしい!)との練習試合。2回1死ランナーなしで野原選手が大きな当たりを放ち、レフトの一輝選手はフェンスに激突して倒れたまま。スコアブックに書かれた野原選手のコメントは「あ、倒れてる。三塁ストップかなと思ったらコーチの手が回ってた。まさかGOとは…。人生初のランニングホームランです。これオールスターだったらMVP300万円でしょ」でした。

報告すると「それそれ!」という返事。この時は第1打席で。そのあと4打席はノーヒットですね。疲れてしまったのかな?「だったら、きょうは最後の打席でよかった」と笑っています。なるほど最後でしたか。それはよかった。なんたって、あれから7年も経っていますしねえ。あ、失礼。

決勝T進出!3戦で11打数5安打

続いて4日は、昨年の都市対抗優勝のJX-ENEOSが相手。1回に1死からヒットと二塁打で先制し、4番・野原選手の中前打で1死二、三塁となります。次が四球で満塁となり6番が走者一掃の三塁打!その裏に1点返されますが、2回と4回にも1点ずつ追加、相手も1点入れ、7回を終わって6対2と三菱重工長崎がリード。

さらに8回、2点を加えて8対2とした直後にJX-ENEOSがヒットと2四球などで2死満塁。そこから3連続タイムリーとさすがの追い上げを見せるも長崎は3点のリードを守って逃げ切り!野原選手は5打数1安打です。4日は野原選手の26歳の誕生日だったので「バースデーアーチなんぞ」と前日に言ったら「アーチは期待しないでください。ライト前くらいで」と。でも公約通りバースデーヒットです。「やっぱり強かったですよ。先制できたのが大きかった!」とホッとした様子でした。

5日の相手は三菱重工長崎と同じく2戦2勝の王子で、4日はジェイプロジェクト相手に19対1で7回コールド勝ちしています。「とにかく、あす勝たないと意味がないんで!」と気合を入れて臨んだ試合は、4回に死球と野選で無死一、二塁で4番・野原選手が左前タイムリー!続く海端選手のタイムリーで2点を先取しました。5回に押し出しの四球で1点返されたものの7回に2点を追加、そのまま4対1で逃げ切っています。3戦全勝でBブロックの1位となり、決勝トーナメントに出場決定。準決勝でDブロック1位と対戦して、それに勝てばA1位とC1位の勝者と決勝で戦うわけです。

この日の王子戦は四球、左前タイムリー、左飛、右前打で3打数2安打1打点。「当たりは悪くないですよ。とりあえず勝ってよかった!あと2つ勝てば選手権の枠が取れるので頑張ります」と野原選手。この3試合は11打数5安打2打点で、打率が.455です。もう1つの会場(草薙球場)の日程が雨でずれたため、準決勝と決勝は1日遅れて7日に浜松球場で行われます。

野原選手はパパになりました!

プロとの違いを聞くと「1球で試合が動くという、1球に対する思いは同じです。変わらない。ただ社会人はチームプレーで、自分の調子は悪くてもチームが勝てばいい。プロは個人個人なので」と答えました。それと「小豆畑に用具を送るように言っといてください。あ、ミットはいいけどキャッチャー道具は要らんて。オレ使わんけん」。ぷっ!野原選手の訛りを聞いたのは初めてかも。はい、同い年の小豆畑選手に伝えておきます。

2012年12月12日に入籍し、昨年12月15日に披露宴、そして先月12日に男の子が生まれました。今は奥さんの実家にいるので、週末ごとに行っても「まだ3回しか会っていない」そうです。「もう顔ははっきりしてますよ。時々、似てるなと思います」とのこと。ぜひ野球をさせてくださいね。「うーん。健康に育って、やりたいことをやってくれればいいですよ」。そうなんですか。ちょっと寂しいかなあ。「でも野球やるんじゃないですか、見ていたら。それがわかるくらいまでやっていたら。まずは僕が頑張らないと!」。新米パパは、しっかりと息子に誓いました

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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