3月26日にいよいよ2021年のプロ野球が開幕する。それに先立ちデータ分析の視点から今季のパ・リーグを展望してみたい。

 表には昨年の順位と成績、それに加えオフの入退団選手をまとめている。

画像著者作成
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<ソフトバンク>

 昨季王者のソフトバンクの主要メンバーでこのオフに退団となったのはマット・ムーアくらいだろうか。退団はあったものの依然として投手の選手層は厚く、それほど大きな戦力ダウンにはつながらないだろう。ただ選手層が厚いソフトバンクでも、離脱をカバーしきれないレベルの選手が存在する。柳田悠岐だ。柳田が離脱した場合、得点力の大幅ダウンは免れない。ソフトバンクとしては、柳田をいかに多くの試合に出場させられるか、コンディション管理が鍵になるだろう。

 柳田のほかにも、コンディション管理が重要になる選手はいる。松田宣浩は開幕時点で37歳。長年ソフトバンクの三塁を守り続けてきたが、ここ数年はその傾向を強めている。

またウラディミール・バレンティン、ジュリスベル・グラシアル、アルフレド・デスパイネらについてもすでに30代中盤を迎えている。彼らにフル出場、また全盛期の姿を望むのは難しいだろう。その中でもなるべく高いパフォーマンスを維持するには、休ませながらの出場が必要になる。柳田だけでなく、こういったメンバーについてもコンディション管理が鍵となりそうだ。

<ロッテ>

 ロッテは昨季2位に躍進。だだ上位にはつけたものの、首位ソフトバンクとの力の差は大きく、どちらかというと力量的には3位以下のチームのほうが近い。まだリーグ内では戦力が整っているとは言い難い状況だ。

ロッテで長年課題になっているのが、遊撃手だ。近年は藤岡裕大が務めることが多いが、攻守両面で他球団に差をつけられるシーズンが続いている。チームはこうした状況を受け、オフに外国人遊撃手アデイニー・エチェバリア、守備なら即戦力という声もあった大学生遊撃手の小川龍成を獲得。弱点に対して着実に補強を打ってきた。ただ新型コロナウイルス感染に伴う入国制限を受けエチェバリアはいまだ入国できず、小川もオープン戦で負傷してしまった。遊撃のポジションは昨季と同じ状況に戻ってしまっている。藤岡自身に改善が見られるのか、あるいはエチェバリアや小川が早い段階で合流し結果を残すのか、また別の選手が現れるのか。遊撃の弱点が埋められるかどうかはロッテ浮沈の鍵を握るポイントだ。

またチームは2019年にブランドン・レアード、レオネス・マーティンの両外国人打者を獲得。これに球場の改修も重なり、長年課題となっていた長打力不足を解消した。しかしレアードが故障となった昨季は再び長打力が低下。1試合あたりの平均得点は3.84点でリーグにとどまっている。ドラフトを経て入団する日本人選手とは異なり、外国人選手は契約が切れてなお保有することはできない。今季だけでなく、中長期的に長打力を維持するためにも、日本人スラッガーの育成は進めたいところだ。

投手については、昨季途中から加入した澤村拓一、チェン・ウェインが退団。昨シーズン途中の加入ながらチームを支えただけに、ダメージにはなりそうだ。ただ、投手陣は今季も飛び抜けた存在こそいないものの、一定の力を示しそうだ。またロッテでは2019年以降、吉井理人投手コーチのもと、連投や回またぎを避ける負担のかかりにくい投手運用が行われている。こうした管理・運用力は年間を通して投手のパフォーマンスを維持する優れた試みといえる。投手の管理面で他球団をリードする可能性は高そうだ。

<西武>

 昨季の西武は秋山翔吾の退団に加え、森友哉、外崎修汰、山川穂高らが揃って不調に陥り、一気に得点力を落とした。今季彼らの復調は上位進出の必須条件となる。特に森、外崎は他球団では守備重視の選手が配置される捕手、二塁手ながら、極めて高い攻撃力を発揮できる選手だ。彼らが復調するようなら、この2ポジションで他球団に圧倒的な差をつけることができる。

野手については彼らが復調すれば大きな問題はないように見えるかもしれないが、実は弱点も多い。特に弱点が集中しているのが外野だ。昨季西武外野手のOPS(※1)は.684でリーグワースト。上述のメンバーが守る捕手、一塁、二塁と源田壮亮が守る遊撃については充実を見せる一方、外野は極端な人材不足の状態に陥っている。ただ弱点のポジションは平均的な選手が新たに台頭するだけで、大きくチーム力を増す。有望な外野手が現れればさらに野手で差をつくる戦い方が可能になりそうだ。

 また西武について、多くの人が懸念するのが投手陣だろう。オフの投手補強は新外国人のマット・ダーモディ、日本ハムから加入した吉川光夫、ドラフト2位で獲得した佐々木健くらいで、大型補強を行われたわけではない。現有戦力に劇的な成長がない限り、多かれ少なかれ弱点になる可能性は高そうだ。今季も投手力で他球団につけられる差を、野手の力で埋め、さらに上積みをつくれるかという戦いになるだろう。

<楽天>

 昨季の楽天は1試合平均4.64点とリーグ最高の得点力を見せた一方、投手を含めたディフェンス面で差をつけられた。だがこのオフはドラフトの目玉・早川隆久、そしてかつてのエース・田中将大を獲得。投手力の差を埋める補強を行うことに成功した。ソフトバンクの対抗一番手にあることは間違いないだろう。

 ただその投手陣にも懸念はある。先発ローテーションの中心となる涌井秀章、岸孝之、則本昂大、そして田中はいずれも30代。特に涌井と岸は30代中盤と、いつ成績を落としてもおかしくない年齢を迎えている。年齢層が高いだけに故障リスクの面でも不安はある。彼らのうち複数人が成績を大幅に落とす、あるいは長期間戦列を離れるようなことがあれば、昨季と同様にソフトバンクに投手力で差をつけられるシーズンになってしまいそうだ。

 野手については、昨季のメンバーからステフェン・ロメロが退団。ただ代わりの外国人選手も獲得しており、今季もある程度の充実を見せそうだ。その充実の野手陣をさらに引き上げられるかどうか、ポイントとなるのが遊撃・三塁を守る茂木栄五郎のコンディションだ。茂木はルーキーイヤーからレギュラーを獲得したが、これまでキャリア5年の中でシーズンを通して一軍出場を続けたのは2019年のみ。非常に故障が多い選手だ。しかし、出場した際は守備的な選手が集まる遊撃を守りながら、高い攻撃力をもたらすことができる。昨季も出場時の貢献度の高さは凄まじいものがあった。それだけに茂木をどれだけ多く、良い状態で出場させられるか。こちらもコンディション管理がチーム浮上の重要なポイントになる。

<日本ハム>

 昨季5位の日本ハムは、エース・有原航平、ニック・マルティネスと先発で多くのイニングを投げる投手が退団となった。こうした状況でチームは、ドラフト1位で伊藤大海、新外国人投手のロビー・アーリンを補強。金子弌大も先発へ再転向するようだ。ただ有原の穴を埋めるのは容易ではなく、先発のイニングが減少する分、救援陣の負担が増すだろう。日本ハムは球界でいちはやく、オープナー、あるいはショートスターターを採用するなど、これまでも流動的な投手運用を行ってきた。今季もこうした戦力流出に対し、運用によるやりくりでカバーができるかどうかはポイントとなる。

 野手は、2010年代前半から中盤にかけて、中田翔、大谷翔平、西川遥輝、中島卓也、近藤健介と、ドラフトで獲得した高校生が次々と主力級の選手に成長。こうしたメンバーのはたらきが日本一にもつながった。しかし、ここ数年は育成からの選手供給ペースが鈍り、それがチーム力の低下につながっている。現在はポジションでいえば二塁・三塁・遊撃手、また長打力の面で他球団に差をつけられている。

 現在、若手で有望視されている野村佑希や清宮幸太郎はこうしたチームの弱点にはまる人材だ。もし彼らが成長を見せるようなら、攻撃力は大幅に増すことになるだろう。また新外国人選手のロニー・ロドリゲスについても、遊撃をはじめ内野をユーティリティに守った実績があり、需要とマッチしている。チームも弱点を認識して、的確な手を打ったように見える。

<オリックス>

 オリックスは6年連続Bクラスと低迷が続いている。ただ昨季の1試合平均失点は4.18点でリーグ3位。投手も含めたディフェンス面では他球団と対等に渡りあうことができていたようだ。今季も山本由伸、山岡泰輔の二本柱は健在で、さらに平野佳寿も復帰。アンドリュー・アルバースの退団はあったものの、悲観する必要はなさそうだ。

 問題となってきたのは攻撃面だ。吉田正尚という軸はあるが、ほかにサポートできる存在がおらず、吉田が孤立してしまっている状態だ。こうした状況に対してチームは楽天を退団したロメロを再獲得。もちろんこの補強に一定の効果は見込めるだろうが、これだけで他球団と対等に渡り合える攻撃力を期待するのは難しいだろう。

 ポイントとなるのがセンターラインの選手だ。西武の項で捕手や二塁手について述べたとおり、センターラインの選手は高い守備力を求められるため、攻撃力のある選手を配置しにくい。これは逆に考えれば、センターラインに攻撃力の高い選手がいれば、他球団に大きな差をつけられることを意味する。オリックスは長年このセンターラインに攻撃力の高い選手を配置できておらず、それが慢性的な得点力不足につながっていた。今季もこれらのポジションに対して積極的な補強は行えていない。ただオープン戦では、捕手に頓宮裕真、二塁に太田椋、遊撃に紅林弘太郎、中堅に佐野皓大を積極的に起用。若手選手の起用で問題を解決しようとしている様子がうかがえる。全員に好成績を期待するのは難しいが、確固たるレギュラーが生まれれば、今季だけでなく、中長期的なビジョンも開けてくる。

<パ・リーグの展望>

 総じて見るならば、昨季王者のソフトバンクと投手力の大幅強化に成功した楽天の優勝争いになるというのが妥当だろう。ただ今季は新型コロナウイルス感染の問題もあり、例年以上に不確定要素の多いシーズンとなる。チーム内に感染者が出た場合、戦力ダウンは免れない。思わぬかたちでチームが暗転する可能性も十分にあり、現時点の展望から大きく外れた結果になる可能性も十分にありえる。

(※1)OPS(On-base plus slugging):出塁率+長打率。打席あたりの総合的な打撃貢献度を表す指標。数値が高いほど、打席あたりでチームの得点増に貢献する打撃をしている打者だと評価することができる。2020年パ・リーグの平均は.753。