女性が意思決定の場に行くってどういうこと? 国際女性デーに考えた

(写真:ロイター/アフロ)

■「女性を意思決定の場に」って、どういうこと?

院内集会の様子
院内集会の様子

昨日、3月8日は国際女性デーだった。

朝日新聞はこれに合わせて「Dear girl’s」という特集を組んだし、ヤフーニュース個人のオ―サーで国際女性デーについて書いた人も何人かいる。なんだか今年は例年よりも少し盛り上がっている感じがした。

私は昨日、国際女性デーを記念して企画された「ウィメンズ・マーチ東京」(主催:同実行委員会)の第1部、院内集会を取材した。15時から東京・永田町の参議院議員会館で行われた院内集会には100人以上が集まり、女性が直面する問題について活動を続けてきた人たちのスピーチに耳を傾けた。

「女性の権利」や「女性の地位」、はたまた「女性活躍」が議論されるとき、ときどき耳にするのが「女性がもっと意思決定の場に行かなければ」という話だ。政治家や企業の管理職にもっと女性が増えれば、「女性の視点」が社会に反映されるはず、と。

まあそうかもと思いつつ、具体的にどう変わるのかのイメージはぼんやりしている。女性が意思決定の場に行くってどういうこと? 今までどれだけの女性が、そういうケースを実際に見ているだろうか。

そんなことを考えていたので、院内集会の冒頭で壇上に立ったアジア女性資料センターの代表理事・竹信三恵子さんのお話は興味深かった。

■男女格差、8年前は話題にならなかった

2009年、当時朝日新聞の記者だった竹信さんは、ある連載を企画し、社内で提案した。

その年に発表されたジェンダー・エンパワーメント指数(※1)で日本は108カ国中57位。先進国のはずの日本で、どうしてこれほど男女間格差があるのか。これをテコに、日本の女性がいかに意思決定の場につけていないか、どこに問題があるのかを探る企画だった。

今でこそジェンダーギャップ指数(※2)が毎年話題になるが、当時はそうではなかった。提案すること自体、「緊張した」という。項目ごとにグラフをつくり、数字で見せる工夫もしたが、当初、紙面をもらうことは叶わなかった。

(※1)GEM指数。女性の政治参加や経済界における活躍などを表す指数。国連開発計画が発表。

(※2)GGI指数。男女間の格差を表す指数。世界経済フォーラムが発表。2016年度、日本は144カ国中111位だった。

■無理だと思ったことが叶えられた

諦めかけたときに声をかけてくれたのが、唯一の女性デスクだったという。

「『竹信さん、こういうことを書かないと。私が何とかします』と、彼女が他のデスクを説得してくれた」

ようやく紙面が確保され、始まった連載のタイトルは「女性活用小国のカルテ」。連載の第1回目は、GEM指数の低さについて「それって、どこか変な団体の調査じゃないの? そんな低いわけないじゃん」と言われた女性のエピソードから始まっている。

連載決定からスタートまで1週間ほどしかなく急ピッチで取材・執筆したが、連載が始まると、ネット上での反響も感じたという。最終的にこの連載は「女性を活用する国、しない国」というブックレットにまとめられることとなった。

「そのときに本当に思いました。女性が意思決定に回るってこういうことなんだと。女性のデスクがいてくれたおかげで、この連載ができた」

そして、ブックレットの編集者は男性だった。この男性は、「僕も本当は子育てがしたい。なぜこんなに男は子育てがしづらいのかと思っていた。保育園が足りなくて長時間労働がある。(子育てしやすい)システムになっていないことがわかった。だから(この連載を)ブックレットにしたい」と言ったという。

竹信さんは、当時はまだ長時間労働や待機児童が大きな話題になる雰囲気ではなかったと振り返る。

「無理でしょと思っていたけれど、彼女が企画を通してくれた。女性のデスクによって話題が流通し、さらに共感した男性によって広がった。女性が意思決定に参加したから始まったこと」

■当事者の発信が一番強い

少し違う例だが、私も思い出したことがある。

以前、30代以上の男性をターゲットとするビジネス誌で待機児童問題の取材を担当したことがある。その際の編集者は男性で、彼自身、子どもを保育園へ預けることに苦労したと話していた。同じ雑誌でその前に待機児童問題を取材していた男性記者も、取材を始めたきっかけは自身の体験だったという。

昨年の「保育園落ちた、日本死ね」よりも前のことだ。待機児童問題はじわじわと話題になり、昨年の「日本死ね」で爆発した感があるが、ビジネス誌で男性編集者がこの話題を取り上げたこと、その理由が、自身が実際に感じた「社会の不便さ」であったことが興味深かった。

もし彼らが共働きでなかったら、この問題をそのビジネス誌が取り上げるのはずっと後だったかもしれない。いや、もしこれまでこの問題に直面する男性がメディアの現場に多ければ、もっと早く大きな話題になっていたかもしれないとも言える。

意思決定側にいる人の当事者性。

■「未来を花束にするために動きたい」

院内集会の終わり近くに壇上に立った、お茶の水女子大学名誉教授の戒能民江さんは言った。

「よく、『声なき声』っていう言葉を聞きます。でも、『声なき声』っていうのは間違いではないか。女たちは充分声をあげています。でもそれを聞かない、聞こうとしない。キャッチしようとする感性がない。そちら側(政治側)の問題ではないかと今日思った」

「自分の問題として考えたり聞いたりしていないから声が聞こえない。(自分とは)別物だと思っているのではないか。もう少し政治の世界で、キャッチする力のある人が議員になってほしい。もしくは今の議員さんたちがキャッチする力をつかみとってほしい」

「女性たちが議員になっていったときに、それをどう支えるかを考える。大きな力強い声を出して、未来を花束にするため(※3)に動きたいと思います」

※31990年代1910年代のイギリスで参政権を求めて戦った女性たちを映画『未来を花束にして』の話題が、この日参加した議員から出ていた。

いくら声をあげても、当事者と違う立場にいる人からすれば、それはいつまで経っても「声なき声」なのだろう(一部の超善人を除いて)。だからこそ、意思決定の場に行かなければならない。政治、経済、メディア、司法、まだ「男社会」の残る、あらゆる場所で。

共謀罪や森友学園問題で揺れる国会。こちらの院内集会に出席した議員の数は多くはなかった。

■女性が同数になれば言動も変わる

濱田すみれさん(左)
濱田すみれさん(左)

この日の司会を務めた、アジア女性資料センターの濱田すみれさんは言う。

「女性政治家が全体の4割を占める台湾にスタディツアーに行ったとき、女性議員たちが伸び伸びと自由に発言しているのを感じた」

日本では国会議員の女性比率は約1割。ジェンダーギャップ指数の指標となる4項目のうち、日本は特に「経済活動の参加と均等」「政治への関与」についての格差が大きいとされる。

「現場に男性が多いと、女性は男性の顔色を見るような振る舞いを求められる。女性が同数になれば言動も変わる。数が増えれば、男性社会を女性がサバイバルするための術を身に付けなくてもいい」

■悲観せず、あともう一歩進みたい

竹信さんは「女性の“活躍”より”安心”を」と訴えた
竹信さんは「女性の“活躍”より”安心”を」と訴えた

女性議員や女性管理職の数はまだ少ないけれど、私はあまり悲観したくない。

今回、竹信さんの話を聞いて、2009年頃にはまだ、男女格差の話題が取り上げられづらかったことに驚いた。ここ数年でジェンダーギャップ指数とその意味を知っている人は増えていると感じるし、待機児童と長時間労働は、目に見える問題になった(問題は全く解決していないけれど、それが覆い隠されているかそうでないかは大きな違い)。

ベビーキャリーで赤ちゃんを抱っこしている男性や、子どもとお父さんだけでお出かけしている姿を目にすることは、ここ数年で格段に増えたと感じる。女性にとっての働きやすさと男性にとっての働きやすさは対立する概念ではなく、一致するもの。そう考える人は増えている。竹信さんはクオータ制の導入が検討されていることについて「まさかこんな日が来るとは思わなかった」と言った。

「女性の”活躍”よりも”安心”を。普通の人が普通に生きていける。そういう仕組みをつくっていく。そのためにクオータ制を」(竹信さん)

意思決定の場に女性が増えること。それは女性の「活躍」と表現されるものではなく、本来当たり前にあっていいはずの「安心」ではないか。意思決定の場で安心して意見を言えること。そのためには、少数派のままではいられない。

時代は変わらないようで変わっている。だからあともう一歩。遠慮せずに、意思決定の場に行かなくては。手に入れたい未来のために。

【3月13日16時修正】「クォーター制」としていた表記を「クオータ制」に修正しました。