産休取得批判も「公人だから仕方ない」? 政治を取り巻く「古い体質」はいつになったら変わるのか

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統一地方選も終盤。今週末には政令都市以外の市区町村長選、市区町村議選投開票が行われるが、前半戦では投票率の低さなど「低調ぶり」が指摘されている。投票率が上がらない理由の一つとして以前から指摘されているのは、代弁者と感じられる候補の不在。さらに政治の世界を取り巻く「古い体質」が、若者の足を選挙から遠ざけているようにも見える。

■産休取得は有権者への裏切り?

3月、アメリカ国務省が選ぶ「世界の勇気ある女性賞」にマタハラNet創設者の小酒部さやかさんが日本人として初めて選ばれた。「仕事も妊娠も取るのは欲張り」という言葉など妊娠を理由に職場から嫌がらせを受けることがある実態が明らかになり、「マタハラ(マタニティハラスメント)」という言葉も浸透しつつある。 

マタハラに悩むのは一般企業に勤める女性だけではない。2月25日には朝日新聞、4月10日には読売新聞が女性議員の産休取得批判について報じている。両方の記事で触れられているのは、新宿区の女性区議がNHKニュースで産休を取ることを報じられた翌日にフェイスブックで受け取ったメールだ。

投票した人々に対する裏切りです。

議員は公人ですよね? 女性で出産は当たり前だから、やむを得ないってありですか?

私なら、そんな人に投票しません。

(一部抜粋)

出典:朝日新聞・2015年2月25日

産休・育休の規定は地方議会ごとに異なるが、「出産による欠席」が明文化されている議会は一部のみ。この女性区議の場合、全会派の承認によって計16週間の産休が認められていた。

昨年、都議会で塩村あやか議員が「産めないのか」というセクハラやじを受けた際にもあったことだが、女性議員がマタハラやセクハラを受けるとき、「公人なのだからそのぐらいガマンして当たり前だろう」「黙って本来の仕事をしろ」など、議員からだけでなく有権者からもさらなるプレッシャーがかけられることがある。

しかしそれは、マタハラ・セクハラの被害に遭っても反発せず、「なかったこと」にする議員しか存在してはいけないということなのか。そうであるならば、自分がマタハラやセクハラの被害に遭っている一般の女性たちは誰にその気持ちを代弁してもらえば良いのか。

NHKが3月に報じた内容によれば、地方議会の女性議員は約12%にとどまり、女性議員が一人もいない議会の割合は約21%(1788議会中381議会)に上るという。全国平均の約2倍にあたる都内の地方議会(平均23.8%)などもあるが、政府が掲げる「2020年までに指導的地位の女性の割合を30%に」という目標にこのままで届くだろうか。 

NHKの放送で取り上げられた品川区議の向めぐ美議員は、2期目への立候補を断念した一人。取材をすると、その理由について複雑な心境をにじませた。 

「制度が整っていないことについての不安はあります。ただ、品川区では昨年秋に、出産の場合の欠席も議員報酬の減額が適用されないことを明文化 することできました。それは良かったと思います」

向めぐ美議員(3月に都内で撮影)
向めぐ美議員(3月に都内で撮影)

向議員は現在34歳、一昨年に結婚した。

「妊娠、出産のことを考えると制度も確かに足りませんが、仮に充分な産休・育休を取れたとして、それを自分が良しとできるのか、制度を使うことができるのか……。議員は24時間議員だという認識は消えないので、法律で『働いてはダメ』と言われなければ働こうとしてしまうとも思います」(※地方議員は特別職の地方公務員にあたり、労働基準法の産前産後休暇は適用されない)

 向議員の話から感じたのは「公人としてのプレッシャー」だ。一般企業の場合にも、制度があっても実際に利用する人がいないケースはたびたび問題視される。制度が利用されるためには、周囲の理解と後押しが不可欠だ。向議員の場合は、周囲の理解と後押しが足りない際に起こりがちな「真面目な人ほど制度を使えない(使おうとしない)ケース」にも見えた。

また、こんな言葉も。

「夜に行われる議員同士の会合があったり、支援者の方から夜遅い時間帯に、近所(のスナックや居酒屋)で飲んでいるからと電話がかかってくることも……。(周囲に妊娠したことを公表しづらい)妊娠初期にアルコールを勧められたらどうしよう? タバコの煙が気になったらどうしよう?……という心配もありますし、子どもを産んだらそういった会合へは参加しづらくなります。支援者の方から信頼を得られるのかどうか」

 議員たちの「夜の付き合い」について。都内の地方議会に参加する他の議員からは、「回数が頻繁で断りづらい」「市民の生活についての話なんて出ない。出るのは誰が誰についたとか、派閥争いの話題ばかり」という声も聞かれた。

 飲み会への出席を強要する行為は一般企業では「パワハラ」「アルハラ」と見なされることもある。「議員なら仕方ない」という声もあるかもしれないが、一般社会での常識が時代とともに変わりつつある今、なぜ議員の世界(一部かもしれないが)では、それが問題視されないのか。また、政治をするうえで、本当にその「夜の付き合い」は全て必要なのか。もちろん政治家として必要な付き合いもあるのだろうが、聞こえてくる話からはどうしても「古い体質」という言葉が浮かぶ。

■福島みずほ議員 やじが飛んだら「そんなの気にせずにやれ」って言うのはおかしい

 20代30代の議員が少なく、女性議員が働きやすい環境が整っているとはまだ言えず、今どき一般企業でも見ないような古い体質の中で行われているのが政治なら、若者が政治を「自分ごと」と考えられずに投票率が下がり続けるのも無理はないように思える。疑問を、「女性の政治スクール」開催などを通して女性議員の活躍を訴えてきた福島みずほ参議院議員にぶつけた。

――塩村議員へのセクハラやじについて、やじを行った議員は謝罪しましたが、他の男性議員の中には、平然と「あれの何がいけないの?」と言っている人もいたと聞きました。政治の世界は「古い体質」に見えます。

福島みずほ議員(以下、福島):政党や議会によっても状況は違うと思います。ただ、来年で私は18年目になりますが、政治の世界に入ったときは「権力のある芸能界」だと思いましたね。実力主義であると同時に男尊女卑であったり、二世三世議員も多い。体質が古いところはあると思います。

――有権者からも「公人だから産休を取るな」「セクハラぐらいガマンしろ」という声があがることについてどう思いますか?

福島:施策を作る意思決定の場が性差別的であったら、それは問題です。女性であったり、障がいを持っていたり、LGBT当事者だったり、この社会を生きづらいと思っている方が意思決定の場に行くことで、そのことが多くの人にも影響を与えると思いますね。人間には想像力があるので当事者でなければ必ずしも想像できないわけではありませんが、さまざまなバックグラウンドを持つ人が議員になることは良いことだと思います。

私は政治家になる前、弁護士としてセクシャルハラスメントや今でいうマタハラについて裁判で担当してきました。古い体質は変えていかなければならないと思いますが、男社会を変えていきたいというのは、女性が男性並みになればいいということではありませんね。女性が進出することで見えなかった視点を出すこと、この社会の生きづらさや新たな視点を提起する、そのことに意味があると思っています。 

――そう思っている議員だけではないように見えます。

福島:まあそうなんですよね。古い人たちは(さまざまな人が政治に関わることで社会を変えられると)信じないんでしょうね。

福島みずほ議員(4月に参議院議員会館で撮影)
福島みずほ議員(4月に参議院議員会館で撮影)

男女共同参画担当だったとき、「女性首長大集合!」(2009年)というのを企画しました。29人の首長のうち知事や市町村長の22人が来てくださって素晴らしいプレゼンテーションをしてくれました。私はプレゼンテーションを見る前は、どんな風に男たちにいじめられているとか、愚痴が出るのかなと想像していました。でも違いましたね。

ある町長の方は、「議会は私が今まで取り組んできたことをやるところなんだと思った」と言いました。つまり、たとえばゴミ問題や教育、町づくり、子育て支援、介護とか、自分がこれまでNGOとして取り組んできたことをやるところだと思ったと。国会って憲法とか平和とか外交とか大きなことをやるけれど、自治体って多くの女性が担ってきた子育てや福祉や地域のことを主に行います。そうだとすると、首長って女性に向いていると思いましたね。

――生活に根差した部分だからこそ女性に向いていると。

福島:女性が子育てや介護などの問題を抱えてきたのであれば、そういうことを解決する基礎自治体に女性が増えるべきだと思います。

女性が進出することで何がいいかというと、政治の優先順位が変わるんですね。これは国会でも痛感します。たとえば女性議員が増えたので2000年代にDV防止法(配偶者暴力防止法)を超党派でつくって2回改正しました。男性も賛成して全会一致でしたが、プロジェクトチームは全員女性だったんですよ。男性が関心がないわけではないが、女性が進出することで女性への暴力がメインイシューとなったんですね。

子育てや保育所のことってあまり話題にならなかったのが切実なテーマになってくる。それはやはり女性が進出したからです。また、当事者のママたちが「冗談じゃない」と言って声を上げてくれたことも大きかったですね。

――悩みを抱える女性議員についてはどう思いますか。

福島:政治の世界は、オーソドックスな企業と比べてやはり古いと思います。企業だったらセクハラなんてやったら失職するぐらいのこともあるわけですから、そういう意識はなくて、古いですね。弁護士時代に企業のセクハラ研修をしていましたが、議員にもそういった研修をするべきですね。議員ってインディペンデントなものなので研修はなじまないけれど、それぞれの政党が男女平等研修や何がマタハラかという研修を行っていくといいと思いますよ。そしてひどい発言には怒ること。

また、シスターフッド(女性同士の連帯)じゃないけれど、みんながどうやってそういう問題を解決しているか、悩みを持つ人と連帯したらいいと思います。私も弁護士時代に子どもが小さかったときは、夜は集まることができないのでビジネスランチをしたりしていました。 

男性に合わせて考えていると「あれもできない、これもできない」って頭が痛くなっちゃうから、工夫して。一部の男性がつくった単純な社会ではなく、いろんな人が生きやすくするためにネットワークを共有したらいい。やじが飛んだら「そんなの気にせずにやれ」って言うのはおかしいですよ。そういう意識を変えないとだめです。

(インタビュー終わり)

男女雇用機会均等法が施行されてから約20年経つが、企業での女性管理職の割合は約1割。それでも一般企業ではセクハラ、マタハラといった言葉ができてから、ようやく少しずつ変わり始めた感があるものの、政治の世界はまだ男性が多数派を占め、一般企業よりもさらに女性が残り続けることが難しい。政治の世界に若者や女性、障がい者、LGBT当事者など弱者の代弁者を見つけられないと感じる人もいるだろう。「自分の声はマイノリティーだからどうせ届かない」と思う人たちが投票に行かなければ、当選する人と政治から排除された人の差がさらに広がる。悪循環だ。 

政治の世界の体質は確かに古い。それは一部の「強い人」がつくりあげた制度や習慣に成り立っているものだからなのだろう。だが、時代は変わるものだ。一部の強い人がつくりあげたものの上に成り立っていても、これからは時代に合わせて制度も習慣も変わってほしい。自分たちの代弁者と思える人が議会に立ってほしい。人によっては、弱さを抱えた人こそが代弁者だ。弱さを振りかざすのではなく、見えなかった課題を見えるようにするための小さな一歩が有権者にも必要だ。 

(参考)

最も女性が少ない議会はどこか? 女性政治家比率 都道府県ランキング(高橋亮平/Yahoo!ニュース個人)

「低調」地方統一選における、日本人の民意(訂正あり)(山本一郎/Yahoo!ニュース個人)

[安倍宏行]【低調統一地方選にも一筋の光】~若者・女性の政治参加が不可欠~(Japan In Depth)