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ロシア軍がキーウを大規模ミサイル攻撃。キンジャールの使用は2カ月ぶり、Kh-101は1カ月ぶり

JSF軍事/生き物ライター
ウクライナ国家非常事態庁より首都キーウの被害(2024年3月21日)

 3月21日夜明け前(現地時間)、ウクライナ首都キーウを狙ってロシア軍が大規模なミサイル攻撃を仕掛けました。ウクライナ空軍司令部の発表では合計31発のロシア軍ミサイルが飛来し、全弾を撃墜したものの、残骸が市街地に落下して被害が発生しています。ただし迎撃により直撃は無かったおかげなのか、現在まで負傷者の報告はありますが死者は出ていません。

ウクライナ空軍司令部(2024年3月21日午前7時発表)

ウクライナ空軍司令部より2024年3月21日迎撃戦闘
ウクライナ空軍司令部より2024年3月21日迎撃戦闘
  • イスカンデルM/KN-23/キンジャール弾道ミサイル×2飛来(2撃墜)
  • Kh-101/Kh-555巡航ミサイル×29飛来(29撃墜)

※空軍司令部の報告の本文では弾道ミサイル2発について、地上発射式のイスカンデルMまたはKN-23(北朝鮮製)が1発と、空中発射式のキンジャールが1発と受け取れる表現。

※Kh-101とKh-555は戦略爆撃機から発射する空中発射式巡航ミサイルで、飛行中はレーダーでは両者の見分けはつかない。Kh-555は既に生産しておらず、現在発射しているのはほぼKh-101。

 キンジャール空中発射弾道ミサイルの使用は1月13日以来の約2カ月ぶり、Kh-101巡航ミサイルの使用は2月15日以来の約1カ月ぶりです。ロシア軍は年末年始のミサイル集中攻撃で使い過ぎたのか、3月分の長距離ミサイル・ドローン攻撃では一部の例外を除けばほとんど弾道ミサイルや巡航ミサイルを発射しておらず、これまでシャヘド136自爆無人機を用いたドローン攻撃に頼っていました。(3月分は21日時点でシャヘド136自爆無人機は合計326発飛来の報告)

※ただしウクライナ空軍司令部の報告に無いロシア軍のイスカンデルM弾道ミサイルの使用疑い例として以下がある。

・3月06日:オデーサへの1発(ゼレンスキー大統領とギリシャのミツォタキス首相が付近に居た)
・3月13日:ドネツク前線付近への戦術用途での使用例:ロシア軍イスカンデルM弾道ミサイルのクラスター弾頭型の攻撃の様子が初めて動画で確認
・3月15日:オデーサへの2発(ダブルタップと呼ばれる時間差攻撃によって救助隊員を含む市民20人死亡)

 ロシア軍による今日3月21日の大規模ミサイル攻撃ではシャヘド136自爆無人機の発射は無く、巡航ミサイルの囮役としてドローンは期待されていない傾向が続いています。別種のミサイルを組み合わせた連係した攻撃は行われていますが、ドローンはミサイルと連係せずに攻撃計画を立てていることが多くなっています。

 ウクライナ軍は今日3月21日の迎撃戦闘で31発のミサイル全ての撃墜を主張しています。これを独自に検証して確認することはできませんが、敵の攻撃規模の割りに被害が少ないので実際に迎撃が上手く行っているであろう傾向はうかがえます。

ウクライナ国家非常事態庁(2024年3月21日)

ウクライナ国家非常事態庁より首都キーウの路上のKh-101巡航ミサイルの不発弾頭の処理
ウクライナ国家非常事態庁より首都キーウの路上のKh-101巡航ミサイルの不発弾頭の処理

※撃墜し破壊されたKh-101巡航ミサイルの不発弾頭の回収解体作業の様子。写真にボカシが入っているのは敵に製造番号などの情報を見せて戦闘結果のデータとして利用させないため。

※弾道ミサイルが撃墜されるも弾頭は破壊しきれず着弾したと思われる大きな破孔。迎撃で狙いを逸らせた可能性。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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