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1月2日のロシア軍による大規模ミサイル攻撃でウクライナ軍がキンジャール10発を全弾撃墜に成功

JSF軍事/生き物ライター
ウクライナ軍より撃墜戦果。キンジャール×10、Kh-101×59、カリブル×3

 2024年1月2日夜明け(現地時間)、ロシア軍はウクライナに大規模な長距離ミサイル攻撃(99飛来72撃墜)を行いました。その直前にシャヘド自爆無人機による攻撃が1月1日の夜明け前および昼間(100飛来96撃墜)と1月2日の夜明け前(35飛来35撃墜)にあり、2日間でミサイルと自爆無人機の合計234発の攻撃があり203発を撃墜したとウクライナ空軍は発表しています。

2024年1月2日午前、ウクライナ空軍司令部の発表

ウクライナ軍より撃墜戦果。キンジャール×10、Kh-101×59、カリブル×3
ウクライナ軍より撃墜戦果。キンジャール×10、Kh-101×59、カリブル×3

2024年1月2日午前、各種ミサイル99発中72発撃墜

  • Kh-47M2キンジャール×10発 ※全弾撃墜
  • イスカンデルM/S-300/S-400×12発
  • Kh-101/Kh-555/Kh-55×70発 ※59発撃墜
  • カリブル×3発 ※全弾撃墜
  • Kh-31P×4発

※Kh-47M2キンジャール:極超音速兵器と宣伝されているキンジャールだが実態はイスカンデルM弾道ミサイルの空中発射型。MiG-31K戦闘機から運用するので、同機の動きを監視することで事前に発射を警戒している。1月2日の迎撃戦では全弾撃墜と発表されていることから、パトリオット防空システムの配備されてる首都キーウで戦闘が行われたと推測される。

※イスカンデルM/S-300/S-400:弾道ミサイルによる攻撃。S-300とS-400は本来は地対空ミサイルだが準弾道飛行での対地攻撃モードがある。そのため同じ地上発射方式のイスカンデルM弾道ミサイルと見分けが付き難いが、射程はS-300/S-400の方が短い。全て迎撃できていないことからパトリオット防空システムが配備されておらず、S-300の射程内の国境線に近い第二都市ハルキウで主に戦闘が行われたと推測される。※追記ハルキウで北朝鮮製KN-23弾道ミサイルらしき残骸を発見

※Kh-101/Kh-555/Kh-55:亜音速で飛行する遅い巡航ミサイル。Kh-55の改良型がKh-555で更に発展させた新型がKh-101。全て大型戦略爆撃機から運用する空中発射型で飛行特性だけでは3種類の見分けは付かない。ただし古いKh-55/Kh-555は既に生産しておらず在庫はほぼ使い切ったものと見られ、現在発射しているものはほぼKh-101だろうと推測される。

※カリブル:亜音速で飛行する遅い巡航ミサイル。実はカリブルは全く異なる種類のミサイルを含むファミリー名だが、ここでは艦対地型の「3M-14」を指す。艦艇からのカリブル発射は半年以上は撃っておらず非常に久し振りだが僅か3発と少なく、開戦初期には長距離攻撃の主役だった同ミサイルは今やその座を返上している。これはクリミア半島へのウクライナ軍の巡航ミサイル攻撃で黒海艦隊の運用が危うくなっており、亜音速巡航ミサイルの生産と運用の比重をKh-101に移しているものと推測される。

※Kh-31P:対レーダーミサイル。Su-35戦闘機などから運用する空中発射方式で、射程はあまり長くはないが最大速度マッハ4に達する迎撃が困難な超音速ミサイル。なおキンジャールやイスカンデルMなど弾道ミサイル系はこれ以上の高速を発揮する。

※「Х」と「Kh」:ロシア語やウクライナ語のキリル文字「Х」は英語のラテン文字に転写すると基本的には「Kh」になるが、転写ルールの違いで一部の報道ではラテン文字でも「X」と表記する場合がある。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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