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北朝鮮の核無人水中攻撃艇「ヘイル2」、1000km潜水航行で日本海の全ての沿岸に到達可能

JSF軍事/生き物ライター
北朝鮮・労働新聞より核無人水中攻撃艇「ヘイル2」

 4月8日、北朝鮮は水中戦略武器システム試験を行ったと発表しました。核無人水中攻撃艇「ヘイル2」の試験を日本海で行い、4月4日に発進して楕円型と8の字型に航行して1000kmの距離を模擬し、71時間6分潜水航行して4月7日に目標設定位置で水中起爆したとされています。

  • 4月4日午後に発進:咸鏡南道金野郡加進港
  • 4月7日午後に起爆:咸鏡南道端川市龍台港の沖合
Google地図より咸鏡南道の金野郡加進港と端川市龍台港の位置
Google地図より咸鏡南道の金野郡加進港と端川市龍台港の位置

 北朝鮮沿岸から1000km航行できるのであれば日本海の沿岸は全て到達可能と見てよいでしょう。日本の港の攻撃が可能です。また潜水艦の魚雷発射管からは発射できない大きさですが、何らかの母艦に搭載すれば太平洋側の港も攻撃可能となりえます。

ヘイル1(航続距離600km)、ヘイル2(航続距離1000km)

 北朝鮮は3月28日の公式発表では「ヘイル1」の実験で600km航行したと報告していました。3月25日午後に元山湾から発進して「のこぎり型」および「楕円形」の針路を航行して(8の字型ではないことに注意)、41時間27分後の3月27日午前に咸鏡北道花台郡の沖合いで水中起爆したとされています。

 また3月24日のヘイルの初発表時に公開された写真を見る限り、ヘイル1と推定される水中攻撃艇の説明ボードに描かれた全体像からは、長さの割に直径が大きな太短い艇体の形状をしているように見えます。

関連:北朝鮮の核無人水中攻撃艇「ヘイル」とロシアの原子力推進超大型核魚雷「ポセイドン」(2023年3月26日)

ヘイル1

北朝鮮・朝鮮中央通信より核無人水中攻撃艇「ヘイル1」と推定される兵器の説明ボード
北朝鮮・朝鮮中央通信より核無人水中攻撃艇「ヘイル1」と推定される兵器の説明ボード

ヘイル2

北朝鮮・労働新聞より核無人水中攻撃艇「ヘイル2」
北朝鮮・労働新聞より核無人水中攻撃艇「ヘイル2」

 しかし4月8日に公開されたヘイル2は直径の割に長い艇体をしており、魚雷の形状に近い細長い形をしています。つまり通常の魚雷をそのまま大型化したような設計の兵器になっています。おそらくヘイル1よりもヘイル2は全長が長くなっていて、その分を電池の搭載スペースに充てて航続距離の増大を図り、ヘイル1(航続距離600km)→ヘイル2(航続距離1000km)という関係になったのでしょう。ヘイル1が韓国攻撃用、ヘイル2が日本攻撃用なのかもしれません。

 なおロシアの原子力推進超大型核魚雷「ポセイドン」は直径約2mと推定されていますが(隣に写った人間の大きさからの推定)、北朝鮮の核無人水中攻撃艇ヘイル1は推定直径が80.7~92.3cmと推定されているので(※DEEP DIVEの推定)、両者のコンセプトは似ていますが大きさも推進システムも全く異なる兵器と認識した方がよさそうです。

  • ポセイドン:直径2m、全長20m ※公開写真からの推定
  • ヘイル1:直径80.7~92.3cm、全長502cm~574cm ※DEEP DIVEの推定
  • ヘイル2:仮に直径がヘイル1と同一の場合、推定全長8~9m

外部参考記事:戦術核弾頭から北朝鮮の核無人水中攻撃艇『ヘイル-1』の大きさを推測する:DEEP DIVE

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人戦闘兵器、オスプレイなど、ニュースに良く出る最新の軍事的なテーマに付いて解説を行っています。

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